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ガラス珠の少女  作者: Sin権現坂昇神
第一章 『ガラス珠の少女』
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7の噂 ~足音タッタッタ~

ガングロ女子は肌を黒く塗った独特なファッションガール。そんな彼女は崩れた化粧を素早く直していた。

が、そんな彼女の手鏡に映った顔は自分の顔ではなく・・・

「ん・・・・あれ?さっきの女子ってこのクラスに居たっけ・・」

 ガングロ女子は先ほど(くず)れた化粧(けしょう)を直すため、手鏡と化粧品(けしょうひん)を器用に使っていたのだが、自分の顔が映っているはずの手鏡から、ヌッと(きら)びやかな(かみ)をした大人の女性の顔が左上から突然(とつぜん)(あらわ)れたのだ。

「!・・・っていないし・・何よもう!」

そして一瞬(いっしゅん)にしていなくなり、ガングロ女子は幽霊(ゆうれい)でも見たかのように面食(めんく)らった。そしていよいよ苛立(いらだ)ちが頂点(ちょうてん)に達したガングロ女子は、バンッと(つくえ)を強く(たた)いて立ち上がた。そして【(あき)()先生(せんせい)】に「トイレに行ってきます!」と(いか)()じりに言うと、ズカズカと地面を鳴らして教室を早歩きで出ていった。張本人である【囗清水(いしみず)(あきら)】はというと・・・ずっと鸑門(がくと)少年(しょうねん)の席に(かく)れていたらしく、鸑門の顔を見て小さく言った。

《あれ(・・)も反射すること忘れてた・・ごめんなさい》

「・・・ああ!」

―どうした攣ヶ(つが)(やま)?先生に質問か?

「いえ!何でもありません!」

しょんぼりと謝る(あきら)を見た鸑門少年は、秋羽の言葉を上手く(かわ)して、(ようや)くガングロ女子が教室を出て行った原因が自分であることを思い出した。攣ヶ山鸑門という男は急いでいる時、どんな相手であっても自分の(かべ)になるなら、殺気を()()常軌(じょうき)(いっ)した行動でぶっ(こわ)してきた。だが今回のガングロ女子の場合、今までのぶっ壊してきた時よりも一線を(かく)していた。(さら)にはぶっ壊した時の記憶(きおく)は落ち着いた(ころ)に思い出すので、気づいた時には相手が更に怒り出すか、()しくは(おび)えて二度とこちらに近づいてこないかの二択であった。

鸑門少年は思い出した記憶を整理して、ガングロ女子の一連の行動を自分の記憶に当てはめていった。

(・・まさか・・・)

 晶は(うなづ)いて言った。

《・・パパの思ってるとおり》

(やっぱり・・)

 鸑門少年は暴走した自分を思い出す(たび)()()んだ人に謝ろうと近づいては、何度その相手に逃げられてきただろう。自分の押さえられないこの衝動(しょうどう)(おさ)えるために、今まで必死で克服(こくふく)しようとしたが、結局のところ成果はなかった。そして今回もまた・・・

《でも黒いの(ガングロ女子)もパパに(おこ)られる非は十分にあった。やり()ぎだったけど》

(うっ・・)

 晶の最後の一言に反応(はんのう)する鸑門少年に、晶もまた悲しげな顔で言った。

《でもそれとこれは別。原因は晶。教室を出て行ったのは晶のせいだから》

(いや、これは僕のせいだ・・・)

《ううん。待ってて、私が謝ってくる》

 晶は思い()めた顔でスッと立ち上がると、真っすぐガングロ女子が出て行った出口を見据(みす)えた。

(何を・・って!)

―タッ・・・タッタッター

(ちょっと待ったー!)

 晶はガングロ女子を追って教室を出て行った。晶を目で追いながら鸑門少年は心の中で(さけ)ぶが、晶の姿は(すで)に教室の外にあった。


―?

―どうした佐々(ささき)()。木が心配か?

―・・・さっき(だれ)かが通り()ぎたような・・音しなかった?

―ああ、そういえば・・・


 晶が教室を走り去った後、教室内の全生徒の耳に晶の足音が聞こえた。『丁度(ちょうど)()(なか)の席の方から後ろの出入り口の方まで幽霊(ゆうれい)の足音が聞こえた』という(うわさ)(まこと)しやかに流れるのだが、それはまた別のお話。


“晶が出した音は、鸑門以外の人間にも聞こえる。”


鸑門少年は新たに発見した晶の秘密を忘れないように、ノートの(すみ)に書き記した。

「・・・・・・」

その時鸑門少年をじっと見つめる人物が一人。(なな)め後ろの男子の席。足音の発生源が鸑門の席からだと(さき)んじて聞き取ったその生徒は、じっと(ほお)(づえ)を付いて鸑門を見つめているが鸑門少年はまだ気付かない。鸑門少年が今考えていることは・・

(もしあの女子生徒に晶のことがバレたらどうなるだろう・・)

晶とガングロ女子が出会った時に起こる最悪の事態(じたい)だった。石が人の形を()して動いている。これが夢ならと思って鸑門少年は(ほお)(つね)るが、(痛い・・これは現実なんだ)と理解した。僕はとんでもない石に出会ったのかもしれない。しかし鸑門の心の中には未知なる恐怖(きょうふ)と共に、ワクワクした好奇心(こうきしん)も少なからずまたそこにあった。

晶を今すぐにでも追いたい。けど・・

(国語の授業も(のが)せない。勉強が苦手は僕が一科目でもサボったら・・)

鸑門少年は自身の勉学の弱さを(いた)いほど知っている。今までテストで満点を取ったことがなければ、勉学で(うれ)しかった経験など一度もない。どっちを選ぶのかは明白であった。

(勉強だ!)

 黒板に向き直った鸑門は、晶を信じるという名目のもと、授業を再開するのだった。

ちょっと短めになりました。とりあえず鸑門は勉強が苦手、晶が出した音は他の人間にも聞こえるということが分かりました。囗清水(いしみず)(あきら)の由来は、『水晶』という言葉と習っていない常用漢字ではない漢字を入れようとした結果です。何か習っていない漢字を付けたい衝動に駆られる作者は、名付け親には向いていないでしょう・・・では次回。

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