06神威と探求
古代
「ここはなんなんだ…?」
私達は草の一つもなく黒く焼け焦げた木がポツポツと存在するだけの荒野に居た。
何千年も昔から草が生えず、ここにどうにか住み着こうとすると死亡する呪いの場所。
まさかこれが…?
「古代文明を滅ぼした最強最悪の魔法、終末魔導の一つアトミックフレイムを食らった土地だよ」
「…核?」
レイの言葉にルウが反応する。
「核とはなんだ?危険はあるのか?」
「…うーん、説明が難しいから後にするけど今はもう危険は無いと思うよ。あ、私達はって付くけど」
レイは耐えれないのか…
アトミックフレイム…こんな物、誰が作ったんだ?
そしてこいつはそれっぽいのを知ってると…
時代が違えばルウは何十と良いもの生み出していただろうに。
「はぁ…あと一世代後に産まれてたらな」
「君の考えは大体分かるよ。でも今の帝国にはルウちゃんが必要なんだ」
まったく…どんな物も使い方だな。
スキルを持つ者達は世界に大きな影響力を持つ。
だがルウの真価はその知識なのだろう。
こんな存在が帝国だけなら神の祝福と言えたのだろうがな…
世界にはこんなスキル持ちが何百と居るらしい。
実際そんな存在が何十と確認されている。
アナザー公国の七貴族の家系、セフィロト聖国の勇者と呼ばれる者達。
特に勇者の中でマルクトと言う者が最も強いと言われてるらしい…と。
「なぁ、早く始めようぜ?」
ファーストがそう私達を呼びながら走る。
こいつ…能天気な奴だな。
「俺が行くぞ?」
セカンドが刀を握りそういう。
「そうか?なら行ってくれ」
そう言った途端、セカンドは走り出した。
― ― ― ― ―
sideファースト
「俺に勝てると?」
「あぁ、お前になんて負けねぇよ」
俺が言うとセカンドはそう返して刀を振り抜こうとする。
おいおい…俺の剣が連接剣だと忘れたのか?
俺が下に向かって剣を振るうと剣の繋ぎ目に刀が刺さる。
よし、このまま折ってやる!
「折れるとは、思ってねぇよな?」
「チッ…【獄炎魔導・獄炎】」
バキバキと壊れるような音がし、俺は獄炎魔導を起動した。
炎魔術程度じゃあいつは引かねぇだろうし、自爆技しかねえんだよなぁ…
「引き際くらいは弁えてやるよ」
そう言ってあいつは刀を振る力を弱め、その場所から飛び退く。
ついさっきまでセカンドが居た場所に炎が触れ周囲に砂塵が吹き上がる。
「【神威】」
神威、それは文字通り神の威圧。
その威圧は、現実に顕現するほどの圧だと言うらしいな。
俺の周りから突風が発生し、砂煙が全方位に向かって飛んでいく。
セカンドが砂煙を防いでる間に走りながらスイッチを押し、連接剣の留め金を外す。
「チッ…壊れてんじゃねぇか…」
通常なら剣の繋ぎ目が外れて、剣身が別れ鞭のように伸びる剣になるはずだったんだが…
ちょうどセカンドの刀がぶつかった繋ぎ目が留め金が片方外れ、回転軸が外れてる。
これじゃあ振り回した瞬間外れちまうじゃねぇか…
「チッ…もう自棄だ!」
剣身を元に戻し、セカンドに向かって振りかぶる。
剣身を再び伸ばし振るうと、目を擦っていたセカンドが一気に刀を振り抜いた。
流石は探知スキルの最上位を使うだけはあるな。
だが、そこはお前が切った壊れてた部分なんだぜ?
パキッ…そう音がして刀に連接剣が切り裂かれる。
「【獣王化】」
切り飛ばされた剣の破片をセカンドが避けている隙に足だけを獣のように変化させる。
セカンドの足を蹴り倒し、奴が宙に浮く。
「【疾雷】」
セカンドの刀が雷光に包まれ、腰をひねりそれを当てようと刀を振るう。
それを避けようとスライディングでセカンドの下を潜り抜け、ついでとばかりに奴を蹴り上げる。
「ぐっ!?」
「【飛斬】」
獣王化で空高く蹴り上げたセカンドに向かって空飛ぶ斬撃をいくつも繰り出す。
それを避けながら奴は体を捻り刀を鞘に戻した。
「【魔斬】【疾雷】【大地魔術・ロックウェポン】」
石による盾が作り出され、斬撃を防ぎこちらへ落下してくる。
「これでもくらいな!」
「当たるかよ!【飛翔】」
盾を避けようと上へ飛ぶと紫雷を纏った刀を半分引き抜き、こちらを睨み付ける。
俺は笑いながら奴を睨みつけ、スイッチを押して剣をしならせ振るう。
セカンドは疾雷で、俺は飛翔で奴へ近づく。
奴は俺へ刀を振るい…
「【縮地】」
奴の刀は空振った。
剣の柄を奴の首に叩きつけ、セカンドは地面へと落ちる。
「騙されたか?」
そう言って俺はスイッチをもう一度押して剣を収納した。