#043 ━歩み━
「噂をすればほら、こういうの。」
ニオが指を差すまでもなく、それは僕の目に飛び込んできた。
”浄化完了まであと3996年“と広大な敷地を囲んだテープ状のホログラムが浮かんでいる。
その内側は瓦礫まみれで至るところから煙が噴出しており、小規模なオーロラのようなものも見てとれる。
(絶対に近づきたくない。)
(こっちは時間感覚が篦棒にいかれてやがる。)
ホログラムで雑把に囲まれたこの土地はどうしてこんなことになっているのだろう。
「そうだ、ここからそんなに遠くない所に私たちの母校があるの。行ってみない?」
「お?あぁ。行ってみたい。」
「こっち、ついてきて。」
(今、ニオに教えられながら街を歩いている。今までにない、なんか不思議な気分。)
「そういえば、あっちにあった作品を見て懐かしいって言ってたけれど……」
「あー、あれはずいぶん前に暇なときに何回か触れたことあるの。あの空間、割と有名だからね。作成者が人間じゃなかった点を除けば。」
「あ、そうだったのか。」
「そうそう。」
「もうひとつ、聞きたいことが……」
「どうぞ。」
「君たちの平均寿命は……どれくらいなの?」
「えっと……どれくらいだったっけ?前に歴史の授業で習ったけど、もう覚えてないや。」
「……え。」
(それはどういう意味だ???)
「そろそろ近づいてきたよ。あれだあれだ。」
「あぁ……、これが……?」
道を曲がったそこにはとてつもなく大きく長い、艶々な石の階段が鎮座し僕を威圧していた。
僕の感覚ではどうみても学校とは思えない。
(カスケードだっけ?どこかの国の観光地みたいだ。)
「驚いた?君にまずはこれを見せたかったの。」
(驚くだろうそりゃぁ、説明なしにこんなものを見せられたら。)
ニオ曰く学校へと続いているらしい階段を丁寧に登るはめになった。
足を動かし無駄に大きな段差を登る。
(……長い。)
「あのさぁ、ここ毎日登っているの?」
痺れを切らし始めた僕は石段を登るのに不要な程の力を入れ音を鳴らしながら訊ねる。
「こんなもの、毎日足で登るわけないじゃん!」
ニオも負けじと石段を大袈裟に踏みつけ始めた。
「じゃあ、どうやって……」
「それは……最後に教えてあげる。ここ以外にも見せたいところがあるの。」
そう言って立ち止まった僕に振り向いたあとスピードを上げた。
(足以外で登る方法があるのなら!それで登らせてください!わざわざどうして!)
階段の途中には広場があり、その真ん中に噴水すらあった。
(うっとりするほど長閑だぁ。)
そして所々に地球では見られなそうな技術を感じるものも見受けられる。綺麗で手入れも行き届いているようだ。
(不思議だなぁ。世界が偽物みたい。)
「ほら、まだ登るよ!」
「もうここが山頂でいいよぉ。」
僕はよく分からない駄々の捏ねかたをしてみた。
「ニオさん、エレベーターやエスカレーターとかは無いのでしょうか?」
「なぁにそれ。私には馴染みの無い単語ですね。」
笑顔で冷たく良い放った人物はエレベーターもエスカレーターも知らなかった。
本当に存在しないのか冗談なのかは分からないが。
何度も押し寄せる愚痴を我慢し、広場を越えると、階段の様子が変わった。
「何か階段に文字が刻まれているみたいだけど?これは?」
「学生に向けた……大人たちのメッセージ。」
(へぇ、そんなこともするのか。思っていたより人間味があるというか、こだわりが表れてて興味深いな。)
「ほら、もうすぐ校舎。」
「わお。」
(校舎……にしては何だろう、神殿や遺跡に近い見た目だ。そしてこんな階段を登らせた割にコンビニエンスなサイズ感で、こじんまりとしている。科学力で捩じ伏せるような衝撃的で最先端なものでは無かった。)




