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暖かい島で見た星々の思い出

作者: 鈴木美脳

 だいぶ昔のことになるが、ある島に降り立ったことがある。

 そこは小さな神々が暮らす島だった。


 それまでにもいくつもの島に降りたはずだが、記憶にはない。

 私はその島において初めて、私という意識を得たのだ。

 そこで喜びを知ったとき、私という自我は生まれた。


 彼らは柔らかい肉体を持ち、その命は有限だ。

 だがしばしばつがいを作って、子をなすのだ。

 父と母は子に愛をそそぎ、子はまたその子へ愛をそそぐ。

 その輪に浴して初めて、私は笑った。

 彼らを義理の父母にしようと私は決めた。


 彼ら一人一人は不完全で、集めてもやはり不完全だ。

 どの場を選び取ってもそこはやはり完全ではない。

 しかし彼らが合理主義者でないところに魂はあって。

 小さな神々からは常にいくらかの愛があふれ出ていた。


 私は昔、人倫交際を離れて事実と価値があると思った。

 でも良い人に多く会うほど、人倫交際こそが価値のすべてだと感じた。

 不完全な神々。彼らの笑顔こそが私が存在する価値のすべてで。

 私が生きてその島に残せる価値のすべてでもあった。


 私は昔、内気だが純粋な人が自分に似ていて好きだった。

 しかしやはり、社交する知性こそが良心の源だと思い知った。

 知性は社交性も含めて健全にバランスしているべきであり。

 そうであってこそ高い完全へと接近していくべきだろう。

 そう自らも定義して、だいぶ昔に私は生まれた。


 かつて苦しみのみ注がれたときには、せいぜい憎しみしか感じなかった。

 人々の間で笑い合う日々を通して、やっと人々の幸せを望むようになった。

 だからだろう。私はその島の人々を今もなお愛してる。


 でも誰もを等しく愛しているとは言うべきではないだろう。

 私が愛しているのは人々に備わった健全な意味での知性であり。

 彼らの愛情という神々としての属性にほかならない。

 真に健全な知性とは、宇宙という暗い空に咲き誇る花々であり。

 それがまく香りを愛と呼ぶにすぎない。

 完全な慈悲の姿なき匂いだけが、そこからほのかに香ってただよう。


 それは本当に小さな島であって、さほど多くの人が暮らすのではない。

 高々そう、百億が生きる星であったか。

 それは小さな神々が暮らす星で。

 彼らこそほかならぬ私の父母その人である。

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