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作戦

  話しを終えた俺たちは一度テントに帰ってタカさんたちに明日のことを伝える。

  少ししてみんなが揃うとパシルからは次の封印術発動の計画が話された。


  「ほこらと一緒に砕けた風の精霊結晶を補うために法術士を増員。魔石を使って精霊の拡散を防いで精霊結晶の代わりとします。そして、魔封石に封印法術陣を形成する時間を稼ぐためにひとつだけ妙案が浮かびました」


  タカさんは俺たちの方を向いて頭を下げた。


  「君たちの聖獣の力を貸して欲しい」


  「グラチェですか?」


  意表を突かれて声を上げてしまうが、タカさんはまだ頭を上げない。


  「精獣の力を使って局所的に魔女の力を抑えたい。四大精霊の力を揃えるのにどうしても風の精霊聖獣であるエルライドキャルトの協力が必要なんだ」


  「封印術と同じように四大精霊の力を揃えたいのですね」


  アムはすぐにその意図を察した。


  「幸いにも我々が用意できた精獣は地、水、火の精獣だった。四聖精獣ほどではないがそのエルライドキャルトは幼獣のようだし、バランス的にはちょうどいい」


  四大精霊の合成法術が魔女に有効ならこれは大きな戦力となるはずだ。


  「魔封石を囲う四つの塔の中で精獣を媒介にして陰力減衰の陣を作る。そうやって妖魔の力を抑えつつ術の発動の時間を稼ぐしか手立てがない」


  厳しい現状でどうにか封印を成功させようと考えられた最善の策にグラチェの力が必要だというのだ。


  「我々の戦力はどう考えても準備を積み重ねてきた今日より上げることはできない。苦肉の策で考えたのが精獣による局所的に有利な範囲を作ることだ。四聖精獣と君たちの加勢が今度の作戦の要となるだろう」


  頭を下げ続けているタカさんにアムサリアが駆け寄る。


  「タカ殿、頭を上げてください。もちろん協力します。わたしたちはどんな協力も惜しんだりはしません」


  タカさんの誠意にアムも丁寧に応える。

  ようやく頭を上げたタカさんはアムの手を握ってさらに感謝の言葉を述べた。


  「ありがとう。時間が無かったので了承を得られることを前提に作戦はすでに開始している。まずは不完全な封印術の発動によってすっかり消耗してしまった魔鉱青石に再び輝力を充填する。この輝力の充填には半日以上はかかるからな。疲弊した法術士たちがまず乗り越えなければならない試練だ」


  元気なときに半日以上も要するなら今回はどれほど時間がかかるのだろう。

  それ以前に蓄えることが可能なのか?


  魔鉱青石は俺が以前使っていた法剣の主原料だ。輝力を蓄えることのできる鉱石の中でも最上級のものだが、それもやはり一時的なものだ。

  時間が経てば宙に放出されてしまうので、当然そこへ留まらせる力を加えなければならない。

  法術法技の発現なら短い時間で済むが、封印法術陣の発現はどんなに早くても輝力が溜まる半日以上先の話である。となれば輝力が溜まるまでずっと力を留めなければならないと考えると二重の苦労だ。


  「他にも呪いを受けた者の解呪や怪我人の治療、体力の回復に備品の補充もおこなわなければならない。この苦しい状況の中で非戦闘員の人たちも一丸となって取り組んでいる」


  「だから今後の闘いのために休めるやつは休もう。それが今働いている人たちに対する誠意ってもんだよ」


  ヘルトの言葉を聞いてノーツさんとサウスさんは渋い顔をしながらも「おやすみ」とだけ言ってテントを出た。


  「ヘルトもだぞ」


  「もちろんだよ。でもその前にアムとラグナは明日早くに北門から森に入るから、ワイフルさんの家に泊まれるようにお願いしてくる」


  「それなら俺が代わりに連れて行ってやるよ」


  「大丈夫。それよりもタカさんは東門の警備の指示を出してあげないと。緊急事態で警備の交代要員が通常業務では回せなくなってるはずだよ。今頃トシもグダってるんじゃない?」


  「あーそうだった!」


  タカさんは立ち上がって上着を羽織る。


  「アムさん、精獣の件よろしくお願いします」


  「わたしたちは明日の早朝には出発するので、緊急事態を考えてグラチェは今夜から預けた方がよいと思いますが」


  「それならこのテントの裏の天幕で休ませてください。面倒はしっかりとこちらでみさせてもらうんで」


  「では、グラチェにはそう伝えておきます」


  「ありがとう」


  にっこりと笑てタカさんは足早に出て行った。


  「じゃぁ僕は馬車を探してくるからちょっと待ってて」


  ヘルトが出て行き俺たちはグラチェのところへ行くと、いまだ子どもに囲まれて背中に乗られシッポを握られるなどして遊ばれていた。

  アムは子供たちとグラチェに声をかけてグラチェを連れ出し、先ほど俺たちがいたテントの裏に連れて行く。


  「もしグラチェが魔女と闘うことになったら応援よろしく頼むぞ」


  「うん、力いっぱい応援するよー」


  「グラチェ、またね~」


  子どもたちは手を振りながら帰っていった。


  「タカさんたちの言うことをしっかり聞いて力をかしてやってくれ」


  天幕に入れたグラチェに挨拶を済ませ、もう一度本部テントに戻った。

  それから数分してヘルトが馬車に乗って戻って来たので、俺たちも馬車に乗ってワイフルという人の家に向かって出発する。


  馬車の中では自分たちの得意分野などについての講義がおこなわれ、俺はヘルトたっての願いということで奇跡の鎧について話をする。といってもどういった原理でといった根本的な部分は自分でも説明できないのだが。


  ヘルトは法術が苦手で五年くらい前までは守人の中では落ちこぼれだったと語った。


  「苦手な法術に四苦八苦していた僕にクレイバーさんは、『自分の弱味を無理に伸ばすより、他のことに労力を費やす方が合理的だ。君は体術を極めてみろ』って助言してくれた。それから僕はその言葉を胸に特別素質があるわけではない体術を必死で鍛え続けた。それから数年してクレイバーさんと再会したときに彼が僕たちに法具を作ってくれたんだ。こんな僕の力を一番発揮できる僕だけの法具を。落ちこぼれの僕がみんなの役に立てるのはクレイバーさんのおかげだよ」


  英雄ヘルトはアムと同じ努力の人だった。その努力を重ね続けることでクレイバーさんに認められて法具を得ることができた。


  でもそれはチャンス得たにすぎない。ヘルトはそのチャンスを自らの力で掴んだのだ。

  アムもクレイバーさんの法具を得たことで本物の聖闘女への道を登り始めたと言っていいだろう。クレイバーメイドの法具を得るというのはそういったことなのかもしれない。


  俺も彼の法具を授けられた者として恥ずかしくない闘士にならなければと思った。

  アムもヘルトに共感したのだろう。表情からそれを読み取れる。


  そんなお互いの話を延々としいていると、北門に近い三層に位置する住宅地に着いた。それからすぐに馬車はある家の前に止まった。

続きが気になる方、面白かったと思った方、大変恐縮ですがブックマーク・評価・感想など、どうぞよろしくお願いします。


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合わせてよろしくお願いします!

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