#029 ━中身━
「——ゴンゴンッ」
ニオや僕が押したり叩いたりしても返事は無いし、びくともしない。こんなアプローチでは起こってほしい結果が得られはしないだろう。
「ダメ、こんなんじゃ開かない」
「……じゃあ、これも溶かすしかないか。」
「お願い、やってみて」
扉と思わしき部分に手の平を張り付ける僕。
(はぁあああ!)
このポーズにはこういう溜めた力を解き放つような掛け声をしたくなる。歯を食いしばりつつ、心の中で無駄に意識を集中させる。本気だ。
五分くらい経つと中が覗ける程度の穴が空いた。手を張り付けるだけの簡単なお仕事。じんわりと進んでいくため、まるで爽快感がない。自分に酔いしれていたのだが気が付くと馬鹿らしくなっていた。
らしくない事はやるもんじゃない。
ニオが片目でそれを覗こうとする。
「何か見えるか?」
「暗くて何にも見えない……」
(うーん。もっと広げないとだな。)
どうやら扉は打音の通り、かなり分厚く作られており、小さい穴が貫通した後さらに二十分ほどかけてようやく人一人が通れるような穴にまで拡げることができた。
中に入ると外から見たままの真っ暗な空間。只管に闇。僕らはスマホと端末を懐中電灯代わりにして傾いたマシンの内部を探索し始める。
(思いの外普通っぽい……この内装だけなら僕らの技術でも十分に再現できる気がする……)
特に気になる箇所の無いまま少し進んだところで、パッと視界が拓ける。突如として内部全体が明るく灯った。
(ぶぬわぁ!)
「なんだ?びっくりしたぁ、驚かさないでよ。」
「……私たちの存在を感知したんじゃない?」
「……てことは、それで点いたんならこいつの内側のセンサーみたいな機能は生きているのか?」
「あー。だとしたらこの先からは慎重に進まないと。」
壁や床自体がうっすら色を変えながら光っている。
明るくなり今まで見えていなかったものが見えるようになる。
廃墟感が無くなったのだが、それはそれで怖い。
外見はぽっかりと抜け殻のようになっていたマシンでも内部は問題なく機能しているように見える。
いきなり床が開いたり、巡回ロボットに奇襲されたり、後ろからトゲ付きの大玉が転がってきたりしないだろうか。考えるほどこの身一つで来るべき場所では無かった気がしてくる。
だけれど、妙にスッキリしているところ、パイプや配線などが複雑に絡み合っているところなどがある……が、僕らが何らかの情報を得られそうなものは全く見受けられない。内部の地図さえあれば進みやすいのだが、そんなものはあるはずも無かった。
「もう少しだけ奥へ行ってみようか」
大きく傾いているマシンの内部を進むのは骨が折れる。
僕たちは脚の付け根辺りから侵入した。
流れだとおそらくこの通路沿いに頭部側へ進んでいるはずだ。
配線を綱のように掴み、大きく傾いた床を下った先に階段や手すりがある。内部は完全に人間が入る想定の構造だということがわかった。
ガラスのような透明な板を隔てて向こう側、その先は随分と広い空間——。
「向こうは何だ?……やたらに広いな」
ここから先の道は傾き過ぎていてまるで壁のよう。道具なしに行けそうにない。現状ここが突き当たりだ。
「こいつを溶かさないと進めないな。」
手のひらを当てて溶かすという行動に手慣れてきた僕。
熱を加えたチョコレートのように簡単に溶けていく透明な板の向こう側には無機質な柱。それがいくつも床から斜めに突き出ており円を描くように並び立つ。
その柱の内部は見るからにハイテクで用途不明な基板と細かい回路が埋め込まれており、それらが外からでも透けて見える。さらに、それらに囲われた中央には大きな壺のようなものがぽつんと一つ。表面は鏡のように反射し、歪んだ我々の姿を映し出していた。




