英雄の宿命<プロローグ>
そこは、大天使の威光によって護られている国。
数百年もの昔、魔獣の王とでも言うべき恐ろしい破壊の化身が現れた。
そこへ降臨した大天使シルンが、願いを叶える神具と魔獣をも屠る力を持つ少女をもたらし、強大な魔獣の脅威から人々を救ったという伝説がある。
その伝説が真実であると示す物が聖シルン教団の総本山、大聖法教会の大聖堂に祀られている。それが強い思いに感応して願いを叶えるという神具。大天使シルンから授けられた蒼天至光だ。
神具による心の支えと、王国騎士の戦力に勝るとも劣らない教団の闘女たちによって、大小さまざまな脅威を退けてイーステンド王国は繁栄してきた。その平和を崩したのは、王国の力を集結しても対処できない脅威の魔獣。神出鬼没のその魔獣により、国民は恐怖に脅える日々を送ることになる。
魔獣の名はエイザーグ。この国に伝わる破壊魔獣の名が冠された。そして、その魔獣に立ち向かうのは、同じく国に伝わる聖闘女リプティの生まれ変わりのアムサリア。
宿命付けられた闘いは、聖なる場所である大聖堂でおこなわれ、相討ちとなり決着した。
それから二十年。アムサリアがもたらしたこの国の平和に小さなほころびが生まれていた……。