匿名の手紙
大陸の反対側に位置する喧騒の街。
その片隅で、〈霧狩りのギルド〉の一日が静かに終わろうとしていた。
油ランプの煙が満ちた酒場のようなホールでは、冒険者たちが酒を酌み交わし、笑い声が飛び交っていた。
その時——
軋む音とともに扉が開き、
フードを深く被った使者が一通の封書をカウンターに置いた。
「最も優れた者たちへ。」
そう一言だけ残し、彼は姿を消した。
ギルドマスター、ダレン・ホルトはその封筒を手に取った。
白髪混じりの厳しい顔が、封蝋を確認する。
紋章はなかった。だが、螺旋を描く奇妙なシンボルが刻まれていた。
彼が封を切った瞬間、場の喧騒が止んだ。
中にあったのは、冷たく整った筆跡で書かれた書簡だった。
「ギルドの中でも、最も有能なる者たちへ。
ウンブラという地に、新たな支配者が現れた。名はハルト。
腐敗した貴族を葬り、支配の構造を変え、その民からは救世主とまで呼ばれている。
君たちの任務は一つ。——そこへ行き、己の目で確かめよ。
生き延びれば、富があるかもしれない。
あるいは、世界が隠そうとする真実に触れることになるだろう。」
署名はなかった。
静かなざわめきがホールを包んだ。
「……ウンブラ?」
若き弓使い、リラが眉をひそめる。
「聞いたことがある。貴族一家が、まるごと一夜で処刑されたってな。」
百戦錬磨の剣士、ヴェリックが低くつぶやく。
「噂ってだけじゃ済まない気がするな。
誰かが報酬出してるってことは、何かあるってことだ。」
赤髪の魔導士、サエルが興味を示す。
マスターのダレンは、じっとその書簡を見つめた。
「……罠の匂いがする。だが、同時に“機会”の匂いもな。」
こうして選ばれたのは、ギルドの中でも異質な精鋭たちだった。
リラ・アーチャー:射撃の正確さと、人を信じない慎重さ。
ヴェリック・ソードマン:数えきれぬ戦場をくぐった歴戦の剣士。
サエル・メイジ:知識欲と野心に満ちた若き魔導士。
ニラ・ローグ:言葉少なく、目は刃のように鋭い盗賊。
マスターは手紙を静かに閉じ、つぶやく。
「行け。……もしそのハルトという男が、本当に国を治めているなら、
世界は——俺たちの想像よりも、ずっと早く変わりつつある。」
その夜、雨の降る街を、四つの影がひっそりと抜け出した。
手がかりは、ただ一通の匿名の手紙のみ。
彼らが出会うのは、味方か。
それとも、想像を超える“敵”か——まだ、誰にも分からなかった。
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