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パンドラの箱  作者: ルシア
第一章・再誕
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09暴風龍

フィフスとシックスが衝突した途端、魔力の渦が地面を砕いた。


「全員を救出しろ、失敗は許さん」


それを見た途端私は奴らにそう命令し、駆け出す。

地面の砕かれた先にあるそれが、産まれる前に止めを刺すために。


それは膨大な魔力を放ち、5メートルはありそうな巨大な謎の生物の卵。

卵の状態で、おそらく私に以上の魔力を放つこいつを生まれさせる訳にはいかない。


「卵の状態ですら魔力を放つ巨大な卵。産まれさせる事を許したらどんな化け物が産まれるだろうな」


なんて、冷静に考えている場合じゃないだろ。

あの卵は一体なんだ、どうしてこんな所に?

そう考えるが、謎は深まるばかりだ。


「ハアッ!」


力を思い切り込めて大鎌を振るう。

だが、卵を切断する事は出来ず穴が開く程度で、そこから切り裂こうとしても思うように刃が通らない。


これ、ほんとに卵だよな?

超硬い石とかじゃないよな…?

そんなありえない事を考える程硬かった。

そして、その穴から緑色の光が溢れ出す。

それを見た時、私は確信した。


あぁ、こいつは勝てないな。


「…チッ」


翼を伸ばし、あの卵から距離を取る。

視線を外してルウ達を探すが、見つからない。


後ろという可能性もあるが、さすがに体をあの卵から反らすのは避けたい所だ。


「ファースト!」


そう叫んでもファーストは返事をしない。

それどころか物音も聞こえない程だ。

大地が割れ、卵の罅からたくさんの光が漏れ出している不思議で幻想的な光景。

音も無く広がる光は現実感が無く、綺麗な絵画を見ているかのようだ。


「………」


綺麗だな、そう呟くがそれが声となる事は無かった。

声が出ない、どう呟こうと何も声にならない。

これではスキルを使えないと、叫びかけた所で世界は元に戻った。


卵の罅が広がり、光が強くなっていく。

そして卵はパリイィィン!と、ガラスのような音と共に砕け散った。


「…はは…こんなのが隠れてやがったのかよ…」


その光の中に居たのは緑の体表に、それを覆う鱗、そして大きな翼と一対の流線型に伸びた角を持つ生物。

角は金色に輝き、それと同じ輝きを目に宿しているその姿は、どう見たってこの世のものとは思えない。


「ドラゴン…か」


神話に登場する古代生物。

魔法と同じ、神話世界の産物だ。

奴は私を見据えるばかりで攻撃しないし、逃げもしない。


後ろで物音がした。


「エンド、救出が完了した。他の奴らは退避させたから…アレと戦うなら手伝うぞ」


この声はファーストか…

だが、私より魔力量が多いこいつと私より魔力量が少ないファーストでは勝機が無いだろう。

私ですら殺せるか怪しいのに。


「…お前は退避しろ、足手纏いだ。こいつは強い、私でも時間がかかる」


キトラとファースト、そしてルウ。

今はともかく、腕の無い私では追い抜かされるのもすぐだろう。


「指揮権をルウに移す、お前らの上官は今からルウだ」

「おい、なんだよその言い草は…」


デストラスを構え直し、私は顔を見られないか気にしながら答える。


「…大丈夫だ。すぐに帰るさ、お前らを置いて死んだりするとでも思うのか?」

「待って、勝てる訳が無いよ!エンド、逃げないと!」


ファーストを説得したら今度はルウが向かって来た。


「…はぁ。ファースト、ルウを連れて行け」


面倒くさそうな声でファーストにそう命令する。

いつもの私その物だろう。

泣き喚くルウはファーストに連れられていく。


仕方がない奴だ。

後ろに振り向き、泣いているルウに向かってあいつの居たと言う国、ジャーパンの言葉で呟いた。


「お前と会えてよかった、ありがとう」


読唇術は教えている。

この言葉でも読めたらいいなと言う願いは叶ったようだ。

ルウは泣くのを辞めてこちらを見開いた目で見る。


「笑っておけ、美人が台無しだぞ?」


今度はこの国の言葉で、笑って伝えた。




さぁ…後はあのドラゴンの足止めだけだな。

片腕が無いからって、私には2つの強大な武器もある。


「さて、始めようじゃないか。ドラゴン、私は強いぞ?腕の一本くらいは、覚悟しておくんだな」


黒き大鎌、デストラスの切れ味を舐めるなよ?

そう言ってあのドラゴンに向かって私は駆け始めた。


「クルルルル…ガァァァァ!」


奴が吠え、口を開けると奴の口から緑の光と共に小さな竜巻が私へ向かってくる。

緑の光、つまりは力の内の一つ…

赤くは無いからほぼ確定で魔力では無いか?


私は格下、ならば奇襲以外であのドラゴンに勝てる方法はほぼ無いだろう。

竜巻と言う事はルウの言っていた台風の目、という物もあるはずだ。

そしてデストラスには切った魔法を一部打ち消す効果がある。


「…やってやろうじゃねぇか」


私は大鎌を大きく振り上げ、左上から右下に向かい切り裂く。

そのまま全力で地面を蹴り、竜巻に向かって突撃する。

いわゆる回転斬りって奴だ。

台風の目にも入れているようで怪我はほとんどしない。


少し浅い切り傷が出来る程度で予想以上の成果だ。


「【天駆】【身体強化】」


そう唱えた途端、魔力が全身を巡り始める。

足を動かし、空を蹴り加速していく。

ドラゴンを眼の前に捉えた私は大鎌の角度を変えて奴の口の中を斬りつける。


「クオオオン!」


龍がまた鳴き、翼を羽ばたかせる。

その翼からまた緑の光と共に風が飛び出す。

しかしその風はさきの竜巻と違い、今度は弓のようにしなった飛斬のような風が生まれた。


両翼から生まれたその風の刃を防ぐ時間は無い。

かといってこのままでは胴体が両断されてしまう。


ドラゴンを斬りつける事を諦め、曲げた角度を戻し風を受け止める。

だが右側は受け止める事が出来たが左側は受け止めれず腕が半分程切り裂かれた。


「治癒魔法は覚えたてだが…【治癒魔術・ハイレスト】…千切れてなければ治せるんだよ!」


翼で減速し、大鎌を振るう。


「ガアッ!」


大鎌にドラゴンの尻尾が叩きつけられ、小さな傷を付けて吹き飛ばされた。

そのまま空に飛び上がり、翼を広げ大鎌を構えドラゴンへ加速する。


「ガウァ!ギャララルルゥゥゥ!」


ドラゴンはただ喋るだけでスキルを発動出来ていいよな…

そんな事を考えつつ、周りを見渡す。

たくさんの竜巻に、吹き荒れる暴風に、たくさんの風刃。


魔力が多すぎる…

自分に当たるであろう魔法だけをデストラスで切りつけてもそれでも対処出来ない物があり、私に当たってどんどんと傷が増えていく。


それでも加速は止めず進んで行き、大鎌を振るって魔法を消し去る。

最後にドラゴンの眼の前にたどり着き、大鎌を振るう。

奴はまたもや大鎌を尻尾で弾こうとする。


ならば、その望みを叶えてやろう。

尻尾に大鎌が当たると同時に私は大鎌を手放した。


「【爆裂魔導・ヴズルイフ】」


そう唱えると、私の手に小さな火の玉が現れる。

それをドラゴンの口に放り込み、角を掴み頭の上に乗り、頭を蹴飛ばす。


「【血界・集血】」


閉じられたドラゴンの口から炎が溢れ出し、上に乗る私を見る。

武器が無ければ雑魚だと、そう思っているのだろうな。


「残念でした、武器は一つじゃないんだぜ?」


ドラゴンに言葉が通じるのかはわからなかったがそう伝え、血の塊の中からデストラスとは逆に白く輝いた大鎌を取り出す。


さぁ、そろそろ時間稼ぎはいいだろう…逃げるか。


私は白き大鎌、パンドラを振るい、奴の怪我した傷を斬りつけた。


「ガァァァ!」

「痛いだろう?」


そりゃあ痛いだろうなぁ?

私は牙を切り落とされ痛がるドラゴンを尻目に、翼を使い空を全速力で飛び始めた。

ルウの見た暴風龍のステータス


ラーヴァグラン・1/100000・暴風龍・風の源龍


スキル・風魔法Lv10.暴風魔法Lv10.暴風Lv10.タイフーンLv10.風刃Lv10.風Lv10.暴風Lv10.

鎌鼬Lv10.嵐Lv10.暴風斬Lv10.タイフーンブレスLv10.エンチャント・ウィンドLv10.魔力回復Lv1.


技能・飛行Lv1.


権能・暴風龍.原初龍.風の源龍.風.子龍.龍王.


称号・龍.風の王.帝王.神龍.




ちなみに、エンドと戦った後は飛行Lv2になり、痛覚耐性Lv1のスキルと恐怖耐性Lv2が生えたよ

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