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SPIRAL  作者: 志に異議アリ


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4/7

アメリカ



国防総省地下12階、統合作戦室。

壁一面のスクリーンに、青い波形が無数に並んで揺れている。


分析官ジャリルは深夜のコーヒーをすすりながら、

眉間に深いシワを寄せた。


「……この波形、自然じゃない。

でも攻撃でもない。

じゃあ何だよ、これは」


背後で、司令官のラドフォードが低く言った。


「ジャリル、アメリカ国民は“敵”を求めている。

わかるな?」


「でも、敵はいないんですよ。これは誤解で――」


「誤解でも構わん。

国民は“不安”を恐れて、

“不安を消してくれる敵”を望んでいるんだ。」


スクリーンには、世界中の都市のデモ映像。

銃を掲げる民兵。

ネットで爆発的に広がる陰謀論。


“青い波形は先制攻撃の合図だ”

“地球がアメリカを試している”


誰が言い始めたかもわからないデマが、

大統領府の会議室にまで届いていた。


ラドフォードは手元の端末を叩き、

あるデータをジャリルに示した。


「見ろ。

中国もロシアも、宇宙空間の軍事網を再配置している。

“地球からの警告”に対処するためらしい」


「誤解ですよ。あれは地球の意思であって、

人類同士の戦争とは――」


「ジャリル。

地球と対話するなんて非科学的な発想は、

この国では通用しない。」


ラドフォードの声は冷たい鉄のようだった。


「アメリカは“制圧できる敵”を必要とする。

不確かな波形より、

確実に撃ち落とせる軍事基地の方がわかりやすい。」


そう言って彼は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の再配備計画を表示した。


■極超音速ミサイル・ハイドラ

■レーザー迎撃網オデッセイ

■軌道上無人兵器システム“ヘヴンズ・ドア”


ジャリルは言葉を失った。


「……本気でやるつもりですか?」


「国民が望んでいるんだ。

“誰かが撃ってくれ”とな。」


ラドフォードは皮肉気に笑い、

天井を見上げた。


「地球の声?

神の啓示?

そんなものはどうでもいい。

我々が恐れているのは――

“アメリカが主導権を失うこと”だ。」


その瞬間、

スクリーンに警報が赤く点滅した。


【新たな青い波形の異常振幅を検知】

【全世界で磁場乱れを観測】

【一部の軍事衛星が姿勢制御不能】


オペレーターが叫ぶ。


「衛星5号、応答なし!

軌道がズレて……落ちます!」


ジャリルは息を呑んだ。


「これが……地球の本気の警告……?」


しかしラドフォードは違う反応だった。


「……よし。」


よし?


「“攻撃を受けた”と国民が判断する。

これで大義名分は揃った。」


彼はスイッチを押した。


【全軍事拠点に防衛レベル4を発令】

【外敵の可能性に備え、全長距離兵器をスタンバイ】


「敵が自然現象でも宇宙でも関係ない。

“敵だと信じれば”この国は動く。」


ラドフォードは静かに言った。


「アメリカは、自分の恐怖を撃ち落とすために……

世界最大の軍を持ったんだ。」


ジャリルは声を震わせた。


「これじゃ……

“敵がいない戦争”じゃなくて……

“敵をでっちあげる戦争”ですよ!」


「その通りだ。」


ラドフォードは淡々と答えた。


「そして我々は、勝つ。」


スクリーンに、

数十の基地で点灯する“READY”の文字。


世界最大の軍事力が、

架空の敵へ向けて、ゆっくりと動き始めた。


誰も止められない。

“誤解のまま始まる、アメリカの戦争”が

もうカウントダウンに入っていた。



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