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2/6

ゲームの知識で無双する


――――

 使用可能なチート一覧


 ・光属性魔法の全使用


――――


「はぁ……」


 王都の大通りを歩きながら、俺はひとりため息をつく。


 思った通り、《チート使い》はかなり有用なスキルだった。


 VGOにおいて、光属性というのは最上位に位置する魔法だからだ。


 攻撃・回復・補助のすべてを行えるうえ、魔王たちの「闇属性」にも有利に働く。


 そういったことから、ゲームを相当やり込まないと光属性を習得できなかった。具体的には、光属性以外の魔法レベルをすべて99に上げること。


 1レベル上げるだけでも数時間を要するVGOにおいて、この仕様は鬼畜という他なかった。


 それを――俺は使えるようになったんだ。

 この《チート使い》というスキルによって。


「はぁ……」

 だが、いまさらそんなものを手に入れてどうするというのか。


 俺は今度こそ、親に認められたかった。


 なのに……!


「おい、あいつが……」

「剣聖の息子なのに外れスキルを授けられたっていう……?」

「へへへ、平民に追い抜かれるとかざまぁねえの」


 ……わざとだろうか。 

 俺にギリギリ聞こえるくらいの声量で、通行人がヒソヒソ話し合っている。


「くっ……!」


《チート使い》を授けられてから、まだ数時間しか経っていないはず。 


 だけど、俺の失態は良い話のネタになっているようだな。 


 胸糞悪くなるが――気持ちはわからなくもない。

 俺だって、昔はそういうニュースなどを見てひとり優越感に浸っていたのだから。


「…………っ!」


 俺はいたたまれなくなり、全速力で大通りを駆け抜けた。 


 通行人が驚いたように振り返ってくるが、構わない。

 いいんだ。もうなにがどうなろうとも……!





 走るうち、いつの間にか王都を通り抜けていたらしい。

 いま俺の前に広がっているのは、地平線の彼方まで広がる草原。


「……はぁ」


 これからどうするか。

 正直に言えば、VGOの知識がある以上、この世界で生きていく自信はある。


 けど――そんな人生になんの意味があるだろうか。

 俺がやりたかったのは、そんなことじゃない……


「ギュオオオオオアアアアッ!」


「……っ!」


 突然聞こえたその雄叫びに、俺は身を竦ませた。


 なんだいまのは。

 もしかしなくても、近くの茂みから聞こえてきたような……


 しかも俺の記憶は間違っていなければ、いまのは……⁉


 俺は急いで声のした方向に駆け出した。

 剣聖スキルは授けられなかったが、これでも18年間鍛えてきた身。速く走ることには自信があった。


 そして辿り着いたとき、俺は予想通りのものを見た。


 ぱっと見は人型の影・・・・のような魔物で、目にあたる部分には赤の光点が二つ、右手には鎌が握られている。


 そして左手には――剣士らしき女性が軽々と持ち上げられていた。


「クク……逃げるなよ小娘。我が宿主となることを選べ」


「だ、誰があんたなんかと! 死んでもごめんだわ!」


 魔物と対峙する少女が大声で叫ぶ。


「フフ、いいのかな? さもなくば、この女を殺すまでだが?」


 ぎゅう、と。

 ベルグマが左手に力を込めた。


「…………ぁぁぁぁぁぁぁああああ!」


「レ、レイア!」


「ひ、姫様。私のことは構わないでください……。早く逃げて……」


「そ、そんなことできるわけないじゃないの……! 私たち、ずっと一緒だったのに……!」


「姫様……! ぐぁぁぁぁぁぁああ!」


 影型の魔物、ベルグマ。


 戦闘力はたいしたことないが、知能に秀でており、ずる賢い魔物だったと記憶している。


 きっと何らかの策を講じて、あの女性たちを嵌めたのだろう。

 だが正面からの戦いでは、こちらに分がある――!


 俺は咄嗟に駆け出すと、正面からベルグマに突進をしかけた。


 ――アルゼルド流、虚空一閃。 


「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

「ゴグアッ‼」


 俺の剣がベルグマの背中部分を的確に捉え、周囲に光のエフェクトが発生する。


 これがVGOにおける重要テクニック――クリティカルだ。


 攻撃力は2倍になるうえ、相手の防御力も無視できる。


 ベルグマ程度なら一撃で倒せるだけに、狙ってクリティカルを出すのはかなり難しい。剣を振って0.15秒後に当てなければならないので、かなりシビアなタイミングなのだ。


 だが、前世の俺は極度のゲーマーだったからな。

 クリティカルを連発させるくらい、造作もない。


「クカッ……!」


 そして思った通り、ベルグマはその一撃で地面に伏した。


 やはり弱い。

 戦闘力だけでいえば激弱だな。 


「馬鹿な……。この私が、なぜ……っ‼」


 絶命するその瞬間まで、ベルグマはなにが起きたのかわかっていないようだった。



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