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地獄の案内人  作者: 餅月 響子


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34/50

第34話 蝉の声が消えた紅色の公園

 暑い暑い夏の昼下がり、広い公園でミンミンゼミが必死で鳴いていた。ジリジリとアスファルトに太陽の光が照り返してさらに暑さを感じる。神社のそばにある小さな公園で2人の小学生の女の子がまりつきをして遊んでいた。


♪~ひいふうみいよぉ~、あんたがたどこさ、あんたがたどこさ、ひごさ、ひごどこさ、くまもとさ、くまもとどこさ……~


「あ、よっちゃん。失敗だ!」

「えー、やだやだ。もう1回。全部できるまでやる! みっちゃん。ちゃんと、見ててよね」

「もう、負けず嫌いだよねぇ」


 みっちゃんは、しゃがんで頬杖をついた。額に汗をかいて、足元に置いていたラムネのビー玉がカランと音を鳴らす。よっちゃんは、何回も何回もまりつきを続けた。   ベンチで座っていた2人の祖父が白い帽子をかぶって、温かく見守っていたが、だんだん疲れてきて、座ったまま眠ってしまう。


 平和な夏休みの1コマがずっと続くと思っていた。


 誰もいない砂場に1人の男が足をざくざく踏み入れる。男は、誰が作ったかわからない砂のお城をためらいもなく踏みつぶした。

 覆い茂った木々の葉が強い風で揺れ動き、休んでいたミンミンゼミが鳴くのを辞めて飛んで行った。


 木のてっぺんで羽根を休めていたカラスが何かに気づいて飛び立つ。暗雲が立ち込めていく。


「……ねぇ、楽しそう事しているね……」


 まりつきを楽しんでいた2人の後ろを地獄谷 正真になる前の躑躅森 顯毅(つつがもり あきたか)が砂のお城を崩してからしゃがんでにやりと覗く。どこか感情のこもっていないセリフだった。顎の下には、赤い血がついていた。もう、すでに他の人を殺した後だった。慌ててタオルで拭いたが、残っていた。不審がった2人は、近づいてきた男のそばから離れた。持っていた大事なまりを手離していた。体がガクガクと震えて、しっかりとお互いの体をつかみ、その場から動けなかった。一体、何をされるのだろうと恐怖に陥る。


「どした? 何をそんなに怯えているの?」


 そう発言した躑躅森 顯毅の手には、血がついたサバイバルナイフがあった。顔と動作が一致していない。笑顔のまま、2人に近づいてくる。全く知らない女の子の悲鳴が公園内に響いた。近所の住人が気が付いたときには、もうそばには2人の祖父はベンチに横たわって血を大量に流していた。


 躑躅森 顯毅は、悲鳴を聞きつけた野次馬に紛れて、着ていた黒いパーカーの帽子をかぶり何事もなかったように立ち去った。犯人は一体どこだと叫ぶ神社の神主。騒いだときはもう近くにはいなかった。


 被害者は全部で3人。まりつきをしていた女の子2人とその祖父1人。空っぽのラムネ2本が地面に転がっている。横には虹色のまりと赤い縄跳びが落ちていた。首に赤い線を描いたように血が飛び散っていた。


 犬の散歩をしていたおばさんが両手で口を隠して絶句していた。駆けつけた警察官の1人、小茄子川 岳虎がまだ巡査部長だった頃。ぶかぶかの帽子をかぶり直して、現場を目撃する。


 無残な殺人現場に息をのむ状態だった。


 閑静な住宅街のど真ん中にある小さな神社と公園。自然豊かな木々や鳥たちが飛び交う平和な場所が不穏な雰囲気を漂わせていた。


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