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How Dare You

作者: 月立淳水

 大人はね、子供のことを分かってあげなきゃならない。


 それ以上に、子供のことを守ってあげなきゃならない。


 それなのにね、子供がどんなものかということを正確に理解したうえで、性情の隙をついて利用する大人がいるんですね。


 子供と大人の一番の違いは、その世界の広さ。

 価値観の数。


 小さな幼児には、一つの価値観しかありません。それは、父母の(特に母の)作る価値観です。

 父母の言葉が作る世界、その世界を自分なりに頑張って理解しようとする。それが、一つの価値観を生きる子供です。

 やがて、その価値観に疑問を覚えるようになります。いわゆる第一次反抗期です。わざと従わないことでどんな不利益があるのかを試すようになるんです。これは、子供の正常な成長です。


 もう少し大きくなって、ちょうどティーンエイジャーに近づくころ、子供の世界はまた大きく変わり始めます。

 自分が属する価値観と世界とは異なる、もう一つの世界を理解しようとし始めるんです。

 二つの世界。

 1を2にするというのは大変な作業です。単数形のworldが複数形のworldsに変わるんですから。


 私は、この辺の子供の成長を描くのが好きです。そうしようと思って失敗することが多いのですが。


 このころの子供の価値観には、ものすごくわかりやすく強烈な特徴があります。

 それは、自分の属す第一の世界と、自分の属さない第二の世界を、相反するものとしてとらえる、ということです。

 それはしばしば「正義」と「悪」に分離します。

 そして、自分の属している世界が「正義」だととても強く信じ込みます。自分は正義に属しているという憧れを煮詰めた錯覚が生まれます。

 悪いことではありません。誰でもそうですから。


 これがいわゆる中二病です。


 現実と理想の折り合いが悪い子供は、妄想の中で非現実の世界に逃避し、現実を悪として戦うこともありますし(鎮まれわが右腕よ……!)、現実を愛する子供は現実の守護者として妄想の中で活躍します(教室に侵入したテロリストを以下略)。

 あるいは、自分とは全く相いれない世界、資本家や政治家の世界を、正義に対立する価値観であると強く強く信じ込んでしまうことも多いでしょう。ティーンエイジャーが割と多くの場合、反体制・反政府の価値観を持つのは、このためです。成長の過程の当然の反応なんです。


 自分の属する世界とそれ以外の世界という対立構造の中で、自分はまごうことなく正義の側にいる、そう信じる、そういう成長過程があるというだけなんです。大人は、それを窘めるのではなく、温かく見守ってあげればいいんです。それが、過激な行動に移らないように。妄想は妄想のままで終わるように。


 やがて成人に近づくと、世界は対立していないと気が付きます。いろんな価値観は、それぞれが必要だから存在しているのだと。それは、第二の世界を徹底的にこき下ろしつつも分析し理解した結果です。第二の世界の中に、本当のたくさんの世界があるということを知るからです。そして、それら同士が必ずしも対立していないと気が付くんです。「正義の反対はまた正義」なのではなく、多くの価値観は「ともに正義」なんです。それぞれの価値観の中で一生懸命に生きている人たちに気が付くんです。政府は悪でも敵でもなく、みんなの味方であろうと努力しながらも時々失敗しているだけだと気が付くんです。


 そんな子供の成長過程を悪用する人がしばしばいます。


「私は正義の側にいる」という強い強い憧憬を逆手にとって、彼女の属さない世界を彼女の敵だと信じ込ませ、口汚く罵るよう仕向ける人がいます。


 How Dare You.


 私は子供の敵を許さない。



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― 新着の感想 ―
[一言]  お久しぶりです、また作品が読めて嬉しく思います。  ……まっすぐにエッセイだったのですね?  最初書いているのが月立さんでしたので、短編としてどこからシナリオが展開していくのかという目で…
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