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お隣に、学校一の清楚可憐な『盲目美少女』が引っ越してきました~恋愛不信であるはずの俺が、隣人付き合いをしているうちに君に恋してしまうのは時間の問題かもしれない~  作者: 水瓶シロン
第二章~一年三学期(学校生活開始)編~

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49/90

第49話 お隣さんと鬼退治①

 二月に入って最初のイベントと言ったらバレンタイン――と言う奴は、大抵陽キャか、貰える貰えないどちらにしてもチョコを願う者達だ。


 違うだろう。


 二月に入って最初の年中行事と言ったら節分だろう。


 邪気を払い、無病息災を願って豆を撒くという日本古来からの伝統的な文化……と、偉そうに心中で呟く俺だが、正直なところ節分の意味を考えて豆を撒いたことなんてないし、むしろ掃除が大変だから撒かずにそのまま食べたりする。


 だから、今年もスーパーで豆を買ってパクパク摘まむだけだと予想していたのだが…………


「家でっか……」


「あまり見えない私でも迫力を感じます……」


 神崎に連れられるがまま俺と紗夜がやってきた場所は、神崎の家――いや、神崎邸と言った方が良さそうだな。


 前に神崎を送っていったときに、ここが神崎の家であることは知ったが、改めてこの邸宅を見ると、神崎は本当にお嬢様なんだなと実感する。


「ささ、遠慮せず入ってぇ~」


「「お、お邪魔します……」」


 セキュリティー万全といった感じの重厚な門を潜り、石畳を歩いていく。


 雰囲気に完全に飲まれてしまっている俺達に構うことなく、お嬢様が早く早くと先導していく。


 広い玄関。手すりまでお洒落な階段。上った先に長い廊下。


 やっと辿り着いた神崎の部屋の広さは、俺と紗夜が住んでいるマンションのリビングとダイニングを合わせたものよりも、圧倒的に大きかった。


「で、ここで豆撒きしようって話だっけ?」


 俺は神崎が帰り際言っていたここに連れてきた理由について話題を持ち出す。


 すると、神崎は「あー、それなんだけどね?」と少し申し訳なさそうな顔をしてチロッとした先を出した。


「ホントのこと言うと、豆撒きはついでなんだよねぇ。つっしーと紗夜ちーを前から家に呼びたくて、たまたま今日が節分だったから~」


「いや、それならそうと言ってくれればいいんだが……わざわざ理由なんかつけなくても」


「んもぅ! つっしーわかってないよぉ! 『今日家に来ない?』って意外と勇気要るんだからぁ~!」


「マジか。お前にもそういう感情あったんだな。恥ずかしさとか感じない体質だとばかり……」


「ホント、つっしー私のことなんだと思ってるのっ!?」


 いつものように、神崎は紗夜に「紗夜ちぃ~」と泣きついていき、紗夜はそんな神崎をなだめる。


 そして、紗夜は(わめ)く神崎の頭を正座した脚の上に乗せながら口を開いた。


「確かに節分と言ったら豆撒きですけど、恵方巻も忘れてはいけませんね」


 ちなみに今年の恵方は北北西です、と付け加える紗夜に、俺は「流石、年中行事には強いな」と感心する。


「美澄神社でも節分会(せつぶんえ)をやってましたから。まぁ、流石に有名どころの大きな神社やお寺に比べたら賑わいは劣りますが」


「へぇ。そのときも紗夜は神楽やるのか?」


「はい。奉納の儀として」


「きゃー! 紗夜ちーの巫女服姿とか超見てみたいっ!」


「珍しく同意見だな」


「もう、颯太君まで……」


 仕方のない人達ですね、と紗夜は若干気恥ずかしそうにクスッと笑みを溢す。


 そんなところへ、神崎はまたまた申し訳なさそうにチロッと舌を出し、紗夜に向かって手を合わせた。


「あ、あとね紗夜ちー? 実は今日、家に誰もいなくてね? 夜ご飯がちょっと……」


「――って、お前絶対それ目当てだったろ」


「あ、バレた?」


 紗夜は隣で曖昧に笑いながら「別に構いませんよ?」と言っていたが、夕食を作ってもらいたいなら最初からそう言えという話だ。


「一回おでこ貸せ」


「いやぁあああ! つっしーのデコピン結構痛いんだもん! 容赦ないんだもんっ!」


 勢い良く立ち上がって額を手で隠す神崎。


 俺も逃がすまいと立ち上がり、右手中指をいつでも弾き出せる状態にセットする。


 神崎は一目散に逃げるが、俺も駆ける神崎を追い回す。


 部屋が広いこともあってなかなか骨の折れる追いかけっこだったが、最後には神崎の体力が尽きて、俺のデコピンが火を噴いた――――



◇◇◇



「うぅ……まだちょっとヒリヒリするよぉ……」


 片手で俺に弾かれた額を擦る神崎。


 あれから神崎がキッチンから持ってきた紅茶とお菓子を摘まみながら他愛のない雑談に耽っていたのだが、それにしても美味しいな。


 素人でもかなり高価な茶葉を使っているとわかるし、お菓子はお菓子で、どれもしっとりした重めの箱に入ってそうな感じのモノだ。


「そんなことより、紗夜が料理するのは良いとして、慣れないキッチンで大丈夫か?」


 テーブルを挟んだ対面で、神崎が「そんなことっ!?」と不満げに抗議してきているのは無視して、俺は右隣で背筋を伸ばして正座している紗夜に視線を向ける。


 紗夜にとって調理器具の配置と言うのは非常に重要なことだ。


 目が見えない分、決まった配置でないとどこに何があるのか把握するのが難しい。


「以前なら少し厳しかったかもしれませんが、最近はそこそこ見えるようになってきたので大丈夫かと」


 いざとなったらお二人に手伝ってもらいますし、と小首を傾げて微笑む紗夜。


 まぁ、俺が調理するのは無理だろうから、手伝うとしたら求められた調理器具を手渡すくらいのものだろう。


「私、超手伝うからねぇ~!」


「なら、俺は夕食後の豆撒きを頑張るとするか。ホレ、鬼はぁ~外ぉ~」


「――ちょ、つっしー!? エアーだとしても私に豆投げるの止めてッ!? ってか、ここ私んちだよ追い出さないでよっ!?」


「もう、颯太君? 鈴音さんにも優しく、ですよ?」


「だからアンダースローで投げてるフリをしてるだろ」


「つつつつっしーさん!? 紗夜ちーいなかったら、思いっ切り投げてきてたやつだよねコレ!?」


 紗夜ちーと私の扱いの差が激しいよぉ~! と不服を叫ぶ神崎を見ながら、俺は残りのお菓子を味わった。

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