ふりがなさん、論理(ロゴス)の海で神と出会う
それは、なろうユーザーのふりがなさんが、いつものように、面白そうな構造の概念を、色々な軸で反転させてから、なめ回して一般化し、圧縮保存する時の出来事でした。
ふりがなさんの、本日のおかずである、面白概念は「穢れ思想」です。
「穢れ思想」反転させると、清め思想になるのですが、そこから不純物を取り除くと、伝染する権威の概念的な何かになりました。
さらに、その伝染する権威の概念的な何かを、極小化や極大化を通して一般化すると、そこにはなんと、小さな小さな神様が居たのです。
「あなたが神か」
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
俺は奴の事を、割と難しい概念と思っていたら、奴は神だった。
な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も自分が何を考えてるのかわからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……
宗教だとか哲学だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。
神様の極大化とは、一般に知られている名のある神様です。
時間と共に肥大化し、破裂しては消滅していく、その神様たちを、聖書、あるいは逸話が押しとどめると、神様に名前がつきます。
その極大化した姿が、名のある神様です。
では、神様の最小化とは、いったい何でしょうか?
ふりがなさんは、伝染する権威の概念的な何かを最小化させ、一般化した時に、不思議な感覚に襲われました。
その直前まで、ふりがなさんは、権威に通じるこの概念は、自身の経験から一般化など出来ないと思っていました。
ふりがなさんは、権威や信仰と無関係だからです。
しかし、一般化は出来てしまいました。
そこでふりがなさんの見た物は、人類共通の論理の最小単位でした。
ふりがなさんは、論理信者です。
前提が同じなら、共通の結論に辿り着くに決まっている。
帰納法という論理を、全ての知的生物が行動学習するための原理を定式化した物と、信じて疑っていませんでした。
事実、ふりがなさんが帰納法に出会った時、その定式は、普段慣れ親しんでいる自身の思考の再確認として、何ひとつ違和感は無かったのですから。
既に定式化出来ているなら、ありがたいなと、当時のふりがなさんは思いました。
しかし、世の中には、普段慣れ親しんでいて、知的生物共通の原理であるハズの帰納法を理解出来ない人は、たくさん居たのです。
それは、スマホを使っていても、スマホについて、全てを理解している訳では無い、という話とはまるで違ったのでした。
ふりがなさんの信じる、普遍的な原理、簡単な帰納法とは、世間一般には、普遍的な原理ではなかったのです。
帰納法は、たくさんの人に必ずしも合ってるとは言えない、ただの推論の一つの手段と勘違いされます。
帰納法の自明的な話として、帰納法は、反例を導き出し、反例のある時に、対象の命題を不完全だと否定する手段なのだとまでは、たどり着けない人が多いのです。
何故、多くの人が、普遍的な思考であるハズの、帰納法にたどり着けないのでしょうか。
論理の最小単位は、帰納法による、命題の是非、オンオフではないのか。
論理信者である、ふりがなさんは、普遍的であるという前提を忘れて、多くの人が、まだ、帰納法にはたどり着いていないだけなのだと信じていました。
しかし、その日は、新たな論理の最小単位に出会ってしまいました。
その名は、神です。
伝染する権威の概念的な何かの最小単位、人類共通の論理の最小単位、不純物を入れ最大化されると、穢れ思想や、清め思想になるモノ。
ふりがなさんは、最小単位のその概念を、一般化させるために最大化させます。
それは、まさに、神との対話でした。
―最小化された神の前では、帰納法も他人の信仰しているだけの神となる。
異教徒の言う事は、神の教徒には通じないのだ、ふりがなよ。
「なんと。では、私の信じる論理とはいったい」
―お前の信じる論理とは、人類共通の普遍的な論理には、なり得ない異神である。
人類共通の論理とは、自身の信じる論理、即ち、お前の中にある神である。
「おお、神よ。あなたの言う事は確かに正しいかもしれない。しかし、個々が持つ神の形が違うなら、真に人類共通の論理など、なくなってしまうではないか」
―帰納法を含む定式化された論理は、バベルの塔だ、ふりがなよ。
人知れず、定式化された論理を積みあげた時、きっと神の怒りを買うだろう。
「それでは、科学は。リベラルは。我々はいったい何を指針に生きて行けばいいのですか」
―自身の神を受け入れるのだ。
信仰を否定してはならない。
お前が帰納法を否定しないように。
「思考の共有には、何を持って挑めば良いのですか」
―違う結論が出るのは、むしろ自然な事なのだ、ふりがなよ。
何故なら、論理の最小単位は、自身の神なのだから。
そして論理に神は宿る。
民が大きく対立する時は、再び神を意識し、共通の神を天に抱くのだ。
次の言葉を民に広めよ。
み
ん
な
違
っ
て
み ん な 良 い
そうして、夜が明けると、燃え尽きて灰になったふりがなさんは、さらさらと崩れ落ちた後、風に運ばれ空に散らばって行くのでした。




