最初の試練
訓練用の中庭は静まり返っていた。
ハルトはカオリを見つめながら、周囲を囲むレイスたちの様子を観察した。
それぞれの表情はまったく異なっていた。
レイナは腕を組んで真剣な面持ち。
リカは何か面白いショーでも始まるかのように笑っている。
マリは魔力コアを調整し、すべてを記録する準備を整えていた。
アイコは「これは化学的災害になるわね」とつぶやいている。
ミネットはぬいぐるみのサー・シエルを抱きしめながら興味津々。
セレネはやや不安げながらも、目を離さず見守っていた。
ハルトははっきりとした口調で言った。
「盲目的な信仰はいらない。欲しいのは行動だ。」
「俺のいた元の世界では、何年も報われずに働き続けた。
意味のない法律に縛られ、人々は搾取されていた。
ここで同じことは繰り返さない。」
「カオリ、お前がここに残りたいのなら、
ただの信者じゃないってことを証明しろ。」
その時、数人の兵士が鎖に繋がれた囚人を連れてきた。
数日前に捕らえたスパイだった。
簡単な相手ではない。薬物で怒りを抑えられているが、
その身体能力は常人をはるかに超えていた。
ハルトは命じた。
「試練は単純だ。勝てとは言わない。
だが、五分間生き延びろ。」
「円の外には出るな。」
地面にはハルト自身が刻んだ魔法コードが光っていた。
# Trial System: Kaori_Verification_Entry
if Kaori.resist(time >= 300 seconds) and Kaori.not_escape:
result = "accepted"
else:
result = "rejected"
カオリはごくりと唾を飲んだ。
「な、なにそれ? 五分も? あいつ筋肉モリモリじゃん!」
レイナが眉をひそめた。
「無理なら今すぐやめなさい。」
だがカオリは歯を食いしばり、髪が目にかかるのも構わず叫んだ。
「やります! 骨が砕けても、絶対にあきらめません!」
スパイが咆哮し、猛然と突進してきた。
カオリは地面を転がってかろうじて回避した。
「うわーっ、始まったーっ!助けてーっ……じゃなくて、意志の力っ、意志の力っ!」
敵の拳が彼女を吹き飛ばし、砂地に叩きつけた。
咳き込みながらも、彼女は再び立ち上がる。
「倒れない……!これは私が選んだ道なんだから!」
とっさの機転で、濡れた土を掴んで敵の目に投げつけ、数秒の時間を稼ぐ。
その隙に敵の足元を転がってすり抜ける。
円の周囲ではカウントが響いていた:
120秒……180秒……
敵の手がカオリの首をつかんだ。
涙で滲む目を見開き、彼女は叫ぶ。
「私は尊敬のために来たんじゃない!
自分の力で戦えるって証明するために来たんだ!」
最後の力を振り絞り、敵の腕に噛みついて抜け出し、
魔法の円の端に敵を押し返す。
その瞬間——
カウントは300秒を示した。
兵士たちがスパイを取り押さえる。
カオリはその場に膝をつき、肩で息をしながら、
傷だらけの顔に不器用だが誇らしげな笑みを浮かべた。
ハルトは立ち上がり、彼女に厳しい眼差しを向けて言った。
「お前には力も技術もない。
だが、最も重要なものがある。
自分の意志でここに立ったことだ。」
「ようこそ、ウンブラへ。」
カオリは両腕を高く掲げ、まるでスポーツの決勝に勝ったかのように叫んだ。
「やったーっ!やり遂げたーっ!
これで私、史上最強にクールな部隊の一員だーっ!」
レイスたちの反応は様々だった。
リカは面白そうに拍手をし、
レイナはまだ警戒を解かない。
ミネットは優しく微笑んでいた。
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