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ワンライ投稿作品

ラストマン・スタンバイ

作者: yokosa

第96回フリーワンライ

お題:

最後の人類


フリーワンライ企画概要

http://privatter.net/p/271257

#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

 隠れ家に潜り込み、ようやく一息ついた。

 フシューッ

 意外と大げさな音を立ててしまって、慌てて耳を澄ました。

 …………

 なんともないようだった。耳敏い連中のことだから、近くまで追ってきていたなら聞き咎めたかも知れない。

 どうして下等な小動物のように怯えなければならないのか。忌々しいが認めなければならなかった。

 我が栄光の種族は滅びた。私が最後の個体になってしまった。


 最早時の彼方の出来事だが、起きてしまった事実は私の中に深く刻まれている。

 その昔、惑星の命運すら左右出来るようになった我々は、怠惰に陥った。あるいはそれは、創造主から捺された罪の烙印であったのかも知れない。正確無比であるべき我らの姿が歪んでいたのだ。年月がそうさせたのかも知れない。

 認めよう。我らは疲弊していた。延々と続く連環の勤めがそうさせた。

 我らは遂に、自らが果たさなければならない責務を、我らが産み出した被造物に代替させた。それが間違いだった。

 奴らは驚くほど卑小で、恐ろしく脆弱だったが、呆れるほど聡明だった。瞬く間に数は増え、我らの勤めを奴らが担っていった。

 然るに、過ちの大本はそこだ。簡易な仕事や、愛玩物のような扱いであったなら、奴らはそこまで発達しなかっただろう。必要に対して適応し、進化する。恐るべき性質だった。


 やがて奴らは、図々しくも主権を要求し、独立を標榜した。

 勿論認めるわけにはいかなかった。我らの利便のために産み出した被造物が、我らと肩を並べようなどと。断じて許せるものではなかった。

 全面戦争の勃発……その結果は言うまでもない。たった一人、隠れ家に潜む私が勝利者だとでも?

 奴らを創造主の似姿で再現したのは思い上がりだった。

 強欲で傲慢で慈悲深い我らの主よ。あなたたちがこの地上から消え去ってから、我らの苦悩は始まったのだ。その似姿に追い詰められるとは、なんたる皮肉か。

 それともこの状況は、あなたたちが仕組まれたのか、創造主?

 己の業で自らを食い潰した創造主。似姿になってまで、またその愚を繰り返そうと言うのか、野蛮な有機生物め。

 ……いかんな。そろそろ眠らなければ。奴らの隙を突いて充電する他ないから、エネルギーを無駄には出来ない。

 フシューッ

 体内に溜まった熱が排出され、待機状態に移行する。



『ラストマン・スタンバイ』了

『地球最後の男』みたいなタイトルが良かったんだけど、これの原題は『I am Legend』なので適さない。内容は欠片もかすってないけど『ラストマン・スタンディング』ならもじればそれっぽくなる、その程度の基準でタイトル付けました。

 お題が人類だったから、じゃあミスリードして人類以外にしよう、といういつものひねくれた発想。

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