表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twin drop  作者: あおい
06
25/25

06

■06■


 星明かりが降り注ぐ夜明け前の道を、三人で歩く。

 夕貴は勇気とふたりで、クリストファーを病院の入り口まで送り届けた。

 見知らぬ街の、見知らぬ病院へ。


「じゃあクリス」


 彼と別れの握手をしながら「しっかりお別れをしてね」と言うべきなのか。それとも「頑張ってね」と言うべきなのか。夕貴は迷った。


 ――頑張るって、何をだろう。こう言う時って何を言ってあげればいいの。


 焦る夕貴の隣で勇気は、現実的な事をクリスに告げる。


「お前、ちゃんと手続きして帰国したわけじゃないし、マトモなルートじゃ日本には戻れないんだからな」


「わ、分かってるよぉ。葬儀が終わるまでふたりは、あの城で待つ? それともこの国を観光する?」


「一度帰るよ。また迎えに来てやるから、戻る日時が決まったら連絡して来い」


「うん、ありがと」


 クリストファーは薄く微笑んだ。


「ねぇユキちゃん、ユウくん。次、もし僕が帰国して、一族の行事に参加しなければならない時」


「ああ」


 ――なんだろ? 飛行機代浮かせたいの?


 そんなセコい人間ではないはずだが。


「ふたりも一緒に来て欲しいと思ってる。僕の、大切な人として」


 その言葉に夕貴の呼吸は止まった。

 が、隣に立つ勇気は軽くフリーズしているようだった。


「じゃあ行って来るね」


 クリストファーは扉の向こうへと消え、後にはふたりだけが残された。


「あの……ゆうちゃん?」


 勇気の頬がピクピクと震えている。そして低い声で言うのだ。


「あいつ……やっぱそのうち、思い知らせてやらなきゃならないみたいだな」


 ――おっ思い知らせるって、何をっ? まさか、ぶん殴ってっ?


「〈いい奴〉だからって、結婚相手に選ぶとは決まってないって事だっ」


 ――〈いい奴〉だとは、認めてるのか。まぁ、そうだよね。はは。


「まぁまぁ、そんな怯えないでよ」


「だっ誰が怯えてるって?」


「私、ゆうちゃんが納得出来ないような相手とは、結婚しないよ。だから安心して」


「そ、それもそうだな……そりゃそうだ」


「同一人物なんだもん、私達」


「そうだな、そうだよな。あぁ、そうだった」


 深いため息を吐く勇気。


「私、ゆうちゃん以上に好きになれる男の子って居るのかなぁ?」


「……あ?」


「難しいよね」


「え? ……あぁ、まぁ、そうかもな」


「だけどもし、そう言う人が現れた時。……仲良くしてよね」


 勇気は思い切り苦そうな表情を浮かべた。


「そいつがクリス以上か、クリス以下か」


「ゆうちゃんの基準って、クリスなんだ?」


「仕方ないだろ、今のところあいつしか候補が居ないんだし」


「そうだねー。ゆうちゃんごとお嫁さんにしようだなんて、クリスだけだよねぇ。今のところ」


「とにかく。あいつ以下のヘンな男はお断りだからな」


「はいはい。私にはゆうちゃんが居るんだから、ヘンな男なんか選ばないよ」


「そうしてください」


「うん……ふふっ」


「んだよ」


「ゆうちゃん、可愛い」


「はあぁ?」と怒り叫ぶ勇気から、夕貴は逃げた。



 見知らぬ街を、ふたりで走り回る。


 異国の街は寝不足の視界で不思議に煌き、妙な開放感があった。お洒落なデザインの街灯が、意識の中でゆらゆら揺れる。



 もしかしたらいつか、自分と勇気はこの国のどこかで暮らす日が来るのかも知れない。来ないかも知れないけれど、来ないとは限らない。


 ただひとつ、確かな事は。



 将来。


 どこで誰と暮らそうと、自分の傍には、中には、いつだって勇気が居てくれる。

 走り回っている今・この瞬間みたいな、楽しい時が続けばいい。


 ――もちろん続くよね。だってゆうちゃんは最後の瞬間までずうっと一緒の、私の分身だもん。




    ・ おわり ・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ