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告げられた事実

物語中のひとつの山場です。

今回は短いめですが、ぜひ感想を貰えたらと思います。

よろしくお願いします。

  動けないふたりをあざ笑うようにその触手がハムに憑りつこう触手を伸ばす。

  ウラは力を出し切り、俺はハムに押さえられ動けない。


  伸ばされた触手がハムに絡みついたとき、横一線に薙ぎ払われた剣閃を受け、呪われた念はその場に吸い込まれるように消失した。


  「あぁぁぁぁぁ」


  その剣閃を繰り出したのはウラの攻撃から魔女を庇って倒れていたアムだった。


  「アムサリアさん、大丈夫なのですか?」


  その体は魔女を消し去るためにウラが放った膨大な輝力による傷跡が色濃く残っている。肌は焼けて力もかなり失っているが、先ほどよりも体を構成する陰力の密度は戻っているように感じた。


  「この場が陰力で満ちていることも幸いした。立ち上がる程度には回復したよ。キミたちも無事で……、なに……より、だ」


  フラフラとよたつき右に左に踏ん張ったあげく、前のめりに倒れながらそう言った。


  「バカ、おまえが無事じゃないだろ!」


  俺はどうにか上に乗っているハムをどかして倒れたアムのそばに這っていく。


  「しっかりしろ」


  うつ伏せに倒れたアムを抱いて仰向けにして肩を揺らすと、


  「そんなに激しく揺らすな、ちょっと休憩しているだけだ。またすぐに動けるようになる」


  状態を見れば強がりとしか言えない言葉を笑顔で返してきた。


  「頑張ったなラグナ。事情はわからないがハムは正常に戻ったようだぞ」


  ハムの体は長く伸びた体毛が抜け落ちて、大きさも半分近くまで縮んでいる。


  ウラはどうにか立ち上がり、ハムのそばに行って声を掛けていた。


  魔獣化した聖霊仙人はなんとか戻すことができ、アムも意識を取り戻した。だが、事態が好転したとまではいかない。


  ハムが呼び出した精霊幻獣たちは攻撃を止めたがその場に留まって動かない。ハムの意識が途絶えたことで敵対行動はとらないものの、加勢は期待できなさそうだ。


  「ラグナさん動けますか? 魔女は健在です、加勢に行かないと」


  そう言ってウラは腰のポーチから丸薬と小ビンを差し出してきた。


  「私たち森の妖精の秘薬です。少しですが元気になります」


  「ありがとう」


  受け取った丸薬を口に放り込んで噛み砕くと苦味と酸味、そしてわずかな甘味が口いっぱいに広がり、意思とは関係なく眉間にシワが寄った。耐えがたい奇妙な味を小瓶に納められた液体で流し込むべく一気にあおると、あまり経験したことのない味が鼻と喉の奥に広がった。


  「うげー」


  「お口に合いませんでしたか? 時間はかかりますがじわじわと効いてくるはずです」


  同じモノをモグモグしながらウラが問う。


  小ビンの中の液体は酒だった。お父さんが飲んでるのを貰ったことがあるが好んで飲むものではない。


  「良薬口に苦しです」


  口の中に残る奇妙な後味に耐えていると、不思議と体が楽になり始めた。高価なポーションでもこんなに早く効き目を実感したことはない。胃袋に入っただけで効果が現れるとは、さすが妖精の秘薬というだけのことはある。


  少し戻った力を足に込めて走り出そうとしたとき、ウラがアムに質問した。


  「アムサリアさん、あなたはなぜ魔女を庇うなんてことをしたのですか?」


  ドタバタで忘れていたがこれは確認しておかなければならないことだ。


  「そうだぞ、どういうことなんだ。あの研究施設の中で何かわかったのか?」


  アムは横になったままチラリとハムの方を見て、小さな声で話した。


  「あの魔女は……、あの魔女が、ウラの姉のノラなんだ。ノラは魔女に殺されたのではなくてノラが魔女になって人々を苦しめていたんだ」

アムサリアの口から告げられた事実。

今回のお話、お読みいただきましたら評価、感想を貰えると幸いです。

よろしくお願いします。


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