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うつうつつ【完結済】  作者: 混漠波
22/64

#022 ━襲来━

ここまでの出来事を振り返り、確認が出来て一息。二人で拝殿の軒下から飾り付けられた柱や軒天を眺めていた——

(こんなことになるなんて……)

 

突然辺りが雨の降る前のように段々と暗くなる。

「……なんだあれ?」

 

ふと空を見上げると銀色に輝くとんでもなく大きな物体が翼を広げて飛んでいた。

 

「な、なにあれ……」

ニオもそれに気づいて指を差した。

 

「あれって「トリアンドルス」じゃない!?」

「トリアンドルス?」

「私たちがこの星に来るとき乗った転移装置にそっくりなんだけど、あんなに大きくはなかった気が……」

そう言うニオの声は震えていた。

 

神社の大木に囲まれてぽっかりと開いた空。

 遥か上空に浮かぶ、あからさまに巨大で不気味な物体。

  下から仰ぎ見えた様子は、大翼を広げた巨大な銀色の鳥。

   その背中には同じ色の大輪の花が咲いている。目視でも鮮明なほどだ。

    そんな神々しい姿をして、不思議にも天空を優雅に飛んでいる。

     雨空の正体は朝日をも隠す規模の物体の影だった。

 

                  言葉が出ない。

 

(——!?)

そのトリアンドルスから断末魔のような異音が放出され、それが音の無い街中に響き渡る。

同時に白と黒の奇妙な光の帯が、遍く地表に向け照射される。

光は雲を貫くほど強烈で、帯はどこまでも続いており、端の様子がここからでは捉えられなかった。おそらくこれはトリアンドルスが計り知れない上空を飛行しているのだろう。

目が眩んだ僕は避ける間も無くそれに照らされる。

 

(あっつい!熱線か!?)

光が通り過ぎていく中、辺りは焼け焦げた臭いが漂う。たちまち足元がぬかるんできた。

 

「うわぁあああ!?」

 

僕らが座っていた社が見る見る内に溶けていく。体調が悪い時の夢のように。

手を掛けようとした金属製の擬宝珠も、石造りの参道も、周りの地面も、神社に並んだ木の奥に見える車も、家も、標識もありとあらゆる物がぶよぶよと歪み、潰れるように変形していく。

あそこでは電柱が倒れ、電線も千切れ、向こうの歪んだ道路は水を含み液状化している。

 

あまりの唐突で劇的な一連の出来事に僕たちは言葉を失ってしまった。

目に映る苛烈な映像は僕らの脳が攻撃を受けたのか、これは現実の事象なのかそれすらも判断ができない。

(なんだこれは……)

 

そのときは起こり得るはずもない未曾有の体験を前に、ただただ立ち尽くし、視界内で小さくなっていくトリアンドルスを傍観することしか出来なかった。

 

恐怖は遅れてやってくる。鳥肌が立ち、頭が痛く気分が悪い。動けるのか?……今の僕は。

 

(またやって来るかもしれない、とりあえず社から離れて安全なところへ行かないと。)

(なんなんだ、一日の内にこんな馬鹿な話があってたまるかよ……)

 

「こっちへ!安全なところを……」

「うん。」

 

急襲され混乱したまま本能に任せ、うすら冷たいニオの手を掴んで走ろうと試みる。

全速力のはずなのに景色が全然動かない。足が飲み込まれるような感覚だ。

触れていいのかも分からない蕩けた感触の酷い不快感を跳ね除け、それでも僕は足掻いた。

(無理矢理ここから出るか?いや道路も何かおかしい。とりあえず——)

 

「ぅぐっ……あそこへ行くぞ!大丈夫だ!」

僕はニオの顔を確認して社の裏の大木を目指した。近くでもあそこだけは光線の影響を受けていないように見えたからだ。

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