輝く王国
リサンドラ女王は、まだ先ほど見た「電気の灯り」が脳裏に残る中、ハルトと共にアンブラの街を歩いていた。
しかし、その後に見た光景は、さらに彼女を驚かせた。
広場の一角では、木製のベンチに座る子供たちが、魔法で浮かぶ黒板に囲まれ、読み書きや算数を学んでいた。
通りかかった農婦がハルトを見て笑顔を向けた。
「ハルト様のおかげで、うちの子が勉強できるようになりました。
以前は、貴族だけの特権でしたから…。」
リサンドラは唇を引き結び、その言葉に衝撃を受けた。
一人の教師が近づき、誇らしげに説明した。
「ここでは、すべての子供に教育を受ける権利があります。
読み書き、数字、歴史、そして簡単な魔法の基礎も教えています。
貴族の子でも、農民の子でも関係ありません。」
リサンドラの目が大きく見開かれる。
「すべての子供に教育を…? それは……考えられないことです。
アステリオンでは、家庭教師を雇えるのは有力な家系だけでした。」
そのとき、ハルトが穏やかだが揺るぎない口調で口を開いた。
「エリートしか教育を受けられない国は、同じ過ちを何度でも繰り返す。
アンブラは違う。
どんな生まれであれ、子供たちが成長できる場所にしていく。」
街を進みながら、リサンドラは人々の様子を見つめた。
質素な服を着ている農民たちの笑顔、誇らしげに作業する職人たち、
光に照らされた道を走る子供たち、
水を運ぶ年寄りを助ける兵士の姿。
それは、偽りのない幸福だった。
陰謀渦巻く自国の宮廷に慣れた彼女は、ぽつりとつぶやく。
「……これは違う。
恐れや鎖の支配じゃない……息づいている。」
彼女はハルトの方へ顔を向けた。
その目には、驚嘆と不安が混ざった光が宿っていた。
「あなた、自分のしていることが分かってるの?
他の国々がこれを見れば……あなたのアンブラは、すべてをかき消す"光"になるわ。」
ハルトは正面からその目を見つめ、静かに答えた。
「それが目的だ。
俺は、この世界に歯車の一部として来たわけじゃない。
偽りの栄光を繰り返す地獄に加担するつもりもない。
アンブラは輝く。
その光に恐れる者たちは、選ぶことになるだろう。
—従うか。
—それとも、焼かれるか。」
リサンドラは言葉を失った。
だがその胸の奥では、すでに決断の火花が散っていた。
この男と…共に進むべきか。
あるいは――その光が手に負えなくなる前に、止めるべきか。
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