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パンドラの箱  作者: ルシア
第一章・再誕
5/16

04狂乱

試練

sideルウ


どうしてこうなったんだろうか。

私は見覚えのある部屋を出てホールへと向かったはずなのだけど…

でもさ…なんなのこれは?


「アハハハハ!」


そこには倒れ伏したエンドと、発狂してる金髪の少女が居た。


― ― ― ― ―


「という事で左腕を失ってしまった」

「…うっそー」


そう言って苦笑いで報告する私にレイは苦笑すら出来ないらしい。

あの後私は彼女とあいつら(ナンバース)を回収してレイに報告に来たのだが…


「あー…ちょっと腕見してくれない?」


レイにそう言われて私は左手を差し出した。


「えぇ…君これどうなってんのさ。左腕の肘から下が消し飛んでるし傷口グチャグチャじゃん…」

「…治せるか?」


不安ながらも尋ねるとレイはその左腕を難しい顔でマジマジと見つめる。


「無理…かな」


レイは少し申し訳なさそうにそういった。

無理か…そうか…

分かり切っていたが、無理と言われてしまうと少し…苦しいな。


「傷は治療できるけど腕の復元は不可能だよ」

「…わかった。あいつらの訓練は継続しておく」


私はそう言ってレイの部屋を出た。


「今日の訓練は自主練としてくれ…」


私はその日はそう言って自分の部屋へと戻った。

黒髪の女が寝ている、私が手を失った原因である人物だ。


「はぁ…こいつ今までどこに居たんだ?」


服はボロボロ、髪はボサボサで体型は少し痩せている。

私はそいつを抱き上げて風呂場に持っていく。


右手しか使えないというのはなんとも面倒な事だな。

こいつを抱き上げるのすら一苦労だ。


その後なんとかあいつを洗い終えた私はとりあえず私の服を着せてベッドに腰掛けさせた。

ハサミ、どこに置いてたかな?


― ― ― ― ―

sideキトラ


見つけた、私より強い奴。


「行くよ、ローラン!」

「ちょっと待って!キトラさん!」


屋敷を出て走り出す私を止めようとするローランをおいて私は大きなあのホールに向かって走り出した。


― ― ― ― ―

「さて、今日も訓練だ。各自武器を振るえ、フォームを正してやる」


私がそう言っても誰も動こうとしない。


「はやく動け、聞こえなかったのか?」


そう私が言うとファーストがこっちに歩いてくる。


「俺達がもっとちゃんとしとけば…エンドが手を失う事は…」

「私だって…」


皆そんな事を言って泣き出してしまった。

私のせいでこいつらは泣いているのか…?

そう考えると少し、心が痛んだ。


私が躊躇せずに戦えば腕を失う事はなかったかもしれない。

そんな憶測が私の心を押しつぶす。


「…ならそんな事がもうないように努力しろ。各自武器を取れ!」


そう言って私は武器を投げ渡した。


― ― ― ― ―


ふむ…どうなってるんだろうか?

ほぼ全ての武術が素人級なのに1、2個の武術だけ達人と言えるような腕前だ。


ファーストは鞭と長剣、セカンドはカタナと言う東洋剣を使いこなしている。

サードは拳闘術だったりフォースは魔法、フィフスも拳闘術でシックスは棒術。

セブンスは長剣と槍。


そして私の大鎌。


何故なのだろうか、私達には戦闘経験など無いというのに…

そんな事は今考える事では無いか、今考えるは私の左手の代わりだろう。


そんな事を考えていると上空からおかしな気配と共に何かが急速に落下してくる。


「ッ!?躱せぇ!」


そいつだけじゃない、他にもたくさんの気配があった。


「ミーツケタ…」


落ちてきたのは金髪の女、そいつは私を見て笑っていた。



「ねぇ、貴方はなんて言うのかな?」

「…エンド・ディア・アンセスター」


その少女は私に笑ってそう問い、私はそれに答えた。


「へぇ…いい名前だね!。私はキトラ・フォン・ネフィリム、強き者を求めてやってきたのさ!」


そう言って奴は背中から何かを生やして私へと向けた。

赤い爪


「【血界】」


私は大鎌を取り出し、奴へと備える。


「みーんなー!私エンドと戦うからそいつら取り押さえといてー?」

「あ、おい!?」


ファースト達が奴らに取り押さえられてしまう。


「だいじょーぶ、戦いが終わるまで避難させとくだけだよ。手を出したら私が殺す」


そう言うあいつの目には本当の殺意が籠もっているように感じる。

信用できるか…?


「さて、始めよっか」

「…あぁ【雷鳴魔導・迅雷.落雷.天雷.カンナカムイ.】【獄炎魔導・獄炎】【爆裂魔導・爆炎】【死神】【ラプラス】」


私はカンナカムイを奴に向かって撃ち込むと奴は避けようともせず腕で受け止める。

だがその答えは間違いだ、腕にカンナカムイが当たると腕が消失し、その奥の体すら焼き焦がす。


「…そうこなくっちゃ」


そう言ってキトラはその場で回転し、少し残った腕を分離して私へと投げつける。

それを切り裂いた先に居たのは剣を2つ装備し、大槌と大盾を触手から生やしたキトラの姿だった。


「ハッ…本気はこれからって事か?」

「ま、そういう事ー」


私より強い敵、血が疼く。

私は大鎌を振りかぶり、奴へと走り出した。

キトラが大きく目を見開き、慌てて剣で大鎌をガードする。


キトラはその状態から大槌を振り回す。

乱暴で遅い一撃、当たるとでも思っているのか?


私は胸ぐらを掴み、奴の足を払う。

簡単にキトラは浮き、奴を壁へと投げつける。

弱い…力を使い切れてないな。

今もあの触手を使えば吹き飛ばされる所か私を投げ飛ばせただろうに…

磨けばなんとも強い者になるんだろうが、仕方ないか。


― ― ― ― ―

sideキトラ


…私より強いとは思ってたけど想像以上だね。

どうやって殺そう…?

(権…【狂気………壇】を……しました)


またあの声だ。

優しいようで無機質なキレイな声。

それはいつも私に闘争と希望と喜びを与えてくれた。


私はその声が与えた力に大きく口を歪め、笑う。

その力は今までのどの力よりも強い。

私はその声の伝えた通りにそう唱えた。


「【狂気ノ血祭壇】」

 

― ― ― ― ―

「は!?」


壁に叩きつけられたキトラの気配が急に膨れ上がり、魔力の渦に包まれる。

その渦がガラスのように割れるとそこには禍々しいヒト型の生物が居た。


「キトラ…なのか?」


目が抉れているようにも見えるし、背中から生えていた腕は元々あった四肢と融合したのか大きな手足が生えており、何より額から生えた大きな角が印象に残っている。

もはやキトラの痕跡すらほぼほぼ残っていない。


苦しいのかは分からないが小さな声で呻いている。

なんだかあの黒髪少女の時のような悲しみを感じた。

…私には似合わない所業だろうな。


「【メサイア(救世主)】」


私がそう唱えると体内から急激に魔力が消えて行くような感覚と共に大鎌が白く染まる。

精神を攻撃するスキル、あの少女を連れ帰った時に現れたスキルだ。


「ガ…グギィ…」


少女はその大鎌を見つめ、それに威嚇をしている。

敵意ではなく、怯えや恐怖のように思える声だ。

キトラから力が失われていく。


「大丈夫、来いよ。私はお前を受け入れてやる」


そう言った途端、威嚇が止まり彼女の抉れた目から少し赤の混じった涙が溢れ出す。

彼女に近づき、頭を撫でてやる。

その手を彼女は少し怯えたような顔で受け入れた。


大鎌を差し出してみるとキトラはそれに触れる。


「モウ…失イタクナイ…」


そう彼女が言って、腕は消え、目が再生していく。


「触れるだけでここまで作用するとはな…」


刺しでもしないと作用しないと思っていたんだが…

キトラを撫でていると扉が開かれる。

その扉を開いた男が私の膝上で寝ているキトラを見て笑みを浮かべ、言った。


「皆!新しい盟主だぞ!。酒をもってこーい!宴だー!」

「「「うおおおぉぉぉぉ!」」」


その言葉に続くような歓声が辺りに響き渡る。



ちなみに、この後の記憶が無い。

私がその後目覚めた時に見たのは狂ったように酒を飲んで笑うキトラとその前に倒れていたあの黒髪少女だった。

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