厳しい真実(きびしいしんじつ)
刃が振り下ろされた。
くぐもった叫び。
そして——静寂だけが残った。
貴族の若者、その両親…
三人の身体は大理石の床に倒れ、血が赤い根のように広がっていった。
テリアは息を切らしながら剣を握りしめていた。
顔は涙で濡れていたが、その目はこれまで見せたことのない炎を灯していた。
ルナは一歩後退し、剣を震える手で握りながらかすれた声で言った。
——テリア…何をしたの…?
その瞳には恐怖と痛みが宿っていた。
彼女にとって、今の行為は越えてはならない一線だった。
ハルトはポケットに手を入れたまま静かに歩いて近づき、まるで台本通りのようにルナにささやいた。
——彼女が選んだ。
そして、それは正しい選択だ。
ルナは怒りと混乱の目で睨んだ。
——正しい? これは…虐殺よ!
ハルトは瞬きもせずその視線を受け止めた。
——迷っている間に、この世界はチャンスをくれると思うか?
正義が自然と訪れると思うのか?
彼はまだ温もりの残る遺体を指差した。
——違う。あれは鎖だった。テリアはそれを断ち切った。
テリアは剣を下ろし、唇を震わせながらも、声はしっかりとしていた。
——ルナ…あなたは知らない。
ゴミの中から食べ物を探すことの絶望を。
明日、水が飲めるかもわからない夜を。
道端で仲間が死んでいくのを黙って見てるしかない苦しみを。
ルナの表情が硬くなった。
テリアは剣を握りしめた。
——彼らは一度たりとも助けてくれなかった。
私たちに目を向けることもなかった。
それなのに、私たちの人生を支配しようとした。
彼女は涙を流しながら、炎のような声で叫んだ。
——それが罪だって言うなら、私はその罪を背負う。
でもこれは…必要な罪なのよ。
ルナは答えなかった。
その手から剣が静かに滑り落ちる。
テリアの言葉は、流された血よりも強く彼女の心を貫いていた。
ハルトはその沈黙を見て、わずかに微笑んだ。
——そうだ。
祈りだけでは、影は消えない。
空気が張り詰める。
リカはニヤリと笑い、
マリはデータを記録し続け、
レイナは小声で祈り、
アイコは涙を浮かべながらテリアを抱きしめ、
ミネットは無表情で刃を拭いた。
テリアは血塗れの剣を持ち、ハルトの方を向いた。
——後悔なんて、ない。
私がやらなければ、あいつらはまた同じことを繰り返すだけだった。
ハルトは満足そうにうなずいた。
——それが、この世界の第一法則だ。
生き残るには…手を汚さなければならない。
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