【一日目⑤】役割と思惑
「おい霜触…少しいいか?」
早瀬を見送ったまま通路を見つめる霜触に六林が声をかける。
「少年呼びでも大丈夫ですよ」
「……まぁあれだ…皆がそう呼んでるんだ…別にいいだろ」
「クス…別にいいですよ」
「なに笑ってんだよ、あんまり時間ないから今のうちに共有しておきたい。 ここまでで何か分かったことはあるか?」
「……正直まだまだ情報が少なすぎて何ともって感じですが…」
「とりあえず今夜の話し合いをどう切り抜けるか、人狼二人の役割は同じなのか、追加されるゲームのルールは何なのか。 今日はこれだけに専念しないと早々に終わってしまいますからね」
「ふむ……そうだな、それに今日の話し合いを切り抜ければ、そこへの糸口は見つかりそうだ。 あとはそれぞれの役割と追加されるゲームか…」
「……多分ですけど、役割と生き残ってきた人達の能力、追加ゲーム、これらを把握し巧く組み合わせれば」
「……話し合いでは恐らく役割については話せないだろうが、どうにかそれを把握することと追加ゲームをしたやつからルールの穴があれば聞きたいところだな」
「……」
「どうしました?」
「あ、いや、さっきお前が言った生き残ってきた奴らの能力って何だ?」
「……全く確証はないんですけど… ここにいるのはゲームをクリアしてきた人達です。 何かしら得意なことや独特な思考があると思うんです」
「なるほど……その可能性までは考えてもいなかった。 ルールブックを見なくては何とも言えないが、個々に何らかの得意なものがあるなら聞いておければ…」
〈 はい、次は六林さんです。 お部屋へどうぞ 〉
「んじゃお先にな」
「はい、また夜に…」
六林の姿が見えなくなっても、霜触は自分の番を待つようにそこに立っている。
カタン…
近くにいた者にでさえ聴こえたか怪しい程の小さな音。
それに霜触は気付いたのか音がした方にある鏡へと近寄っていく。
鏡を眺めている霜触の背後から真中が話しかける。
「なぁ悠、さっきの六林さんとの話聴こえたんだけど……役に立つか分からないが一応教えておく。 俺には……」
それからしばらくの後、全員が部屋に入り終わった。
【 部屋001 / 本条 有子 】
(……前のゲームと似ている部屋。 とりあえず先にルールブックを読んでおかないと)
【あなたの役割 は ジンロウ です】
「……ジンロウって… どうしよう……。 あ、そうだ今回は殺さないのがルールなんだから…きっと私だけじゃ何ともならないけど、どうにかしてみんなと共有できれば」
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- 役割効果 -
①毎晩必ず誰か一人を殺さなければならない。
・話し合いが終わった後から23:59:59までに机の中に固定されている『2~11のボタン』を押し、殺害対象を指定しておくこと。
・2:00:00~4:00:00の間のみ、自室と指定した部屋の施錠が解除される。
(指定された部屋には1:50:00から睡眠ガスが噴出される)
・殺害方法は、机の中にあるナイフを使用、手での絞殺、枕を顔に押し付けての窒息など、自身が得意な方法で行ってください。
※ただし、指定部屋に誰もいない、指定部屋が開かない場合は殺害を行わなくてよい
②自身の役割が人狼であることを誰か一人にでも知られた場合、次の話し合いでの処刑指名を強制で自身が受けることになる。
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「ハァ……読むのも嫌になる。 何よ、自身の得意な方法って…あるわけないでしょ」
(私じゃなかった。 だったら、ええと……あった。 …死角はここのあたりで…大丈夫かな)
【 部屋002 / 露無 明 】
「……冷蔵庫とモニターは壁に埋め込みか。 机とベッドは固定。 ……昔と変わらんな。 ふぅ…とりあえず役割だけは分かっておかないとな」
【あなたの役割 は インフルエンサー です】
「インフルエンサーってなんだ……?」
(ワケわからん役割だな……まぁそれは後で読むとして……ここらへんに動かしておけば大丈夫だろう」
【 部屋003 / 霜触 悠 】
「微妙に違うところがあるけど前回とほとんど同じの造り……。 だいたい把握は出来たかな」
「……あとは役割。 名前から推測して簡単なのは狼少年なんだけど…」
【あなたの役割 は 賭博者 です】
「……ハァ賭けるものが大きすぎるんだけど……他にも色々あるのに何で……。 あっ…ヤバいやられた! 違和感の正体はこれか……何が第12回だよ」
〈…どう思う姉さん〉
〈たった一度しか言わなかったからね~ あの場で気付ける方がおかしいよー …それでもこのタイミングで気付ける彼はやっぱり凄いね〉
〈そうだね、それに彼以外も清掃人を覚えていて更に役割を推測して、全員が同じ行動をするなんて〉
〈……それには流石に驚いたよ…彼らがここまで成長しているなんて〉
〈楽しみだね、今夜の話し合いで誰がどう流れをつかむのか〉
〈そうだね……ガッカリはさせないで欲しいよ〉
【 部屋006 / 真中 景行 】
「ったく、役割なしって一体どうすればいいんだよ」
「悠か…せめて六林さんに相談できればいいんだけど……役割ないことをバレてはいけないってルールをどうするか…」
〈 …… 〉
部屋001 本条 有子【役割】ジンロウ
部屋002 露無 明 【役割】インフルエンサー
部屋003 霜触 悠 【役割】賭博者
部屋004 早瀬 愛 【役割】狼少年
部屋005 笹川 美織 【役割】探偵
部屋006 真中 景行 【役割】---
部屋007 鹿取 将吾 【役割】清掃人
部屋008 六林 一処【役割】小説家
部屋009 椎名 色葉 【役割】農家
部屋010 海老名郁 【役割】ジンロウ
部屋011 壬生 湊太 【役割】旅行者
話し合いの時刻を報せる音が館内に鳴り響く。
〈 今日は初日なので特別に放送もしてあげまーす。 さっ部屋の鍵は空いてますので大広間にお集まりくださーい 〉
多分これが今までのようなゲームだったら、態度や表情に様々な感情が出ていただろう。
けれど今回は異例な事が2つ……2回目の参加であり、誰も殺さないというルール。
今この場に集まった皆にとっては、確かに命はかかっているが、誰も犠牲にならない可能性を見出だせる余地が残っているからだろう。
〈 ではまず始めに、先程話した追加ゲームの発表をおこないまーす 〉
〈 追加ゲームは……ぁ 〉
「その前に一ついいか?」
これまで話すことがなかった男がスピーカーに向かい話し掛ける。
〈 ……なんでしょうかー? 〉
「ゲームの開始を明日からにしてくれないか? もちろん終わりの日数を一日増やしてもらっていいから」
〈 んー? ……理由を聞いても? 〉
「過去の話ならしてもいいんだよな?」
〈 まぁある程度ならー 〉
「聞いておかないとゲームに集中できないことがあってな」
〈 ……わかったよー、先に聞いておくけど誰に何を聞きたいんですかー? 〉
「霜触、お前が話していた…いや違うか。 運営が言っていたことは本当のことなのか?」
「おい!」
「真中、落ち着け」
「けど…!」
「オッチャンの言う通りにしておきなって。 どっちにしろもう空気が出来ちゃってる」
「……」
〈 なるほどなるほど~ 確かにあんな終わり方したら気になりますよねー…… 私にも落ち度があったので…霜触くん、全部話していいですよ 〉
「……」
〈 ……自分からは話難いなら私から… 〉
「いえ、自分から話します……あまり時間が取れないですし、あの日…事故に巻き込まれ目を覚ました後のことから話します……」




