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沖田ファミリー  作者: JUN
6/10

貴史が遠足に行きました(3)追いかけろ!

 公園は、小学生が学校から歩いてくるとそこそこ遠い気がするが、校区をギリギリ外れた程度の距離でしかなく、貴史の家からだと自転車で十分程度だった。ここに貴史も、休みの日に隊長たちも尚史も春彦も一緒に遊びに来たことがある。

 貴史から「隊長に前に春ちゃんやお父さんも一緒に行った大きい公園に来てって言って」と頼まれたジミーくんはすぐに隊長にそれを伝えた。

 それで隊長はすぐに家を出て、ほかの仲間を背中に乗せたまま公園にたどり着いた。そして、元秘書と宝石鑑定士と名乗っていた男の名刺の匂いをたどり、追跡を始めた。

「おお!凄えな!」

 育民は興奮し、その辺で拾った木の枝を振り回した。

「見つけたら、逃がさねえぜ」

「隊長、がんばってね」

 貴史は言いながら隊長の横を歩き、亜弓は死に際の人生の回想をやめさせた男に、

「しゃんとして。大人が何か言ってきたらおじさんが説明してくれないと困るのよ」

と言い聞かせている。しっかりした子だ。

 一行はぞろぞろと歩いて公園を出ると、隣のコインパーキングに入った。

「車かあ」

「車だと追えないわ」

 男は絶望的な顔になったが、ふと顔を上げた。

「タクシーで追おう」

「どっちに行ったかわかるの?」

 公園の前の道は一本道だが、片方は駅に向かい、片方は郊外に向かっている。間違えれば反対向きなので取り返しが付かない。

「駅だ。換金してしまいたいはずだからな」

 大人が言うことなのでそうしようか。そう思っているうちに、男はさっさとタクシーを止め、隊長たちもろとも乗り込んだ。

「え、動物もですか」

 迷惑そうな顔でタクシーの運転手が言うが、亜弓が言う。

「命がかかってるの。お願いします」

 運転手はハッとしたように亜弓を見、キリッとした顔で言った。

「命が……わかりました」

 そう言って、アクセルを踏む。

「シッカリタノムヨ-」

 ジミーさんの応援を受け、タクシーは駅方面へと走り出した。


 だが、しばらく行くと、もの凄い渋滞で車が動かなくなった。

「どうしたんだろう」

 運転手が無線でやりとりしてみると、どうもこの先で事故があって車が動けなくなっているようだ。

 しかも一本道なので迂回路もなく、後続車がいるのでバックもできず、この有様だという。

 仕方が無いと、貴史たちたちはタクシーを降りて歩き出した。

 しばらく歩くと、事故現場が見えてきた。

「ピンクの泡?」

 タンクローリーとトラックが衝突して横倒しになり、道を塞いでいた。警察も消防車も来ており、消火剤がまき散らされ、警察も野次馬の整理をしている。

 が、男がずらりと立ち往生する車の列に指を向けて叫んだ。

「いたぞ!」

 指の先にある車を貴史たちは見た。

 先頭から二台目の車にスーツ姿の男が二人乗っており、うんざりしたような顔でシートにもたれていた。

 男はずかずかと近付いて、ドアに手を掛けた。

「おい!」

「なんだ──げっ!」

 車の男はまずいという顔をして、反対側から逃げようとする。

「ジミーくん、サイレン。隊長、前に回り込んで」

 ジミーくんは舞い上がると、

「ウ~ウ~」

と大音量で叫び、隊長は走って逃げようとする男の前に出てうなり声を上げる。

 たまらず片方の男は足を止めたが、被害者の男に近かった方の男は、つかみかかったおじさんを殴って逃げようとする。

「モモちゃん」

 モモちゃんは飛んでいってその男の顔に張り付いた。

「うわあ!!」

 男は慌ててモモちゃんを払いのけようとするが、モモちゃんはするりとその手から逃げ、代わりにその前にジミーくんが立ち塞がってとげを逆立てて威嚇する。

「うわっ! 何なんだよ!?」

 刺さると痛そうなのは見てわかる。

 足止めにはそれだけで十分だった。

「何事だ!?」

 いやというほどいた警察官が集まって来たので、亜弓が叫んだ。

「おまわりさん、泥棒よ! この二人がおじさんの宝石を盗んで逃げたの!」

 半信半疑の警察官だったが、その中に知り合いがいた。

「あれ。沖田警部の息子さんだよね」

「うん、そうだよ! 悪い人なんだ、助けて!」

 それであっさりと警官が男二人を取り押さえ、ポケットから宝石が出た事で言い逃れはできなくなった。





お読みいただきありがとうございました。御感想、評価などいただければ幸いです。

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