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地獄の案内人  作者: 餅月 響子


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第33話 止められない衝動

 「さぁ、さぁ。これからどうしようかぁ」


 取り調べ室に、地獄谷正真の声がエコーのように響いた。いつも以上に険悪なムードに部屋の中にいた警察関係者は息をのんで体が硬直する。正真の魔力で誰しもが手を出せなくなっていた。署長の重松 則夫のそばにジリジリと近づき、刃物のように伸びた腕が署長の頬に触れる。額から尋常な汗が噴き出る。誰も助けることができない。


 サイレンが鳴り、異常事態だと感じた職員たちは、取り調べ室に鍵が無いが、ガチャガチャとノブを動かしても、開けることができない。絶対絶命のピンチだ。

 容疑者である辻岡 将人は直人が殺されて今度は自分が狙われると感じ、体格の良い小茄子川 岳虎の後ろに身を潜めた。


「ん? 俺をまた捕まえるか? え?」


 甚録の体を借りて、人とは思えないほどの鋭利な腕。署長の重松則夫は、見れば見るほど10年前の恐ろしい事件を思い出す。体の震えを止めることはできない。


「ど、どど、どうすると言うんだね? 君は、当時死刑執行してこの世にはいないはずなんだ。罪はあの世で償ったとでもいうのか?」


「ハハハハ……ああ! そうだ。俺はもちろん、地獄に落ちた。そう、八大地獄の阿鼻地獄でね。それはもう、何千年という時の中、大蛇には毒の火を吐かれ、無限大数の虫に囲まれるし、鬼たちにはこれでもかと鉄棒で痛めつけられたね。炎まみれで生きた心地はしないさ。そりゃぁ、家族・女児や男児の殺人事件を起こすわ、窃盗はするわ。もう、重罪だったね……俺は社会から見捨てられた人間だから地獄にも落ちるのよ。だが、どうだ。こうやって、また現代にのし上がってきた。千年経ったはずなのに、今じゃ時空移動ができるらしいからね。どこかの誰かさんが俺を助けるというから、こっちにやって来たんだ。俺が暴れて良いってことだよなぁ!? なぁ?!」


 正真は、話をしながら、辻岡 直人の首を拾っておもちゃのように降り回した。どこの誰がこんな残酷なやつを生かそうとするのか信じられない出来事に署長は、目と耳を疑った。


「……この世に生き返ってきた……だと? 時空移動? 私たちの力で君を葬ったのは無駄だというのかぁぁああああ!!」


 震える手を止めながら、柔道の黒帯を持っていた署長は、両頬をバチバチとたたいて正真に立ち向かった。だが、すぐに感づかれて、するりと技をかわされた。


「ち、ち、ち。何をするかと思ったら……甘い甘い!」


 正真は鋭利な腕を右上から左下に振り上げた。技を繰り出そうとした署長は、交わされて、振り返った直後だった。ぐさりと胴体を斜めに切られてしまった。

たくさんの赤い絵の具をバケツでこぼしたみたいに血で染まってしまった。正真は、指についた血をぺろっとなめてにやりと笑う。


躑躅森つづりもり!!!!!!!」


 小茄子川 岳虎は、顔全面で威嚇するように持っている力をまき散らす。不意をつかれた正真は、壁に追いやられた。体が張りつけ状態になる。


「ふーん。また、俺に説教する気か?」

「お前の底意地悪い性格は地獄に行っても治らなかったようだな!?」

「俺は、ただ地獄に行っただけだ。誰が、治るかこんなもん。治るやつがいるなら、知りたいね。あんたは治るのか?」

「……くっ……」


 正真の体を天井近くまで持ち上げていた岳虎の手が緩んだ。


「思い当たる節があるようだ……」

「うっせーー」


「小茄子川くん! は、早く、何とかしてくれ」


 部屋の端の方で少しでも血で汚れないようにと縮こまっていた副署長の森山 憲治郎が小声で言う。目障りに感じた正真は、パチンと指を鳴らすと一瞬にして副署長の森山の全身が水しぶきのように粒子に変わり、床に消えていった。シャボン玉が消えるようだった。


「何を?!」

「邪魔だったからだ」


 発した言葉に幻滅した岳虎は、正真のおさえていた手をパッと離した。正真は、床に勢いよく倒れた。


「おいおい。もっと優しく落としてくれよ」

「誰が優しくするか」

「ふーん、そう来るか」

「……くっ……」


 次は何をされるかと恐怖を感じながら、身構えていると、正真の横に丸く虹色の異次元空間が現れる。


「げっ……タイミングが悪いな」


 正真の機嫌を損ねる予想外な事態のようだ。今がチャンスだと岳虎は正真の後ろに回り込んだ。正真の腕を背中にくっつけて身動きできないようにした。


「や、やめろ!」

「往生際が悪いぞ。俺に勝てると思うなよ。躑躅森!」


 まさかの体に制限がかかり、感情がかき乱される正真だ。異次元空間は丸く浮かび上がり、何も起きなかった。閻魔大王が何か連絡したかったようだが、誰もいない。もがき苦しむ正真は、力尽きてだらんと体をうなだれた。


「それが一番利口な考え方だな」


 岳虎は後ろで手錠を両手にかけた。額の汗を拭きとると、端で静かに待っていた辻岡 将人はふーっとため息をついて安心していた。正真の力が解けたのか、ドアノブも通常通りに回っていた。次々と署内の職員が中に入り込み、対応に追われていた。

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