狂奏の始まり──四人の令嬢、そして黒き異端
朝日が差し込む小道の先、ハルトとルナは村を振り返った。
「……じゃあ、行こうか」
「うん。私は……あなたの隣にいたいから」
その言葉には、もう命令も制約もなかった。
それが、何よりも──嬉しかった。
村の門には人々が集まり、彼らを見送っていた。
「ハルト、ありがとうな!」
「また戻ってこいよー!」
パン屋、鍛冶屋、ルナの両親──
皆が笑顔で、手を振っていた。
そしてハルトとルナは、旅路へと足を踏み出した。
数日後、緩やかな丘を越えた先。
白い霧が漂う林を抜けると──
「……なに、あれ……?」
ルナが指差した先には、
──横転した豪華な馬車と、4人の少女たちの混乱が広がっていた。
「誰か! 誰でもいいから助けなさいよ!!」
金髪ツインテールの令嬢が絶叫していた。
その隣では、黒髪の少女が草を踏まないように慎重に歩きながら嘆く。
「泥が、靴の縫い目に……最悪……」
一方、機械のように冷静な少女が魔導端末を操作していた。
「GPSエラー、魔力回路破損、通信全滅。マジかよ、ここ」
そして──一人だけ、木に背を預けていた少女。
短い髪、赤黒いジャケット。
手には折れかけた剣を持ち、口元には薄く笑み。
「お嬢様ごっこ、飽きたら呼んで」
(……こいつら、全員、ヤバい)
ハルトは無意識に眉をひそめた。
「大丈夫か?」
声をかけると、4人全員がこちらを見た。
「アンタ、村人じゃないわね?」
「旅人? 野蛮な……」
「服、汚れてない。適応してる……」
「へぇ……面白い顔してるじゃん」
会話が交差する中、ルナがハルトの腕を引いた。
「彼女たち……何か変」
「同じにおいがする。たぶん──“あの世界”の人間だ」
(……ってことは、これからもっと増える可能性も……)
ハルトは微かに溜息をついた。
4人の自己紹介が始まる。
Reina von Arclight:「私はレイナ。アークライト家の次女。下賤な環境には慣れていないの」
Mari Saegusa:「マリ。頭脳と端末があれば生きていけると思ってた。間違いだった」
Aiko Yumine:「あ、あいこ……あの、虫……きらい……」
Rika Kanzaki:「……リカ。元・財閥令嬢、現・自由主義者」
その最後の一言に、ルナの眉がぴくりと動いた。
そして──ハルトが言った。
「この世界じゃ、金も肩書も役に立たない」
「……何それ、詐欺じゃん」
レイナが叫ぶ。
「ふふ……面白くなってきた」
リカがにやりと笑う。
「なるほど。つまり適応力の勝負ってわけね」
マリが頷く。
「えええええ!? こ、こわい世界だよぉ……」
アイコが半泣きになる。
ルナがぽつりと呟く。
「これは……面倒になるわね」
こうして、異世界に放り込まれた4人の令嬢たちと、
冷静なプログラマー・ハルト。
そして彼を支える、かつて“書き換えられた少女”ルナ。
それぞれの矛盾と本性が、新たな冒険の火種となる。
彼女たちの狂奏が、ここから始まる──
異世界の空の下で出会った4人の少女たち。
彼女たちは生き残れるのか? ハルトの選択は──
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