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影が輝くとき

屋敷の中で、ハルトは静かに魔導コンソールの前で作業をしていた。

レイスたちとアークライト家の面々が興味深そうにその様子を見つめていた。


「今度は何を企んでいるの?」とエヴリンが尋ねる。

ハルトはいつもの皮肉めいた笑みを浮かべながら答えた。


「影には、光が必要だ。…たいまつの話じゃない。」


素早く空中にコードを記述し始める:


project("Umbra_Electrical_Core")

source: mana_flow + crystal_conductors

output: stable_current

goal: illumination for urban_area


魔力水晶と即席の銅線をつなぐ一連のルーンが現れ、空中に組み上げられていく。


テリアが目を見開いて近づいた。

「本当に…火を使わずに光を?」


ハルトは、地元の職人たちと作った金属の塔に水晶を接続した。

空気に振動音が広がる。


次の瞬間——

街の即席ランプが、白く穏やかな光で灯った。


煙も、油も、火もない。

ただ純粋な輝きが、夜の影を押しのけていく。


子供たちは歓声を上げながら、光の下を走り回った。

「夜なのに…お日さまがいるみたい!」



ジュリアン・アークライトは、興奮しながら帳簿に記録を書き込む。

「これは…経済が一変するぞ! 居酒屋が夜通し営業できる!」


ルシアンは既に物流の構想を描いていた。

「この塔を街道にも設置すれば、キャラバンが夜も安全に旅できる。」


エヴリンは涙ぐみながら微笑んだ。

「ハルト様…これで、人々は暗闇に怯えずに生きられる。」


ハルトはコンソールを閉じ、広場に集まった人々に向かって声を上げた。


「世界は、アンブラを恐れる。

影がすべてを喰らうと信じているからだ。

だが影は、光なくして存在しない。


今日、我らは自らの光を創った。

他の王国を真似るためではない。

我らがアンブラは、誰にも依存せず、独自の道を進むと示すために。」


群衆からは大きな拍手と歓声が湧き上がった。



その夜、アンブラの街は日没を越えても眠らなかった。

魔導の灯りが通りや広場、作業場を照らしていた。


バルコニーに立つテリアは、隣のセレーネにささやいた。


「わかる? あの人は私たちを救っただけじゃない。

新しい世界を——築いている。」


セレーネはドレスの端を握り、頬を赤らめながら答えた。


「ええ…その世界が完成するまで、私は彼のそばにいたい。」


塔の頂上で、ハルトは静かに街を見下ろしていた。


かつて恐れられた「影」の王国——

そのアンブラの影が、いまや光を放ち始めていた。

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