Fight for loved ones
一応最後。
二十五話 この大海原の上で
「フハハハハハ!殺せなかったが俺の勝ちだ!」
俺──如月敦人──は高らかに叫んだ。俺は船のデカいリビングみたいな部屋でソファにどっぷりと腰掛けている。周りには五人程度の部下が居る。
結局はせいぜいただのガキだ。今頃捕まっているだろう。フハハハハハ…まあ逃しててもなんでもいい。ここからならやつを暗殺できるからなあ…
「勝った!俺の覚悟の勝利だァ!あいつがドアノブを開けることを祈っていた!そしてあいつはドアノブを開けた!あの伏兵は殺られたが、俺は殺られない!完全勝利!勝ったやつが正義だ!弱いから負けるのではない!負けるから弱いのだ!」
俺は高笑いをし続ける。笑いが止まらない。どうせあいつに黄金の精神なんてない。あいつはガキなんだ。絶望の海に沈んでおけばよい。
「流石兄貴!あのNumber.2から逃げ切るなんて!」
近くに居た部下が目を輝かせて俺を褒めてくる。フフフフフ……うちの部下は優しいもんだ。
「フハハハハ!そうだろう!」
この船は既にNumber.2から二十mは離れている。勝った。ここまで離れれば大丈夫だ。俺は紅茶を啜る。いつもより甘く感じた。俺は苦いものが苦手なのでまあよしとしよう。
「次はNumberの本部を奇襲してやるか……フフフ」
俺はカップを置いた。カァンと綺麗な音が響いた。俺は窓を覗いた。綺麗な夕焼けが映っていた。クリスマスもこれで終わりか……楽しいクリスマスだ。フッ……フハハハ
「今日は記念すべき日だ!飲むぞ!」
オオオオ!と部下は歓声を上げる。
「ドンペリ持ってこい!」
俺が叫ぶと、部下の一人が冷蔵庫がある部屋に走っていった。
「凄いですよ兄貴!いきなりドンペリなんて!」
「ガハハハハ!そうだろう!」
俺らはドンペリが来るまで話をしていた。華やかな俺の歴史などを語っていた。Dreamerはやはり素晴らしい。
「ドンペリ持って来ました〜!!!」
「ナイスだ!さっそく飲むぞ!」
部下がドンペリを持って戻ってきたため、俺は即グラスにドンペリを注いだ。俺は注いだ直後にグラスをあおいだ。口の中に葡萄の豊潤が広がった。身体が熱くなる。久しぶりに味わった味だった。前にドンペリを飲んだのはいつだっけか…たしか前Number.7を倒した時か。まあそれはどうでもいい。
「さあ、どんどん飲め!」
俺はドンペリを他の部下のグラスに注いだ。部下は歓声をあげる。そして俺達は話をしまくった。楽しい話を。
「おい、注いでくれ」
俺はドンペリがグラスの中から無くなったため、ドンペリを持ってきた部下にドンペリを注がせた。
「…ところで兄貴」
「ん?」
部下はドンペリを注ぎながら、衝撃的な一言を放った。
「お前、僕に気づかないなんて、アホだな」
俺は目をかっぴらいた。こいつ、まさか……部下は、俺の顔にドンペリをかけてきた。俺は驚愕した。
「てめぇ、何して…!」
部下が叫ぶが、既に遅かった。気づかなかった………
「まさかここまでアホだとはな……やれやれ…」
「き、貴様は……」
目の前の男は、呆れた口調で、
「それなら…ここで死ぬがいい。如月敦人」
目の前の男、Number.2俺に指を突き立ててきた
「てめぇ…どうやって…」
如月敦人は焦りつつもそう聞いてきた。後ろでは銃を構える音がする。
「おっと、酔ってるてめぇらに僕は撃てないよ。」
僕は挑発をするが、敵は発砲しなかった。どうやら図星らしい。アホな連中だ。ま、Dreamerは全体的にアホの塊だが。やれやれ……
「どうやってここに来たか?簡単な話さ。僕は手榴弾で船に穴ぶち空けてそっから侵入したんだよ。わかれよ、このビチグソが」
僕はポケットから手榴弾を取り出した。全てを察したかのように、如月敦人は絶望した顔で僕を見た。僕は、
「さようなら、如月敦人。地獄で僕を見守ってるんだな」
と言い、拳銃を頭に突きつけた。引き金に指をかける。
「俺はな、五年以上お前を探していた。お前が憎かったぜ?元々俺は、如月敦人、てめぇの存在なんて知らなかったぜ。でもな、俺は知ったんだよ。」
僕は一息つく。如月敦人は下を向いてうつむく。俺は突きつけた。この事実を。
「てめぇは俺の父親だ。奏の死の元凶に近い存在、俺の一番憎い存在。ビックリしたぜ。てめえが生きてるなんてよ。てめぇは殺さなきゃ俺の気がすまねえ。」
僕は拳銃を下ろした。如月敦人は一瞬ホッとした顔をした。やれやれ、哀れだぜ……
「ゆ、許してくれ……この通りだ……」
如月敦人は椅子から降り、土下座をした。僕は真顔で如月敦人を見つめ続ける。そして僕は、
「許す許さない?そんなの、」
俺は一拍あけて
「死んで神様に言え」
僕は拳銃を土下座し続ける如月敦人に向けた。同時にカチャリ、と後ろで音が鳴る。
「お疲れ様、部下達。君たちも俺たちと沈もうね、このゴキブリ共」
僕は引き金に指をかけ、引こうとした。しかしその刹那、いきなりドン、という音がした。なんだ?周りのDreamerの者も、如月敦人も、驚いている。まさか……
「……もう沈没が始まったのか?!」
まずい、まずいまずいまずいまずい。完全に勝ち誇っていたが、ここに来て穴を開けた弊害が……
「やっちまったぜ……」
僕は引き金を引いた。しかし、沈没しようとしてる船が揺れた。奇跡である。僕にとっては悲劇だわ。如月敦人も揺れて動き、ついでに僕も動いた。そして俺たちの距離は十メートル近くになった。それだけならいい。それだけならな。僕は拳銃を持っていた右手を見る。
「……チッ!」
拳銃は無かった。落としてしまったのだ。Dreamerの部下共はにやにやしながらライフルやらなにやらを向けてくる。僕は逃げようとするが、
「逃げたら撃つぜ」
と脅迫された。どっちにせい死ぬってことか。アホらしい。
「死ぬなら華々しく散ってやるよ」
僕は走り出した。パンパンと銃声が聞こえる。だが、揺れる船内では当たりゃしない。僕の脇などを通過する。
「こ、この!」
敵はもっと撃ってくる。流石に命中する。しかし、左足しか撃たれてない。
「左足くれえ平気だわ」
僕は先程開けた大穴まで走る。後ろから銃弾が飛ぶが、僕は全て躱すことが出来た。なんというか、災い転じて福となすだな。
「サラバだ!哀れなゴキブリどもよ!」
僕は穴から海に飛び込んだ。流石に海に潜れば当たらないだろう。僕はリボルバー『駿河』を空高く投げ、海に潜った。銃声も聞こえない。僕は海面に出て、駿河をキャッチした。そして駿河の引き金を敵に向かって引く。引く。引く。
「お前……は…海に潜ったり泳いだり…魚か、てめえは……」
僕の駿河に撃たれた一人は、僕に力なくそう言ってきた。僕は地獄耳なので、一応聞き取ることが出来た。僕は口角を上げた。
「魚?違うね……僕はもぐらさ。土に道を切り開く……もぐらさ」
敵は倒れこむ。はあ……如月敦人──クソ父親をこの手で殺すことは出来なかったか……僕は右手を見つめる。僕は拳を握った。
「これ……で…終わったよ……恵。
ありがとう……姉さん……愁……」
みんなありがとう。恵……僕は絶対忘れないからね。
僕は銃を投げようとしたが、その場で踏みとどまった。僕にはこんなもの要らない。しかし、この手で人を守るには必要なんだ……
「生きて、人を守る。それが、僕──俺、Number.2、もとい神無月疾風、雨ノ森疾手の宿命よ……」
僕の意識はそこで途切れてしまった。
〜fin〜
やっと終わったよ!二ヶ月近くかかりました。色々。実は五章完結って言いましたからね。
まぁこんなクッソふざけた終わり方ありませんので!
エピローグとかにご期待を




