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地獄の案内人  作者: 餅月 響子


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第44話 沈黙の領域

 たくさんのカラスたちが飛び交う雑木林の上、サイレンの赤い光と点灯させたパトカーと救急車一番が道路に縦に並んでいた。ざわざわと近所の高齢者や主婦、犬の散歩途中の学生などが野次馬を作っていた。青いビニールシートがカーテンのように設置されて、何が起きたのかと騒然している。


「ねぇねぇ、一体何が起きちゃったんでしょうね?」


 赤い屋根の築30年の家に住む河野 和子(こうの かずこ)は一人暮らしの主婦であり、小茄子川家とは家族ぐるみで昔から親交があった。岳虎のことは赤子の頃から知っている。最近、90歳なった夫を亡くしたばかりだ。


「河野さんは知ってるんじゃないの? 斜め向かいに住んでる小茄子川さん」

「え、ええ。まぁ、昔から付き合いあったわよ。その小茄子川さんの息子さんが何かしたの?」

「違うわよ。その岳虎君のお友達の躑躅森 顯毅君がやってしまったそうよ。小学生だっていうのに物騒な世の中よねぇ。どんな親御さんだか見てみたいわ。育て方が間違ってたんじゃないの?」


 河野 和子とヨガ教室で一緒の由本 恵子(ゆもと けいこ)は、眉をひそめてあることないこと話し始めた。噂好きであることは知っているが、ここまで人を悪く言うとは思いもよらなかった。


「――由本さん、そこまで言わなくてもいいじゃないの? そんなに付き合い深かった? 躑躅森さんところと?」

「……え、だって、そうじゃないの? ゴミ当番だって私とペアなのに全然来ないし、部落の会費集めもなかなか持ってこないから私が集めに行くと嫌な顔をしてお金渡してくるのよ?! 嫌なことしかなかったわ」


 河野 和子はまさかそんな出来事があったとは知らずにやり過ごしてきたため、その躑躅森家の長男が何か悪さするとは到底思えなかった。噂通りに親が憎まれるのなら、子供も子供だと近所の人々はやっぱりそ たくさんのカラスたちが飛び交う雑木林の上、サイレンの赤い光と点灯させたパトカーと救急車一番が道路に縦に並んでいた。ざわざわと近所の高齢者や主婦、犬の散歩途中の学生などが野次馬を作っていた。青いビニールシートがカーテンのように設置されて、何が起きたのかと騒然している。


「ねぇねぇ、一体何が起きちゃったんでしょうね?」


 赤い屋根の築30年の家に住む河野 和子(こうの かずこ)は一人暮らしの主婦であり、小茄子川家とは家族ぐるみで昔から親交があった。岳虎のことは赤子の頃から知っている。最近、90歳なった夫を亡くしたばかりだ。


「河野さんは知ってるんじゃないの? 斜め向かいに住んでる小茄子川さん」

「え、ええ。まぁ、昔から付き合いあったわよ。その小茄子川さんの息子さんが何かしたの?」

「違うわよ。その岳虎君のお友達の躑躅森 顯毅君がやってしまったそうよ。小学生だっていうのに物騒な世の中よねぇ。どんな親御さんだか見てみたいわ。育て方が間違ってたんじゃないの?」


 河野 和子とヨガ教室で一緒の由本 恵子(ゆもと けいこ)は、眉をひそめてあることないこと話し始めた。噂好きであることは知っているが、ここまで人を悪く言うとは思いもよらなかった。


「――由本さん、そこまで言わなくてもいいじゃないの? そんなに付き合い深かった? 躑躅森さんところと?」

「……え、だって、そうじゃないの? ゴミ当番だって私とペアなのに全然来ないし、部落の会費集めもなかなか持ってこないから私が集めに行くと嫌な顔をしてお金渡してくるのよ?! 嫌なことしかなかったわ」


 河野 和子はまさかそんな出来事があったとは知らずにやり過ごしてきたため、その躑躅森家の長男が何か悪さするとは到底思えなかった。噂通りに親が憎まれるのなら、子供も子供だと近所の人々はやっぱりそうなんだと半ば納得した様子で様子を見守っていた。

  

「――――ほら、来なさい。詳しい話は署でじっくり聞くから」


 警察官が帽子をかぶり直して、躑躅森 顯毅の腕をつかむ。逃げも隠れもしないと騒いでいるのに信用がない。むしろ、小茄子川 岳虎の方が居ても立っても居られなくて、逃げ出す始末だ。警察官は、証人として話を聞くつもりだったが、逃げてしまった以上、仕方ないと考え、犯人は躑躅森 顯毅と確定された。理由としては、顔にたくさんの被害者の返り血が飛んでいたことと、持っていた斧の指紋が躑躅森 顯毅のものしか出なかったことだった。


 こうなることが分かっていたが、小茄子川 岳虎は年上のくせに薄情なやつで肝が小さいやつだなと躑躅森 顯毅は枯れ葉が落ちる地面に唾を吐き捨てた。

 小学生で猟奇的な殺人事件――――と当時の新聞やテレビのワイドショーでは連日報道され、黒塗りで目を隠された躑躅森 顯毅の写真が出回った。

 刑務所の中にいるというのに一躍有名人になった。どこの小学校に通う人か、家族はどういう人か、友人関係や近所に住む人はどういう人かなどあらゆる情報が出回った。殺人事件は1つしか起きていないにも関わらず、他の事件も一緒に犯人扱いされるというニュースにもなっていた。これは、小茄子川 岳虎が過去に起こした事件をあたかも躑躅森 顯毅が起こした事件のように情報策士されていたのだ。


「――――お前、相当な事件起こしてるんだな」

「……チッ」


 刑務所の檻の中、もう一人の受刑者の國崎 豊(くにざき ゆたか)がボソッとつぶやいた。無精ひげが白く、髪の毛も白髪頭であった。若干の小学生ながら、年寄りの説教は聞きたいないと右から左で聞き流そうとした。


「まぁ、冤罪ってやつもあるかもしんねぇけどよ」

「…………」


 國崎 豊は、思い当たる節があったのか、目をつぶって膝を抱えた。躑躅森 顯毅は、冤罪の詳しい意味はわからなかったが、刑事ドラマで何となく状況は理解していたため、救われた気がした。


「何をしてる?! 静かにしろ」


 檻の向こう側の看守が目でぎろりと睨みつけてきた。ここでは抵抗する力は意味がないと静かに目をつぶり、何も話すことはなかった。

 ただただぼんやりとした時間だけが過ぎていく。

 

 ――――外の夜空は雲が無く、綺麗に星が見えることなど知る由もなかった。

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