死にたがり少女は、無自覚少年に籠絡されてます。
僕が唯一、普段からクラスで話すのは、死にたがりの少女だった。彼女はいつも、自慢話のように苦しまず自殺をする方法や、拷問の方法を僕に話してきた。
「ねぇ。知ってる?太宰治って愛人と一緒に入水自殺をしたそうよ。」
「へぇ。どうして自殺なんてしたんだろう。」
「......それはわからないわ。直接本人たちに聞くしかないね。まぁ死んじゃっているわけだけど。」
おどけたように彼女は言った。
「あなたは自殺って、どう思う?......私はね。決して悪いことだとは思わない。だってそうでしょ?、自殺だって現実から逃げるための立派な手段の一つなんだから。」
彼女は病的なまでに白い頬を薄く紅潮されながら続けた。
「だから、私は憧れてるの。死ぬことに。自らを殺すことに。」
彼女の言葉は、たまによく分からない。
「ねぇ。...なんで?................そんな顔しないでよ。」
「...........どうして、あなたは、泣いてるの?」
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僕が彼女と初めて会話した日のことは今でも覚えている。高校二年の春、今から八ヶ月も前のことだ。
初めてクラスで会った彼女は隣の席で一人、憂鬱そうに窓の外を見ていた。その瞳はあまりにも脆く儚げで、まるで全てのことを諦めているかのような、そんな色を感じた。
「これから、一年よろしくね。」
「...................。」
「好きなこととか、趣味とかある?」
「..................。」
これは、仲良くなるのは前途多難のようだな。その頃の僕はそう思っていた。
だが、僕が積極的に話しかけているうちに、彼女の纏っていた氷は、だんだんと溶けていった。そしてそのうち、彼女自身のことも教えてくれるようになった。
「ねぇ。好きな食べ物は?」
「りんご。あと、トマト。」
「じゃあ好きなアーティストは?」
「...いない。」
「もしも、無人島に一つ持っていくとしたら?」
「自殺用の首吊り縄。」
「それはまたユニークな発想だね。」
彼女との話は、僕にとって新鮮なものばかりであった。彼女はことあるごとに話を自殺の話にもって行きたがり、僕がその話に相槌をうつ。いつしかそんな構図ができていた。
そんなある日、彼女は唐突にこんなことを言ってきた。
「あなたはなんで私の話をずっと聞いてくれるの。」
「んーーー何でだろう。」
「......したいの?」
下心を疑われてしまったようだ。慌てて僕は首を横にふった。
「...じゃあなんで?」
真剣な眼差しで彼女は、僕を見つめてきた。
.......どうしてか、この返答を間違えたら僕は二度と彼女と話せなくなってしまうような気さえした。
「......君と...話すのが楽しいから。...それだけじゃダメかな。」
彼女は少しの間キョトンとした後、堰を切ったかのように笑い出した。
「アハハハハハ..........いいよ、それだけで。十分な理由だよ。そうなんだ、、そう思っててくれたんだ。なんか、ありがと。」
まさか彼女から、感謝の言葉が聞けるとは思ってもみなかった。
「どういたしまして。」
僕がそう言うと、彼女は照れたように僕に背を向けて窓の外を眺め出した。頬杖をついて景色を眺めるその姿は、僕にはさながら一枚の美しい絵画のように見えた。
「じゃあ、逆に君はどうして僕と話してくれるの?」
「それはねーーー。えっとね........................うん......やっぱ秘密っ!」
「えーーー。何で。」
(だって、いつも愛想ない私に話しかけてくれるあなたが......好きだからだよ。....................だなんて言えないもんね。)
「んーー。じゃああと、一年くらい仲良くしてくれたら教えてあげる。」
「一年?俺は一生仲良くするつもりだったけど?」
「も、またそーやって軽口叩く。.......じゃあ一生仲良くしてよね?」
「もちろん。」
(もーー。この人は無自覚にまたそーゆうこと言う。.............あーーでも、確かに一生かもね。私の余命も...後一年なんだから。だから......私の...いや、私達の...最期の最後まで..........一緒にいてね。悠樹くん??)
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