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私の力、私の道──少女たちの覚醒

三日目の旅路。

道はもう違っていた。


弱かった身体は耐えられるようになり、

途切れなかった愚痴は消え、

代わりに深い呼吸と集中の沈黙が満ちていた。


そしてその中心に――

変化があった。




「よし」ハルトが言った。

少女たちは彼を囲むように半円で座る。


「今日はもう一歩進む」


彼がコンソールを起動すると、透き通るパネルが少女たちの前に浮かんだ。

編集はできない、ただの表示用。

だが確かに「システム」への接続だった。


「自分のエネルギー、適性、そして一つだけ能力を形にできる。

これは贈り物じゃない。結果だ」


真理マリ・サエグサが最初に声を上げた。


「私の適性は……論理。

魔力属性は……風」


「論理、か」ハルトが眉を上げる。


マリが手を伸ばす。

正確無比なルーンが空間に浮かんだ。


「作ったのは――《コードロック》。

相手の動きを三秒間だけ封じられる」


「戦術制御ね」ルナがうなずく。「磨けば大きな武器になる」


マリは数日ぶりに小さく笑った。


藍子アイコ・ユミネは震えながらパネルを見つめた。


「……魔力量は少ない。

でも、水属性と……感情、だって」


「感情?」レイナが首を傾げる。


「怖い時とか……誰かを守りたい時に増幅できるみたい」


ハルトは黙って見守る。

アイコが生み出したのは小さな水泡。

だが数秒後、それは爆ぜて感情の波動を放った。


《ウェーブパルス》。


「直接攻撃じゃないが、攪乱には最適だ」ハルトが評価する。「十分な基盤だ」


レイナ・フォン・アークライトは腕を組んだ。


「私は炎属性。

魔力量も高い。貴族だから当然ね」


ハルトは無言。

レイナが手を掲げると、現れたのは火球でも矢でもなく――


炎の花。

ゆっくり回転する、優雅な火の花弁。


「何、それ?」


「《エレガンスフレイム》。

花弁の一枚に触れれば、周囲ごと焼き尽くすわ。

飾りのように見えて……致命的」


「ゴブリン相手にはオーバーすぎるな」リカが笑った。


最後は リカ・カンザキ。


彼女は何も起動しなかった。

ただ立ち、目を閉じる。


――赤い影が立ち上がる。

自分の輪郭をなぞる、もう一人の自分。


「これは作ったものじゃない。

勝手に現れた」


《インスティンクトシャドウ》。

反射だけで動きを模倣する能力。


「……野性的だな」ルナが驚く。


「まだ制御できない」リカは口元を歪める。

「けど分かる。

これは……私のものだ」



ハルトは全員を見渡した。

もう怯えた子供ではない。

生存候補――戦う者たちの顔だった。


「これからお前たちには役割がある」


彼は地図を広げる。


「マリ:戦術制御。

アイコ:攪乱支援。

レイナ:火力支援。

リカ:精密攻撃。


ルナと俺が残りをカバーする」


ルナが短く答える。

「ようやく、か」


「お前たちは――もう荷物じゃない」


その夜。

焚き火のそばで、少女たちは言葉を交わさなかった。


ただ自分の手、自分のパネル、

そして胸の奥で燃える小さな灯を見つめていた。


初めて、

「無力」だとは思わなかった。

「与えられた力」ではなく、「手にした力」。

少女たちの役割が、今、始まる。

チームとして、やっと動き出した──

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