「03」 終電で
駅のホームには一人立ち尽くす少女がいた。
3月のまだ冷たい風が、彼女の髪をなでる。
『一条なつき』、15歳。 ここからは遠い東の地で生まれ、一人でこの街に越してきた。今日も生活費を稼ぐため、夜遅くまで電車の乗務員のアルバイトをしていたのだ。
時は遡り電車が最後の駅に着こうとしていた頃、彼女は一番後ろの車両で、真っ裸で床に寝転んでいる女の子を見つけた。
お酒を飲める歳には見えないが、酔いつぶれているのか、はたまたただ寝ているのか...
少しも起きる気配がない。
そばに駆け寄り、声をかけるも何やらぶつぶつ呟いている。
その後は散々だった。
胸を揉まれ、おまけに『リンゴ餅』なる、欲しくもない評価を得た。
相手が男だったら、とっくにグーパンチを食らわせているところだ。
しかし、女の子とはいえ、あっさり許してしまうのは、誰にでも優しかった両親からの受け売りか...
そのあと、少女は目覚めると、また訳のわからないことを言って走り去ってしまった。
服を一枚貸したはいいが、ここは世界一の歓楽街『桂城町』。
ましてや、この時間帯だ。
一条なつきは少し心配になりながらも、走り去る少女の背中を眺めていた。
すみません、短いです。