3の噂 ~発見~
ツガヤマ少年は噂の真偽を確かめるために、ついに二年四組の教室の前に現れた。もしもあの光に映った輪郭が本物だったとしたら・・・・『友達になりたい』。少年はそう思った。
そして取っ手を握る手に力を込めて、戸を力強く引くのであった・・・
「ここが・・・二年四組・・・・」
午後四時過ぎ。鸑門少年は学校が終わるまで、人通りの少ない階段に溶け込んでいようかと思ったが、ここの階段を使う生徒も少なくない。鸑門少年は生徒が通る度、逐一階段を離れることで、他人との接触を上手に躱していた。全てが初めて、全てが知らない人間だらけのこの世界の中で、鸑門少年は完全に出遅れる形となってしまったのは言うまでもない。
そんなこんなでどうして一年生の僕が、二年四組の戸の前にいるかというと・・・
(もしかしたら・・あの人も僕みたいに一人ぼっちなのかもしれない・・・・)
僕だけがその光に写った人のような輪郭を見ていたようで、昼間に起こった『二年四組発光事件』の後、二年四組の教室に出向いた者は何人か現れたが、その入り口の戸を開けることに成功した者は零であった。その中で適当な理由を付けて、教師に鍵を貸してもらおうとした生徒もいた。だがその理由がどれも信憑性に欠けていたのか、一人として鍵を貸してもらうことが出来なかった。鍵を盗もうと試みる生徒には【橘燦子】と名乗る魅惑の保健の先生が全ての男子を魅了し、ある者は【中村剛】と名乗る見た目が金髪美男子の小学生女子が全ての女子を魅了し、結局のところ二年四組の鍵の奪取に成功した者も零となったわけである。
・・・そして僕は鍵を持たずに戸の前に立っている。本当に誰もこの戸を開けられなかったのか試してみたくなったからだ。そしてあわよくばこの教室の中にいる年上の友達を作って、クラスの皆に自慢しよう。そんな不純な考えでここに来ているのだ。僕の目的はあくまで、あの光の正体が人間であるという仮定から生まれたものであり、それが一度崩れれば、一目散に家に帰る算段であった。
「・・・開けるぞ」
誰に言っているわけでもないが、戸の金具を掴んだ手から一気に緊張が体全体へと伝わってくる。もし人間ではない何かであったら、自分はいったいどうなってしまうのか。心臓の鼓動がバクバクと動くのが分かる。
ゴクリ。喉を鳴らす音をチャイムに、僕は手に力を籠めると、意を決して戸を引いた。
―ガラ・・・・
「!」
開いた!?何で!??え?僕の頭は一瞬で真っ白になったが、それよりもいち早く中を見たかった。その中にある光の正体を・・・
「あ・・!」
自分の今いる場所から最も遠い窓際奥の席に、一瞬人間の姿を模ったような輪郭が映ったが、また見えなくなっていた。僕は目を擦って再度同じ場所を見たが、見えるのはずらりと並べられた新品の机と椅子の一式であった。
(・・・見間違いか)
はあ・・・僕は溜息を漏らしつつも、もし本当に人間だったのならば独りの世界に、突然僕が入ってきて迷惑だったのではないか、と思ったがそれも杞憂に終わった。だがこの教室の空気はどこか自分のクラスの教室よりも異質に感じた。・・・というかこの二年四組の空間で僕だけが唯一異質なのではないか。そんな異質である僕を二年四組の教室が必死に追い返そうとしているのではないか。自分の頭からどんどん悪い考えが生まれては消え、そしてまた生まれていく・・・自分の考えが生まれる度、本当にこの教室が自分を圧し潰そうとする感覚に陥った。僕は段々(だんだん)と息が苦しくなり、心臓の音が一際大きくなっていくのが分かる。
(苦しい・・・)
だが僕はそんな中、この教室に入った時から誰かの気配を感じていた。そう。さっき人の姿を模った席である。誰かが今も尚座っているような気配を感じているのだ。
(もしかしたら・・呼べばいいのか?)
僕は漸く二年四組の教室の中心くらいまで歩いたところで、これ以上歩くことは困難だと確信した。そして大きく息を吸うと、腹の底から一気に声を出した。
「誰かいますか!」
・・・・
何の返事もしなかった。
・・やっぱり誰もいない。自分の勘違い。取り越し苦労だった?そう考えていくうちに、僕は今ここにいることがとても恥ずかしくなった。早くここから出て今までのことを忘れよう。もうこの教室には絶対に来ない。誰もいない教室で一人勝手に緊張して、大声まで出してこの為体。次第に顔を真っ赤に染めた僕は、サッと踵を返そうとしたその時だった。
―待って!行かないで!
「!」
声の発生場所はやはりあの場所。奥の席。だがそこには人の気配はあっても、姿形が見えない。そしてその声は自分の脳から直接聞こえたような気がしたのだ。これはどういうことだろう?何が起こっているんだろう?もう僕の頭はパニック全開で意識を全て脳に持っていかれた。
(怖い・・・けど・・・)
けれど嫌でも気になってしまう。あの席に一体どんなものがあるのか。あの席に何が座っているのか。声はどこか女性のようなまるで水晶のような透きとおる声だった。もしも女の子だったらいいな・・・でももしお化けとか妖怪とかだったらどうしよう。恐怖と不安が僕の体をチクチク針で刺すように、されども友達になれそうな人だったら、女の子だったらと心の臓から高まる希望と期待が僕の選択を二分させる。
・・・
・・・・・・・
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「ええい!もうどうにでもなれやい!」
僕は目を瞑って、思いきりその席の机に触れた。もしかすればさっきの声の主が僕に話しかけてくれるかもしれない。そう思っての行動であった。
その時、机の上に油性マジックで書かれていたであろう『水晶』の、象形文字のような変な字体が突如虹色に光ったかと思えば、その光は机全体に達し高と思えば、僕の体を瞬く間に吸い込んでいった。
そこで僕の意識はプツンと糸が切れた。
私は仮面ライダーをクウガの頃からほとんど見ています。そして2016~17年にかけて放送された仮面ライダーのキャラに特段好きなキャラがいて、そのキャラのあるセリフ「君はまるで水晶のような~」の場面を見て一年後、私はこのガラス珠の少女を突発的のイメージが思い浮かんだのです。そして少女のキャラを月刊少年ガンガンの「ようかい~」の雪女の人を見てこんな風な女の子がいいな~と思い、今年の一月から、遂にガラス珠の少女を製作するに至りました。ガラス珠の少女制作秘話その一終了・・・。では次回・・