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地獄の案内人  作者: 餅月 響子


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第27話 2人の大失態

「被害者の状況は?」


「男性2名と女性3名の合計5名の方が、重軽傷となっています。さきほど救急車で重症の方が運ばれました」


「5名ね……聞き込み調査しますか?」


「目撃情報は欲しいところですよね。私はあちらを。小茄子川くんは向こうの方に」


「了解です」


 近くで通りかかった目撃者の状況の聞き込みを開始した。事実確認は必須だ。犯人が狂言ではないことも証言できる。ここまで血が飛び交っていると嘘のつきようがないが、目撃者の他に、防犯カメラの内容もチェックする。どのカメラから見ても、明らかに刃物でグサリと確実に刺している様子が見受けられる。


「全然、隠しもしない犯行ですね。全く、容赦ない攻撃。どういう思考をしたら、こうやってしまうのか……」


(本当は何となくだけど、分かるのが俺様だけどなぁ。まぁ、こいつに言ったところで、疑われるから黙っておこう)


 正真が憑依した甚録は、にやりと口角を上げて、腕を組む。本当は犯人の心理を手に取るようにわかっていた。社会への不満、人間関係の失敗、外的要因や、自分自身への不甲斐なさ。生きていて様々なことへの劣等感。似た考えを持つ男なんだろうと察する。


「甚録さん。本当は犯人の気持ち分かったりするんじゃないですか?」


 岳虎は、甚録の行動や仕草を見て、予測した。行動と言動が伴っていないことが見て取れた。まずいと思った甚録は、正真を差し置いて、表に出てくる。憑依空間での押し込みだ。


「小茄子川くん。それは気のせいですよ。気のせい。さぁ、さぁ。早くしないと目撃者がいなくなってしまいますよ。聞き込みを続けましょう」


 警察手帳にペンをはさみ、急かす甚録。もちろん、甚録本人だ。正真は憑依空間は胡坐をかいて、舌打ちをしていた。甚録の額が汗びっしょりだった。


『何とか、ごまかすことができました。全く、しっかり対応して頂かないと、ボロが出たら大変ですよ』


『俺はどーせ、使いモノにならないやつだよ。けっ』


『何を急に卑屈になっているんですか。今、逮捕している犯人はこれから逃げ出して、大量殺人を起こす予定の者ですよ。早く捕まえておかないと‼』


 甚録は、透明なウィンドウを出して、坪井 太海のパーソナルデータを覗き見た。過去の壮絶な出来事が映し出され、未来の大量殺戮現場も映像化されている。


『なんで、そんなことまで分かるんだよ! 今まで、そんなデータ知らなかっただろ』


 甚録は、人差し指をくねくね動かして、アピールする。


『実は、前からデータ確認しておりましたよ。ぬかりはありません』

『なんだって? そ、そんな話、初めて聞いたぞ!』

『ええ、今、初めて話しましたよ。そうです。今、君に言ったのです』


 胸を張ってえばる甚録に、もやもやといら立ちを隠せない正真だ。憑依空間での会話で、肉体はおろそかになっている。隣にいた岳虎は、ぼんやりしている甚録に首をかしげた。ハッと目が覚めた甚録は、ブンッと首を振った。


「いけない、いけない。ぼんやりしていてはいけませんね。仕事しないと!」


 頬をパシンと軽くたたいて、聞き込み調査を続けた。そういえばと思い出して、犯人の國崎 慎也(くにざき しんや)の居場所を把握した。手錠をかけて、隣にいたはずだった。だが、未来予測と同じでかなりのスピードで逃げ出していた。原因は、甚録の意識がここにあらずの瞬間で、甚録と岳虎が憑依空間の中での会話中の時間だった。やってしまったというような顔をして、頭を抱える甚録だ。まさかの失敗に鼓動が早まる。


「甚録さん! 行きますよ。捕まえましょう。俺に任せてください。このショッピングセンターはしょっちゅう来てるので、挟み撃ちで追い込めますよ」


「……それは、助かります。行きましょう」


 気持ちを切り替えて、パンと手をたたいた。犯人逮捕に全力を注ぐ。2人はこれでもかという力を出して、全力疾走した。野次馬で集まったお客さんは何が起きたんだとびっくりしていた。駆けつけた救急隊2名はケガ人をストレッチャーに乗せて、運び出していた。


 ざわざわとざわつくショッピングセンターは緊張感が増していた。


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