表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の案内人  作者: 餅月 響子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/50

第45話 司録と司命のそれぞれの思惑

 閻魔大王の玉座の間には今日もたくさんの罪人たちであふれていた。あちこちで暴れる罪人を制御する小鬼たち。列を乱さぬようにおさえるのも至難の業だ。


「しっかり歩け! 列を乱すな」


 ひょろ長い体格の赤い小鬼が棍棒を持って指示を出す。年齢問わずに並ぶ老若男女の罪人たちは小鬼たちを恐れて、言う通りに動き出す。朱色の大きな柱の端の方で、罪状を記す巻物をくるくると整頓する司録の姿があった。下界では鴇 甚録(とき じんろく)という名前で警察になりすまし、地獄谷正真の見張り役として立ち振る舞っていたが、やっと地獄の本来の仕事に戻ってきていた。やっと落ち着けると安堵していたところだった。すると、後ろから司命が歯ぎしりをしながら近づいてくる。


「ほぉ……久しぶりの罪状整理はいかがかな? 下界の方が楽しかったのではないのか?」

「……別に。楽しいも何もやらなければならないことをしたまでですね」


 閻魔大王の座を狙う司命の企みに気づいていた司録はペラペラと本当のことを言えなかった。いつも隣で仕事をこなし、公私混同することもしばしばあったが、さすがの司録も疑いがぬぐい切れずに警戒する。


「私もしばらく、下界に行っていないからぁ。いつかの煙草が懐かしいものだ。ここでは水蒸気のようなもので吸った気にもなれないね」

「……煙草を吸うために下界に行きたいのですか?」

「一理あるってところだ。別に絶対ではないさ」

 

 司録は、たくさんの巻物を整えて丁寧に片づけると司命の横に移動した。


「余計なことを考えている暇はありませんよ。ここでの仕事は終わりはありませんからね」


 司命に釘をさすように司録は恐ろしい目つきで睨んだ。これ以上悪さをすることは許さないと言わんばかりだ。


「な、何様のつもりだ。そんなの、当たり前のことだろ?」

「……いえ、気づいていないのかと思いましたから」

「ふん……それはそうと、お前、最近罪人として来た茄子川 岳晃(なすかわ たかあき)と下界で接触したらしいじゃないか。禁忌を犯して大丈夫なのか? ん?」

「揚げ足を取るように情報を仕入れるのが早いですね、あなたは」

「あー、まぁ。私には仲間がいるからな。優秀な仲間が。雑魚だと思わずに小鬼とも親しくしておけば、立ち回るのもうまくなるものよ。なぁ、鬼童丸きどうまる?」

「御意!」


 膝を地面に右腕を胸に平行に出す鬼童丸は、司命の言いなりだ。司録は心の中では煮え切らない思いが溢れていたが、ぐっとこらえて我慢した。


「えー、いいじゃないですか? 小鬼さんたちと《《お友達ごっこ》》も。上下関係を無視して行動も悪くないと思います。私にはできませんから」

「……ふん……」

「司命様! 私は友達と思ったことは一度もありませぬ!」

「静かにしろ。まともに受け取るんじゃない。茶化されてることに気づかぬか」

「ハッ、失礼いたしました」


 冷や汗が止まらない司命は動揺を隠せない。過去の記憶が蘇り、さらに司命は言葉を返す。


「そ、それはそうと、地獄谷 正真を阿鼻地獄から這い上がらせたのはお前なんじゃないか?」


 司命の言葉に司録は、眉をきゅっと動かして言葉が出なかった。次の言葉を発しようとしたとき、地獄谷 正真が二人に近づいてくる。


「あのさー、俺の出番ってまだ? どうすりゃいいの?」


 誰に言ったのかわからない角度で司命と司録の顔を交互に見る。誰の指示を待っているのか。空気は硬直して張り詰めていた。しばらく沈黙が訪れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ