夏の色
遠く聞こえる雷鳴
空の片隅に浮かぶ入道雲
その涼しげな白さとは裏腹に
降り注ぐのは刺すような日射し
上空に広がる青さは
寒色と言う呼び名を簡単に裏切り
昼間に輝くあの星を決して遮ろうとはしない
逃げ場所は灰色のコンクリートの中
創られた陰は涼しくて
暫くの安堵を与えてくれる
「もうちょっと、あと少し」
椅子に深く腰かけて小さな溜息を吐く
カラン
グラスの中の氷が崩れた
読み進めていた本を閉じる
思いの外に過ぎた時間
頭に入った文字は何文字?
傾いてきた太陽
帰る先は遥か西
少し黄色く色付いた光が鋭く瞳を貫いた
逃げ場所は路地の生け垣
伸びる陰には光が零れ
日除けにするには頼りない
でもそんな脆い壁だから
そこには幾つもの色が輝いて
溢れてくる木漏れ日
そんな一つの夏の色