貧乏侯爵令嬢は、もふもふ精霊とスローライフを
家裏の畑で野菜を収穫していたら、どうみても貴族の子息としか見えないプライドの高そうな男がやってきた。
「アントワネット・エドウィンはお前か?」
なに、この上から目線の男。
「おい、聞いているのか!」
こんな失礼な男は無視する。大体貧乏とはいえ侯爵令嬢と知っていてあの乱暴さ。借金取りかっつーの!
まあ、借金取りがもし来たとしても、撃退するけど。
先日成人の15歳になり、年齢的にはエドウィン侯爵家はあたしが継げるようになった。これからもふもふチートをやっていくのだ!
家の中に戻ると、お父様は誰かと話していた。
空中に漂っているリスの精霊に声をかけた。
「ねえ、誰?」
『お嬢を迎えに来たって』
「どういう理由か知らない?」
『借金の形にどうとか、お嬢ここからいなくなるのか?』
もふもふなネズミの精霊が心配そうに見る。
「まさか!すぐにでも出て行って貰うわ」
侯爵家が貧乏になったのも元を正せば、父の弟が原因だ。ギャンブルに女遊び、それだけでなく領地を勝手に担保にしてお金を借り、それを持って行方不明になったから。その金額は国に治める税金と3年分と同じ額だったのだ。
家にあるものをかなり処分し、長く勤めてくれていた人達の半数は辞めて頂いた。それでも3年目を迎えることには、限界がやって来たので屋敷を売り払い、あと少しというところまできた。
今は領地の奥の方のギリギリ屋敷と呼べるような家に住んでいる。
あたしとしてはこの森に囲まれ自然豊かで気に入っているが、お茶会にも夜会にも顔を出さなくなったあたしは、きっと落ちぶれた令嬢として話題になっていることでしょう。あんな上から目線の男が来るくらいだ。
本当に腹が立つ。
「ねえ、この書類陛下に届けて」
侯爵家を継ぐために準備していた書類を収納袋からだした。
そう窓に向かって声をかけると、大きなワシの精霊が入ってきた。
『いいよー』
見た目よりもとても可愛い返事である。
「お返事も貰ってきてね。先に前払いしておくね」
近寄ってきたワシの頭をゆっくり撫で魔力を渡すと、気持ちよさそうに瞑っていた目がカッと開いた。
『行ってきまーす』
「宜しくね!」
ではもふもふなかわいい精霊たちとここで一緒に過ごすために、戦いましょう。
今まで姿を見せていなかった猫や犬、狐・狸の精霊たちが次々と現れ毛を逆立てた。
もふもふな可愛いこの子たちに勝てるかしら?