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宿と盗賊

マリア町を出たサラとアッシュ。サラはライドモードへと変形したアッシュに跨り、道を走る。


【どこまで行く】


「帝都までは距離があるから、近くの村で休みましょう。ここからなら」


【アルマの村が最短の村だ】


「知ってるの?」


【昨晩、ワタシのデータが突然アップデートによってこの世界の地図がインプットされたのだ】


「そうやって、定期的にデータ?が送られてくるの?」


この世界にやってきたアッシュ。しかしネット経由の通信が不可能になり、何度も連絡を試しても繋がる事はなかった。しかし昨晩、スリープモードに入っていたアッシュに直接データが送信された。逆探知で送信場所を特定しようとしたが、その前に消えてしまったのだ。


「不思議な事もあるのね」


【残り数分で到着する】


「よし、このまま進みましょう!」


サラとアッシュは直近の村であるアルマの村へと向かった。


二人が道を走る様子を木陰から覗く謎の人影


「あれがターゲットのゴーレムね」


その人影は二人の進む道を背後から追うのだった。


➖アルマの村➖


貿易の町、マリア町と帝都ゼーガルドの間にあるアルマの村。旅路の途中にある村は旅人の間では休息所としてもよく利用される為、村人達で経営してる大きな宿がある。大きな町にある程の立派な建造物ではないが、村の特色のある宿は旅人達にとっての楽しみでもあるのだ。アルマの村に着いたサラとライドモードからロボモードに変形したアッシュ。


【サラ、君にこれを渡しておく】


アッシュから手渡されたのはブレスレットだった。


「これを私に?」


【それは君の位置情報や健康状態をワタシに知らせる端末だ。逆にその端末からワタシの居場所を知ることも出来る】


「それ凄い便利ね!ありがたく使わせてもらうわ」


サラはブレスレットを身につけて、二人は村の宿を目指す。アルマの宿は二階建ての木造建築。大きな町に挟まれたアルマの村に泊まる者は多いため、多くの旅人や商人が泊まれるように10部屋もある。普通の村なら5部屋もあれば大きい宿と言える中、村でありながら10部屋という数はかなり多い。

扉を開き、中に入ると受付の女性が出迎える。


「いらっしゃい!あら、そのゴーレムは?」


「彼はアッシュ。私と旅する仲間なの」


「そう。ゴーレムは重たいから1階になるけどいいかい?」


「もちろん。明日の朝チェックアウトでお願い」


「はいよ!二人分で300Gね」


「ありがとう。じゃあアッシュ、部屋に行きましょう」


【了解した】


部屋に入った二人。サラは一度荷物を置き、ベッドに横になる。


「ふー!乗せてくれてありがとうねアッシュ。疲れてない?」


【ワタシは大丈夫だ。サラはどうだ?】


「そうねぇ。あまりこういうのもなんだけど、やっぱ30過ぎると体が疲れやすくなるわね。ずっと同じ姿勢も大変」


【そのままうつ伏せになってくれ】


「え?えぇ、この状態でいいの?」


サラはベッドの上でうつ伏せになる。


【マッサージモード起動】


アッシュのアームが伸び、サラの肩、背中、腰とマッサージをしていく。


(な、なにこれ!?体の疲れが抜けていく!?ん?なにこの匂い・・・)


匂いの正体はアッシュのボディから出ていた。リラックス効果のあるアロマの香り。


(あー・・・そう。ここが・・・天国)


1時間にも及ぶマッサージはサラを癒しに癒した。後にサラはまるで天使と共に空を飛んでるような気分だったと友に語るのだった。


夕食時になり、太陽も沈みかかっている。宿の一階では宿泊する人達が食べられる食堂がある。宿泊代に食事代は含まれていないため、料理を食べるには別料金がかかる。


サラはオススメディナーを頼み、出来上がった料理がテーブルに運ばれる。


「いただきます」


オススメディナーのメニューは村で育てられた鶏のチキン、野菜のサラダ、ミルク、丸いパンである。こんがりと焼けたチキンにソースをかけると、より香ばしくなる。丸いパンを上下半分に割いて、切り分けたチキンと野菜を間に挟み、食べる。


「ん〜!おいしぃ〜!」


「へー、サンドイッチみたいに挟んで食べるのはいいわね」


隣から聞こえた声の主は金髪に若干日焼けした肌の女。


「あ、ごめんな食べてる途中で声かけて。ここ、一緒に座ってもいいかい?一人で食べると味気なくて」


サラは頷き、女性を座らせる。女もサラと同じようにパンの間に鶏肉と野菜を挟む。


「自己紹介がまだだったね。アタイはメル。トレジャーハンターやってる」


「私はサラ、魔導師よ。そしてこっちが」


【ワタシの名はアッシュ】


「へー、こいつが・・・」


「アッシュを知ってるの?」


「知らないのかい?今この白いゴーレムはちょっとした話題になってるんだよ」


【どのような話題なんだ】


「今まで見たこともない姿形をしたゴーレムってのはそれだけで話題になるもんなんさ。アンタがこいつを造ったのかい?」


「色々あってね。今はこの子と旅をしてるの」


「そう・・・おっと、長話してると飯が冷めちまう。とりあえず食べようか」


「そうね」


トレジャーハンターのメルと名乗る女と共に食事を済ませたサラ。サラはメルに誘われ、メルが泊まっている2階の部屋に行き、アッシュは1階の部屋に戻る。


「んで、話なんだけどさ。あのゴーレム、アタイに譲ってくんない?」


「それは無理よ。あの子は売買されるような子じゃない。彼は奴隷じゃない、私の大切なパートナーなの」


「そう、それなら」


メルが何か仕掛ける事を察していたサラは常に携帯している小型の杖を取り出し、魔力障壁を展開する。


「この魔力、大魔導師クラスね。でも残念、もうアンタはアタイの罠にかかってるのよ」


徐々に匂いが強くなり、部屋一帯に煙が充満する。


「こ、これは・・・睡眠玉!?」


「当たり。じゃあね、魔導師さん」

睡眠玉から発生した煙を吸い込んだサラは意識が遠くなり、眠ってしまう。メルは部屋を出ると、1階に向かう。


「さて、あとは合流してトンズラするだけだ」


メルは手下達にアッシュの拉致をさせ、この村から出て行く算法だった。しかし、1階には倒れた手下達が廊下に転がっていた。全員手足が縛られており、身動きが取れないようになっていた。


「これは・・・」


「う・・・姉御、ヤツは・・・強い」


「一旦引きやしょう!このままじゃ全員捕まっちまう!」


「何言ってんだい!アタイは欲しいものは手に入れるんだよ!」


【盗賊団の頭領メル。サラはどうした】


「もうバレたかい。サラは今頃部屋で寝てるよ。命までは取ってないさ」


【そうか。ならばこれが最終勧告だ。手下を連れてこの村から去りたまえ】


「それは無理だね!」


メルは腰から銃を引き抜いた。対ゴーレム用特殊弾が装填されている。メルは引き金を引き抜き、銃口から弾がアッシュに飛んでいく。しかしアッシュのボディは弾丸を弾き、弾かれた弾は床に落ちる。


「チッ、やっぱアンタは相当特別なヤツみたいね」


【ワタシに弾丸は効かない。もう諦めるんだ】


「盗賊に諦めるなんて言葉はないのさ!」


「そう、それは残念ね」


振り返るも既に手遅れ。メルの足が氷で覆われ動けなくなった。


「んな!?アンタは眠ったはずじゃ・・・」


「だから起きてきたのよ。まぁあれくらいじゃ大して眠れなかったけど」


【無事だったかサラ】


「このブレスレットでわかってたんでしょ?アッシュも無事でなによりだわ」


メル達盗賊団を捕縛し、村の自警団の元へ連れて行く。牢屋の中に団員は入れられ、頭領のサラは別の部屋に連れられ椅子に縛られる。サラとアッシュ、自警団の付き添いも含めて5人が尋問にあたる。


「で、アッシュを手に入れてどうするつもりだったの?」


「それは・・・」


【待てサラ。今この村に急速に接近する飛行物体の反応があった】


「飛行・・・まさか奴が!」


アッシュが感知した存在の事を知っているのか、サラの顔は血相を変える。中にいてもわかるほど風が強くなっているのが分かる。のどかな風が、嵐の如く吹き荒れ始めた。


「この嵐・・・。そう、あの子が目覚めてたのね」


「風の聖獣テンペストペガサス・・・!」


テンペストペガサス。四大聖獣と呼ばれし一体で、風を司る聖なる獣。その瞳は、全てを破壊しようとする目をしていた。

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