#033 ━記憶━
しかしながら、生まれ落ちたそれらは社会に馴染みつつも徐々に主に従わず反抗、対立するようになり、気づいた時にはもう遅く、対策は火に油。完全に敵となり計画は水の泡に終わったようだ。
その失敗作らは拘束され、遠くのいくつかの星へと散り散りに生かしたまま廃棄することが決定した。
この出来事が世に知れ渡ってからでは大量殺戮はできないため、民衆に対し別の星に移住させ違う道を歩むという体にするしか残された道は無かったのだ。
起きた出来事を無かったことには出来ない。
少なくとも奴隷が生まれた当時は。
そして予算を捻り出し、大真面目に奴隷を別の星に移した。
当時試作であった装置の実験的な運用を行いたかったのだろう、記憶操作の調査も兼ねてノロールム人は彼ら奴隷の存在という今までの記憶を綺麗に削ぎ落としたのだ。
——ここまでが何万年も前の歴史だ。私は信じたくない。
「???はぁっ……こんなことが。奴隷……なんて……え?これ本当?」
「何万年も前の話……か。嘘だろ……、どうしてこんな関係無さそうな話まで説明しているんだと思ったら……スケールが想像を遥かに超えてるんですけれど。」
「怖い怖い……もう一旦この類の情報は十分だよ」
「もしかするとこの計画、延いては君たちの星はなんというか……複雑な発展を遂げてそうだね」
(僕らの星も大概だけれども……)
私はその歴史上の破られたページを見つけたとき絶望し、虚しくなった。一方的に都合良く記憶を消去出来るなんて。恐ろしい。何処までも。私が、私たちがこれまでその事実を知れなかったのも……そういうことなのだろう。
ただ、こんなものではない。まだ私が知った歴史に続きはある。廃棄の完了から暫く時は流れ、存在すら忘れ去った頃、我々以外にも別の知的生命の存在が確認されたというニュースが舞い込む。
それも複数、一度に三つもだ。先の知的生命の記憶操作に成功していた我々はその生命体たちを新たな仲間という名の労働力として歓迎するため、発見された知的生命は計画の標的になってしまう。
その生命体らに対し悟られぬようにあらゆる事前調査を行った後、あたかも元々我々と仲間だったと思い込ますための緻密な【偽りの記憶】を彼らに注入したのだ。
そして今となっては「イファイヤ人」「アシール人」「ロタレバート人」として本来の奴隷の枠を越え、惑星ラノハクトの欠かせない構成種界、本当の仲間となり、今日まで何の違和も問題も無く過ごせているのだ。本当に凄いことだよ、こんなにも大勢の人々を欺いていたなんて。全てラノハクト、厳密にはその上層部が決定し、起こした事なんだ。
「……残酷だな」
「本当にこれが真実……!?怖いよもう。」
「うぅ、まだ断定するのは早いけど、話がよく出来ているし信憑性はかなりあると思う……」
それでもラノハクトの卑しい欲は止まることを知らず、多種界の混在計画がおおよそ成功したのを皮切りに、別の新たな知的生命が他に居ないか漁ることに夢中になり始めた。
もちろんそれはここに書き写せるほど簡単ではないし、一度成功しているとは言え問題は山積みだっただろう。
そんな最中、奇跡的に一筋だけ発見することができた。それは我々がかつて棄てた存在、忘れ去られていた【奴隷のなりそこない】であった。さらに彼らは我々の予想を遥かに上回る速度による繁栄を見せつけた。当時はそこを含め十の星に散りばめるように廃棄されていたらしいのだが、何処を探しても確認されず、別の九つの星では絶滅してしまっていたようだ。




