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ぷろろーぐ

人生は自分が楽しみ続けることが何よりも大切なのである。

人は何のために生きるのか。


生まれてこのかた30余年、私が己に問い続けてきた問いだ。


とある生物学者はこう言った。


「生物学的には、生きる意味などありません」


それを初めて聞いた10歳の少年だった私はこう思ったのだ。


「生きる意味がないのなら、せめて何か夢中になれることをして生きたい」



私は平凡な男だった。


夢中になれること。


それを追い求め、探し続けて大学まで進学したが、終ぞ自分にとってのそれを見つけることは出来なかった。


卒業後はそれなりに名の通った総合商社に就職した。


元々語学は得意だったのもあり、海外とのやり取りでも周囲から頼られるポジションを得ていたと思う。


しかし、やはり仕事の中でも私が追い求めるそれは見つからなかった。


「お前は行動が足りていない」


酒の席で不意に同僚から言われた言葉に、頭をガンと殴られたような衝撃が走ったことを覚えている。


その日から、私はありとあらゆることに手を伸ばしてみた。


映画鑑賞、読書、ピアノ、山登り、水泳、マラソン、社交ダンス、ヨガ、カクテル、etc…。


趣味やアクティビティとググって出てくるものは片っ端から試した。


独身で、比較的貯蓄もあり、時間に余裕があったことから出来たことだが、しかし私が心から夢中になれることには出会えなかった。



ある日、母親に相談してみたことがある。


30過ぎて結婚の「け」の字も出てこない頼りない息子の私に、母はこう言った。


「平凡でいるって、それだけで凄いことなのよ。夢中になれることがなくても、それでいいじゃない」


女手一つで私を育て上げた母の言葉には不思議な重みがあり、私はとりあえず頷くことしかできなかった。


ただ、やはり心のどこかに靄がかかったまま数ヶ月が経ち、私は事故でこの世を去った。



そして今、異なる世界に転生し、自分の前世へ想いを馳せている。


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