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談議 2

  「私たちの行動は全てこの街の人々のためです」


  立ち上がっていたダイナーさんは椅子に座りお茶を一口飲んで声を抑えめに質問した。


  「お前たちの目的はなんだ?」


  「私たちの目的は魔女を倒すこと。再封印されてはそれは叶いません。ですのでその協力を求めたこともありましたが魔女の使徒だと勘違いされてしまい、しかたなく私たちだけで実行することにしました」

  「勘違いされたのってこんな格好してるからじゃいですか?」


  シエスタが冷静に指摘する。


  『ごもっとも』


  「ふたりに聞いた話ですけど、以前この街の人に追われたときに精霊幻獣ってのを使役したのを妖魔を呼び出したと勘違いされたみたいで。聖霊仙人だと名乗ってもあの美化された像のせいで信用されなかったとか」


  俺が捕捉を入れるとダイナーさんは少し気まずそうな表情をし始める。


  「今までのことを整理すると……」


  旦那の表情を見てワイフルさんが話を締めにかかった。


  「聖霊仙人様と森の妖精さんは魔女を倒したいけど街の者の勘違いもあって協力を得られず、ふたりだけで魔女を倒そうとしていると」


  うなずくハムとウラ。


  「そして昨日、魔女の封印作戦当日にたまたまイーステンドからやって来たラグナ君らが風のほこらを通りがかり、魔女の使徒だと言われて主人らに襲われたと」


  「はい」


  「ダイナーはツヴァイさんに言われてラグナ君たちに闘いを挑んで返り討ちにされ、風のほこらを壊されちゃったわけだね」


  「……そうだよ」


  少し拗ねた顔で視線を下げて同意した。


  「ツヴァイがそう言ったんだ!」


  「なんでツヴァイさんはラグナ君とアムさんが魔女の使徒だと思ったんだろうね?」


  「それはですね」


  俺は小さく手を上げる。


  「アムが、魔女に劣らない陰力の力を持っているからだと思います」


  俺の言葉にダイナー一家は絶句した。


  「一言では説明できませんが、彼女はイーステンド王国の人々の膨大な邪念をその身に宿しているんです。普段はそれを外に出さないようにしてますが、上位の法術士であるそのツヴァイさんて人はそれを察知して、アムをとてつもない脅威に感じたのだと思います」


  「国中の人々の邪念だと! もしそれが本当ならそいつは人の心を持っていられるのか?!」


「俺もそう思いますが現に彼女は人の心を持って存在しています」


  「私らも昨日一緒に過ごしたけど人の良さげないい子だったよ。ねぇ?」


  「うん、すごくいい人だったぜ」


  「剣術と法術教えてくれたよ」


  子どもらふたりも同意する。


  「これはつまりすべては勘違いからきてるんじゃないかと思うんだけど、どうだい?」


  「その通りです」


  「にゃ」


  気まずそうな顔で腕組みするダイナーさんだったが、カッと目を見開いて両手をテーブルに勢いよく叩き付けた。


  「すまん! 俺たちの早とちりだった」


  おでこもテーブルに叩き付けて謝罪するダイナーさんはそのまま数秒間頭を下げ続けた。


  「気にすることないにゃ、間違いなんて誰でもあることだお」


  「そうです、間違いだと気が付いて良かったですね」


  驚いて言葉の出ない俺の横でふたりはちょっと上からな感じで言ってのけた。


  「顔を上げてください」


  俺も追っかけで言葉を掛ける。


  たっぷり十五秒頭を下げていた彼がようやく顔を上げる。


  「話せばわかるもんだねぇ。上手くいってホッとしたよ」


  ワイフルさんは椅子にもたれて大きく息を吐いた。


  「で、さっき言ってた魔女を倒すってのはいったいどうするんだ? 詫びと言ってはなんだが協力させてもらうぜ」


  「ダイナーが単純で良かったね」


  「へん、いつまでも引きずってたってしょうがねぇ。のんびりしてる場合でもないしな」


  そう、今は魔女の復活が迫った危機的状況だ。本来なら一刻も早くヘルトたちに合流しなければならない。


  「東の三層防壁でみんなと合流するつもりだったが北の大通りから直接中心部に向かおう。たった四人で向かうのは危険だが、イーステンドからの助っ人と魔女を倒そうって仙人様と妖精なら大丈夫だろ?」

  「もちろんです。役立たずのハムにゃんは私が守ります」


  「にゃぁ……」


  容赦なく正直な妖精と三度悲しみに沈む聖霊仙人。


  家の外に出ると馬車が待っており、急いで馬車に乗り込む。


  「すまん、遅くなった」


  「東でなくこのまま北の三層防壁に向かってくれ」


  「え? 北には防衛部隊だけで進行部隊は居ませんよ」


  「いいんだ、ちょっと遅れちまったから俺たちだけで魔岩石に向かう」


  「出発にゃ~! 急ぐにゃ~」


  俺は窓から顔を出して叫ぶハムの首を掴んで引き込んだ。


  「変に目立つことはしないでください!」


  「そうですよ、ハムにゃん。ピクニックじゃないんですよ」


  ウラはワイフルさんが出した茶菓子の袋を持ってモグモグしながら興奮するハムをたしなめる。いまいち緊張感を持てないままに、俺たちは街の中心部にある魔女が封印された魔岩石に急ぎ向かった。

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