再会の微笑み、深緑の迷宮で
風が壊れた柱の間を吹き抜けるささやきだけが、静寂を破っていた。
廃墟は苔に覆われ、石には古代の紋様が刻まれており、空気には湿気と謎めいた香りが漂っていた。
ハルトは周囲を注意深く観察しながら、グループを先導していた。
「この紋様…ただの装飾じゃないわ」マリがつぶやいた。「何かで反応するの。」
「ここに本当に魔物はいないの?」とレイナが少し不安げに尋ねた。
「今のところは記録なしだが…油断するな」とハルトが答えた。
廊下の角を曲がると、ツタに覆われた広いホールに出た。
そのとき、かすかなきしむ音が響いた。
誰かがうっかり感圧板を踏んだのだ。
「動かないで!」
柱の間に、はっきりとした、女性の、どこか聞き覚えのある声が響いた。
皆が顔を上げた。
影の中から一人の少女が現れた。遺跡の淡い魔法の光に照らされていた。
彼女は少し擦り切れたが、まだ立派な制服を着ていた。
青緑色の髪を横に編み込み、落ち着いた瞳にはわずかな隈があった。
「…その声って?」マリがささやいた。
少女は数歩前に出て、目の前の顔ぶれを見て立ち止まった。
唇が震える。
そして、何日ぶりかに、その肩が少し落ちた。
「レイナ…マリ…アイコ…?」
「ミネット!?」レイナが叫び、駆け寄った。「ミネット・クローデル!」
「生きてたのね…」マリが目を見開いてつぶやいた。
「先輩!」とアイコが涙ながらに叫んだ。
ミネットは驚きと安堵の入り混じった表情で微笑んだ。
「まさか…ここでみんなに会えるなんて…生きててよかった。」
「大丈夫か?こんな場所で一人でどうやって生き延びた?」とハルトが真っ直ぐな口調で尋ねたが、攻撃的ではなかった。
ミネットは少し恥ずかしそうに瞬きをした。
「正直に言うと…運が良かっただけかも。
化け物から逃げてるうちに、この場所を見つけて。
一部のエリアはマナに反応しないって気づいたから…そこを拠点にしたの。」
「ずっと一人だったの?」とルナが小さな声で尋ねた。
ミネットはうなずいた。
「うん…まあ、完全に一人ってわけじゃ…ないかも。」
彼女は目を伏せ、そっと手元の小さな袋を握りしめた。
誰も気づかなかった。…ハルトを除いて。
✦ 後に、即席のキャンプにて
夜が訪れた。
一行は崩れた壁と絡み合う根の間に、身を寄せるようにして宿を構えた。
ミネットは焚き火の準備を手伝うと申し出た。
アイコとマリは彼女のそばを離れようとしなかった。
レイナは、敬意と心配が入り混じった目で彼女を見つめていた。
ハルトは黙って立ち上がり、水を飲みに行った。
そして、キャンプの一番暗い隅を通りかかったとき、それを聞いた。
その声は低く、ほとんど囁きだった。
「…今日は、いい日だったね。
みんなに会えて…嬉しいよ。
でも誰にも言わないでね、サー・シエル。」
ハルトの足が止まった。
「今ここで泣いたら、弱く見えるよね。
もう、あの頃のミネットじゃないんだ。私は強くなったんだよね?」
静寂が流れる。
焚き火のパチパチという音だけが響く。
ハルトは音もなく向きを変え、その場を立ち去った。
彼は何も言わなかった。
だが、その光景は深く彼の記憶に刻まれた。
誇り高き少女が、そっと、小さな青い騎士のぬいぐるみに語りかける姿を。
「…ミネット…」マリが寝床を整えながらつぶやいた。「私たちと一緒に…これからもいるの?」
ミネットは崩れた聖堂の天井を見上げた。
小さな風が彼女の髪を揺らした。
「もし…迷惑じゃなければ…
もう少し、ここにいさせてほしい。」
誰も、それに反対する者はいなかった。