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SPIRAL  作者: 志に異議アリ


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6/7

日本


最初に異変が起きたのは、都内ではなかった。

むしろ、地方の小さな町だった。


住民のひとりが、YouTuberのコウスケの動画をスマホのスピーカーで流しながら叫んだ。


「“青い波形”が暗い人は、選ばれなかったんだってよ!  早く避難させねぇと!」


“避難” と言いつつ、事実上は隔離だった。


最初は一軒の民家だけ。

しかし、周囲がざわついた。


「裏の奥さんちも怪しいわよね」

「いや、うちの班長はどうなんだ?なんか最近暗いし」


誰も確証はなかった。

ただ “誰かが言っていた”

その程度で、町内会が動いた。


日本では――

「組織」が一度動き出すと、止まらない。


市役所


住民から苦情が殺到する。

「隔離所を作れ」

「安全地帯を整備しろ」

「国の指示を仰げ」


役所は混乱しながら会議を重ねる。

しかしどの部署も、責任を押しつけあい、指示を出せない。


すると、住民側が先に “勝手に” 動き始めた。


自警団の誕生


「市が動かないなら俺らでやる!」


若者や元自衛隊員を名乗る者、

“正義感の強い” 主婦らが結束し、

SNSで呼びかけ、

自警団が町ごとに乱立した。


最初は “見回り” 程度だったのに、

3日後には “選ばれなかった人” のリストがSNS上で共有され始める。


誰が作ったかも分からないリストだ。

だが、日本人は “リスト” に弱い。


「公式っぽい」

「信頼できそう」

その雰囲気だけで、現実に影響が出た。


警察


警察も本来は強い。

だが――

同じ日に、全国200カ所以上で小規模暴動 が同時発生した。


警察無線はパンクし、

各署は「手が回らない」状態に陥る。


なぜこんなに同時多発したのか?


理由は単純だった。

人々が、ほぼ同時に “同じ動画” を見たからだ。


コウスケの動画は火種にすぎなかった。

その後、別のインフルエンサーや匿名掲示板の住民が語り始めた。


「俺の知り合いが政府関係者だけどさ……」

「病院が選別された人で溢れてるらしい」

「自衛隊が秘密裏に動いてる」


全部デマ。

だが、日本では“みんなが言ってる” が最強の真実になる。


警察は暴徒化した自警団に阻まれ、

道路は封鎖され、

誤った正義を掲げる人々が、

「守るために排除する」 という矛盾した行動を取り始めた。


都心


渋谷、名古屋、梅田。

大型ビジョンで流れるニュースに、

誰かが叫ぶ。


「見ろよ!あの青い波形!

 色が濁ってるだろ!?

 俺たち、選ばれなかったんだよ!」


周囲がザワつく。

空気が変わる。

日本人はその空気に敏感だ。


一人が走った。

つられて何人も走った。

理由などなかった。


“みんなが怖がっているから怖い”

“そんな気がするから、そうだ”


気づけば街中で「避難だ!」の声が上がり、

誰も避難すべき理由を知らないまま動き出す。


列ができ、

列が暴徒になり、

暴徒が “正義” を語り始める。


小さな火種が、

小さな勘違いが、

日本全土で一斉に燃え上がった。


誰も指示していないのに――

日本人だけが、ひとつの生き物のように動き始めた。


それは世界でもっとも恐ろしい、

自発的な全体主義の繰り返しの始まりだった。




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