新しい自分の最初の日
朝の光がラディアント・カフェをやわらかく照らしていた。
食堂では、ユイとリカが階段を降りてくるレイカの姿を見て思わず動きを止めた。
かつては濃いダークカラーに染められていたレイカの髪は、今や自然な栗色へと戻され、肩までゆるく流れていた。
濃すぎたメイクも消え、ほんの少しのリップと肌の自然な輝きが、彼女本来の顔立ちを引き立てていた。
その表情も、かつての刺々しい路上の少女ではなかった。
疲れは残っていたが、その中に静かな穏やかさがあった。
リリィが用意したシンプルな制服を着ていた。
膝丈の黒いスカート、ふんわりとした袖の白いブラウス、首元には赤いリボン。エプロンが彼女の姿を柔らかく引き締めていた。
リカがにっこりと笑った。
—「わあ…まるで別人みたい。」
ユイは腕を組み、にやりと笑う。
—「でも、悪くないよ。」
レイカは少し照れくさそうに肩をすくめた。
—「なんか…メイクしてないと落ち着かない。」
カウンターの奥からリリィが優しい声で言った。
—「落ち着かなくていいの。今のあなたが一番自然よ。」
やがて客たちが次々と入ってきた。
レイカは深呼吸し、トレイを手に取った。
歩く姿はまだぎこちなく、まるでカフェに入るというより、リングに立つような構えだった。
—「い…いらっしゃいませ。」
真面目すぎるその口調に、客は思わず身をすくめた。
リカが笑いをこらえつつ耳元で囁く。
—「もうちょっと笑って、脅さないで。」
レイカは眉をひそめた。
—「やってるつもりなんだけど…！」
二人目の客が手を挙げた。
—「カフェラテください。」
—「…はいっ！」
と、レイカが勢いよく返事した瞬間、手に持っていたグラスがぐらついた。
ミハルがすぐに手を伸ばしてフォローする。
—「落ち着いて。これはバトルじゃないから。」
昼頃、レイカは椅子につまずき、テーブルにお茶をこぼしてしまった。
—「す、すみませんっ！！」
と、過剰に頭を下げる。
リリィがすぐに現れ、静かにテーブルクロスを替え、新しいお茶をそっと差し出す。
—「こちら、サービスです。」
客の緊張もほぐれ、空気が柔らかくなった。
レイカは唇を噛み、目線を落とした。
—「私…本当にこういうの下手だな…」
そんなとき、近くの席にいたミツキが絵を掲げて元気に言った。
—「おねえちゃん、がんばってるよ！それってすごいこと！」
その言葉に、レイカの口元に少しだけ笑みが浮かんだ。
一日の終わり
営業終了後、全員がテーブルに集まり、お茶と手作りのお菓子を囲んでいた。
ユイがレイカの肩をポンと軽く叩く。
—「初日にしては、悪くなかったよ。」
リカも微笑む。
—「今日がぎこちなくても、明日はもっと良くなる。」
ミハルは優しくスープをよそいながら言った。
—「ここでは、完璧じゃなくていいの。あなたがここにいることが大事。」
レイカは一口すすると、口の中に広がる温かくやさしい味に、思わず目を閉じてため息をついた。
—「…こんなにおいしいって思ったの、久しぶり。
…こんなに落ち着いた気持ちになったのも。」
リリィは静かに彼女を見守っていた。
レイカは湯気の立つお茶をそっと持ち上げた。
—「…ここにいさせてくれて、ありがとう。」
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