2の噂 ~不幸体質【髀皚雅-モモシロミヤビ-】~
ツガヤマ少年がいる上の階では・・中学二年の雅が【陰険女子三人組】に絡まれていた・・・
―ねえ!あなたって何か汚くない?
「え・・・?」
二年四組の教室の奥の窓ガラスが光りを放つ少し前。【攣ヶ(が)山鸑門】少年のいる一年生の階の上、二年生の階の廊下に女子生徒四人が屯していた。その四人の空間は負のオーラに満ち溢れ、他の生徒はその空間に寄り付かないように一定の距離を空けていた。髪がボサボサで靴下の紐が解れている女子生徒をとり囲む生徒が三人、金髪で雀斑の【廃田巫奈】、黒髪で寸胴のくちゃくちゃとガムを噛んでいる【是清穂御代】、マスクをつける褐色の肌に背の高い【風鈴寺景織花】。女子三人組の性格は、上から目線でよく他人を比べて下なら見下し、上なら媚び諂うという点が見事に一致し、三人で弱そうな人を虐めようという目的の元に結成された『陰険女子三人組』である。まさに今、弱そうな女子に目をつけて、三人組は真っ先に罵詈雑言を浴びせていたが、ボサ髪女子は割れかけの眼鏡をクィッと整えると、三人組の声を無視して通り過ぎるのだった。
「ムカっ!ちょっと待てって!」
渾身の罵詈雑言を無視されたデブ巫奈は、眉を顰めて怒りのままにボサ髪女子の襟首を掴むと、グイッと自分の方に引き寄せようとした。が、勢いつけ過ぎてボサ髪女子は仰向けの状態で転んでしまった。これをチャンスと穂御代は口が裂けるほどの笑みを浮かべこう言った。
「あらごめんねぇ~、私の友達が雑巾ブスに失礼なことしちゃって~」
「・・雑巾・・ブス?」
「あんたのことだよ!雑巾ブス!」
風鈴寺景織花は倒れた状態のボサ髪女子を二、三度蹴った。風鈴寺景織花の母は昔から不良に花咲かせていたらしく、偶然景織花がその昔の写真を目にして以来、一気に不良の道に走った。そんな母親がよくマスクをつけて写真に写っていたことから、景織花はいつもこの格好をして不良生活を楽しんでいる。
「いたた・・・きゃっ!」
激しく打ち付けたお尻を摩るボサ髪女子に、景織花はボサボサの髪を強引に掴むと、一気に上に自分の目線まで持ち上げた。そして悪い顔で何かを言おうとした瞬間・・・
―お・・おい見ろよ!
反対側の校舎から男子の声が、四人の女子の方にまで届いた。そして男子の会話を一部始終聞くと、陰険三人組はボサ髪女子を掴んだままひそひそと何かを話している。
「離してくださいよ!」
ボサ髪女子は三人が何かを話しているのを見て、必死に景織花の手から離れようとするが、三人組は全く聞いていない様子。そうしてボサ髪女子がもがいていく間に、ついに三人組の会話が終わろうとしていた。開口一番は巫奈であった。
「あ!・・・そうだ。いいこと思いついた」
「巫奈、あんたも悪いねえ~」
時点で景織花。
「景織花もおんなじこと考えたんじゃないの?」
そして穂御代である。
「離して・・!」
「おい、・・・名前は・・」
穂御代は女子を睨みつけドスの利いた声で言った。女子は何か嫌な予感がしたが、言わなければもっと嫌な事態になりそうなので、渋々(しぶしぶ)答えることにした。
「【髀皚雅】です・・・そんなことよ」
「隣の二年四組の教室に、教師になんか理由でもつけて入ってきな。そんでその中に何か入ってきたか明日教えろ。もし行かなかったらどうなるか。・・・分かってんでしょうねえ!」
景織花の母親譲りの凶器顔に雅は途端に抵抗心を失うと、「はい・・」と小声で答えるのだった。三対一ではどうしようもない。しかもその三人はどこかこういう悪いことに慣れているようだ。そして雅は運動よりも本を読むのが好きで、力も平均より著しく低い。結局三人組に従うしかないと諦めた雅は放課後、隣の校舎に行くことが決定したのだった。
陰険女子三人組のイメージは、まさにクレヨンしんちゃんのあの女子三人組みたいな感じです。雅は髪が尖っていて、眼鏡を付けたどこか物悲しい系女子です。デブ~穂美代-ホミヨ-・金髪~巫奈-ミコナ-・褐色~景織花-キョウカ-。そしてボサ髪~雅-ミヤビ-。こんな四人が一体どうなっていくのか・・・ツガヤマ少年は今?・・・・では次回。