#044 ━原点━
「ここが学校。私たちが本部って言っていた場所。まぁ、正確には仮想空間の中が学習本部なんだけどね。」
「へぇ。ここがか。」
ここを学校と紹介されても信じきれない。そのくらい地球のそれとはかけ離れていた。
もちろん校舎の外見は芸術的で斬新ではあったのだが、表面を見る限り地球に比べて進化どころか退化にすら思える。
というか、この世界全体に言えるけれど素敵な部分と残念な部分が妙に溶け込み合っている気がする。
勿論、細かいところはまだ見れていないのだが。
(もっとコンセプトカーみたいなビジュアルで擽ってくる近未来感を期待していたのに。)
ニオはそのまま校舎の外周を歩き始めたので、
「校舎に毎日通っているの?」
そんな風に質問責めを試みる。歩みを止めて休みたいけれど直接言い出したら負けな気がした。不思議なことに、ここまで来ても僕の変なプライドは現役のようだ。
「毎日じゃないけどほとんど、生徒はここに集まるよ。」
「わざわざか。リモートで、とかじゃなく?」
本当にここは学校なのか未だ疑える。
「……そう、わざわざ。ここへ来て。皆集まって。」
(ニオはなんだか言葉に詰まっている様に思えた。触れてほしくないことがあるのだろうか。)
そのとき、ニオが指した方へ微かな音を連れた柔らかい風が吹いた。
「見せたいのって……あそこ?」
「そう。」
「素敵な湖だね。」
「……まぁね」
僕は特に気を使ったつもりはない。
陽の光を浴びた湖を見た率直な感想を述べただけだ。
流れのままに背中を向け歩み始めたニオを呼び止める。
「そっちへ行く前に、学校の中を見せてくれない?」
どれだけ外側を見つめても内側の様子は見当がつかない。どのような驚くべき構造になっているのだろうか、その設備を少しでもいいから覗きたかった。
足を止め、ニオは向きをぐるりと変える。
「ほら、どうぞ。」
近くの剥出しの石の柱と壁を何度か撫でると、ぐるりと壁面の円盤が回転し、小さな扉が現れた。
(な……!?魔法かな?)
「失礼します。」
扉をくぐると大きな講堂が。
半円状の石段が続いていて、幾つもの絨毯を等間隔に引いただけのような……
「え……と、ここは?」
「キミたちでいうところの教室です。」
見た目だけなら教室というよりも大聖堂、礼拝堂と言った方が適切だろう。
「……そうか。」
「基本授業はコネクター内の仮想空間で行うからね。中はこんな感じなんだ。」
「なるほど?」
(まぁ、それならどんなつまらない空間でもいいもんな。)
とは思ったものの、想像を越えた衝撃。
石造りで殺風景。
柱や壁にはヒビ、天井は煤けていて所々黒い何かが垂れ下がっている。
見れば見るほど、雲行きが怪しくなっていく。
尚更僕はここに生徒が集まる意味が無い気がしてきた。
「この星以外の人は入ったこと無いんじゃない?」
僕は異星人唯一の教室目撃者なのか。
ニオが講堂の端、半端に磨き上げられた石の坂を下り中央の教卓らしき場所に向かおうとする。
奥には空き瓶や粘土のようなものがまとまって置いてある。
(何に使うんだろう?)
「私はここに座ってキミたちの星地球と地球人についての説明を受けたんだ。」
「ここで……そうだったのか。」
(異星人視点の地球についての授業……まず何から話されるのだろうか。気になる。)
「君は生徒たちがここへ集まる意味は教えられているの?」
「どういうこと?」
「いやぁ、折角こんなに仮想空間が発達しているのだから、わざわざ学校に集まる必要はあるのかなと思って。」
(実際にこんな教室を見ると……余計にだ。)




