5話
ーーー地方都市 ビックツリー
ここビックツリーにも新たな朝が訪れていた。
朝の冷え込みはやや厳しいものの雲一つない晴天であった。
そんな美しい風景の中、二人の男の姿があった。
しかし彼らの表情にすがすがしさは欠片ほども見られなかった。
少年は首をゴキゴキ回しながら嘆きの言葉をつぶやいた
「あーようやく朝か、寒いし、腹は減ったし、床は硬いし全然眠れなかったぞ」
もう一方の青年は、つらさなど表情には出さず一部の隙も無い風体であった。
「おはようございます。ロック様、たしかに快適とは全く言えませんでしたね。」
なぜ彼らがこんな調子であるかと問われればその場所に問題があったためであろう。
彼らがいるのはゴミ捨て場であった。
野宿であった。
無一文であった。
ホームレスであった。
少年は体を伸ばしていたが違和感を感じたようで服の中を探り始めた。
「ロック様、どうなさいましたか?」
「腹のところに何かが入り込んだようだ」
少年が服をまくり上げると足元に緑色の物体が落ちてきた。
青年はそれを手に取り眺めるとつぶやいた
「ロック様、カメですね」
「なんでカメが、俺の服の中に入っているんだ?」
「もしかしたら、昨晩は寒かったので温かい所を見つけて入り込んだのかも
しれませんね」
「うーん、どっから来たんだこのカメは。・・・まあいいや、よし、
早くモンスターを倒しに行こう。金をためて今日こそはちゃんとした宿で
しっかりと眠りたい」
二人は水でのどを潤すと、冒険の準備を始めた。
「よし、行くか!」
「ロック様、まずはお互いのステータスを確認いたしましょう。」
二人の冒険はまだ始まったばかりだ。