表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

言霊

作者: 都筑 花音



 僕はよく「シネ」という暴言を吐く。

友人に向かって言ったりだとか兄弟に向かって言ったりだとか。まあ様々だけれども。そのため「毒舌だな〜」とかってよく言われる。けど誰にたいしていう「シネ」にも主語はない。それはその言われる対象が目の前にいることが限定される。


 ある日、市内放送で85歳のおじいさんが行方不明であるという放送が流れた。母さんは笑いながら「うちのおじいちゃんが行方不明になっちゃったりして」なんて言った。僕は「母さん、言霊って知ってる?」と言った。そしたら母さんは「あんただってよくシネって言うじゃない。」と言われ僕は思わず笑ってしまった。

だって僕の発する言葉に主語はなくて

あなたの発する言葉には主語があるのだから。言葉にした時点でそれは言霊となる。

要するに主語のない僕の「シネ」という言葉は目の前にいるあなたではなく今まさに死のうとしてる誰かに向けられているかもしれない。そんな可能性はないのだろうか。

僕はそんなことすら母さんに説明するのが億劫だった。「頭の回転悪いなぁ」と独り言を呟いた。


 そして次の日。僕の87歳のおじいちゃんが行方不明になった。母さんはおどけた顔をして探しに出ようとしなかった。

僕はとてつもなく焦り

「母さんなんて死んでしまえ。」と言ってしまった。違う自分が言ったようにも思えた。その言葉を発した僕は嘲笑ってたのだから。

はっと気付いた時にはもう遅かった。「そうね」泣き笑いながら母さんはそう言った。

結局おじいちゃんは3日後に近所のおばさんに連れられ帰ってくることができた。



 その半年後

母さんは死んだ。交通事故だった。

外国人が運転してる車に轢かれたいした賠償金ももらえず、相手の罪も軽いものだった。




その日を境に僕は無口になった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ