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旧友とサーカス

離島から一番近くにある町【マリア町】へと向かう為の準備を進めたサラとアッシュ。定期便に乗り込み、いざ向かおうとしたが。


「すまんねぇ。流石にゴーレム乗せれるほどこの船丈夫じゃないんやぁ」


定期便は小型の船でしかなく、総重量が100kgを軽く超えるアッシュを乗せての渡航は不可能だった。定期便が帰ると、サラは頭を抱える。


「はぁ〜そうだったぁ」


優一の渡航手段だったのだが、これではアッシュを連れて行けない。いきなりの八方塞がりである。


【どうしたのだ】


「いやまぁ見ての通り、あなたを連れて海を渡らないってことになったの。とは言えあなたを乗せられる程のおっきい船なんて今から手配なんて出来ないし、どうしようかしら」


【海を渡れば良いのだな】


「方法があればね」


【チェンジ!アクアビークルモード!】


掛け声と共にアッシュのボディが変形を始め、全く異なる形となる。


「すご!?」


【乗りたまえ】


水面に浮かぶアッシュに乗り込むサラ。アッシュはサラを乗せて水面を進み出す。異世界のゴーレムは海をも渡る。これはこの世界の常識を優に超える凄いものである」


「アッシュ凄いじゃない!あなたは海をも越えるのね!」


【あらゆる事を可能にする。それがワタシの開発コンセプトだ】


海風に髪が揺れ、太陽の光が海を輝かせる。サラは以前離島へ向かう時には全く感じなかった感覚であった。


「さぁ行きましょう!世界があなたを待ってる!」


アッシュとの旅に心が踊るサラ。サラにはアッシュが何を思うかはわからない。しかし、この先にあるものは、きっと以前旅してきたものとは違うと、サラは確信していた。


➖貿易の町、マリア町➖


海に面した土地のため、貿易が盛んに行われるマリア町。ここにはサラの知り合いがいる。町ですれ違う人達は、アッシュのことを物珍しそうに見ているが、特に何もなく通り過ぎて行く。


「やっぱり貿易の町だけあって、それなりに珍しいものには注目するけどある程度の慣れはあるわね。あ、あのテント。毎年来てるサーカス団のね。懐かしいわぁ」


歩いている内に目的の場所に着いた2人。サラは扉を開き、中に入る。


「いらっしゃい。・・・って、サラじゃないか!」


「久しぶりねレクス」


建物の中にいた男の名はレクス。この者がサラの知り合いである。


「まったく、旅が終わったら解散してみんな何してるかと思えば」


「いいでしょ別に。余生をどう過ごそうが私の勝手でしょ。というか、あんたセレナちゃんどうしたの?」


「セレナは実家のある村に娘連れて帰ってるよ」


「どうせあんたの事だからセレナちゃんに嫌な思いさせたんじゃないでしょうね?」


「そんなわけないだろ。ただ、最近何かと物騒な事が起きてるみたいだ。もしかすると、また俺が剣を取る事になるかもしれん」


「考えすぎよ。もう世界は平和なの。それに私達はよく戦ったわ」


「そうならいいんだが・・・。というか、お前はここに何しに来たんだ?」


「あ、そうだ忘れてた。前に手紙に書いた物質召喚の儀式が出来たのよ」


「な!?あのカリオストロの術を読み解いたのか!」


「そう!そしてこっちの世界に来たのがあのアッシュよ」


サラはアッシュを中に招き入れる。レクスはアッシュに近づき、少し距離を置いてまじまじと見る。


「これはゴーレムなのか?触っても大丈夫なのか?」


【接触を許可する】


「喋るのか!」


レクスはアッシュのボディを触れる。滑らかなボディはまるで芸術を思わせる綺麗な白。さらに磨き上げられた滑らかな感触をしている。


「岩と言うよりは金属だな。メタルゴーレムに近いか?だが、それにしても本当に成功したんだな」


「まぁね。伊達に10年は研究してないわ」


「もう13年だ」


「・・・うそでしょ?」


「娘のリンダももう10歳だ。お互い歳はとりたくないものだな」


「今度は若返りの薬でも研究しようかしら」


「自分で言ってて虚しくなるだろ。それより、その物質召喚はここで出来るのか?」


「もちろん。全部頭の中に入ってるわ」


サラは床に魔法陣を描き、魔力を込める。


『我が魔力を持って顕現せよ、異界の物質よ』


魔力が注入された魔法陣は輝く。しかし、何も起こらなかった。


「・・・埃でも出てきたか?」


「おかしいわねぇ。全く同じ方法でやったのに」


「本当に読み解いたのか?」


「じゃないとこんなところまで来ないわよ」


何やら言い合いを続ける二人だったが、突然外から悲鳴が聞こえ、急いでサラとレクスが店を飛び出す。逃げ惑う町の人たち。サラ一人の男性に声をかける。


「ねぇ、一体何があったの!?」


「わ、わからねぇ!サーカス団が飼ってる魔獣が突然暴れだしたんだ!」


「ありがとう、そのまま安全なところに避難して」


男性を逃し、サラとレクスとアッシュは暴れる魔獣の元へ向かう。


サーカス団員の制止も聞かず、我を失って暴れまわる獅子の魔獣ライオウ。名前はレオンと呼ばれている。レオンは所構わず暴れまわり、壁には凄まじい爪痕が残っている。このままでは被害が広がり、死者が出る恐れがある。急ぎサラは状態異常魔法【スリープ】を唱え、レオンを眠らせた。幸いなことに死者は出ず、負傷した町の人たちに回復魔法【ヒール】をかけていくサラ。その頃レクスとアッシュは一度サーカス団に招かれ、レクスは団長のマルクに一連の出来事を聞く。


「突然我を失って暴れまわる魔獣か」


「はい、勇者様が大魔王を封印し、世界をお救いになられた後、世界中の魔族はその凶暴性を失いました。魔獣による災害も年々減りましたが」


「たしかに、あの見境なく暴れる様は見るからに狂暴化していたな」


「レオン・・・彼は我々人間の事を恨んでいるのでしょうか」


【その可能性は極めて低いだろう】


眠りについたレオンをサーカス団まで運んできたアッシュ。その後はアッシュに搭載されている医療機能を使って異常が無いか検査をしていた。


「そ、それはどういうことですか?」


【団員立会いの元、レオンの身体を検査した結果。彼の身体には一本の針が刺さっていた】


「な、なぜそんなものが」


【これは推測の域を出ないが、おそらく魔獣を狂暴化させる為に何者かが打ち込んだのだろう】


「つまりは誰かの仕業ってわけか・・・。今のご時世によくもまぁ。団長、何か心当たりはないか?」


「そんな!私達は観客の皆様を喜ばせる一心で頑張って来ました!団員達の中にはとても怨みを買うような人はいません!」


「・・・となると、愉快犯か。それとも計画的な犯行か。どちらにしろ、このままだとまた同じことが起こるだろうな」


「あぁ、私はいったいどうすれば・・・」


「しばらくはサーカス団員以外の人間を入れない方がいいだろうな。本当なら警備を強化したいところだが、犯人がわからない今迂闊に容疑者を増やして余計な混乱を招くのは犯人にとって思う壺だろう」


「し、しかし、このままではまた魔獣達が狙われてしまいます!」


【ならば、ワタシが彼らを守ろう】


魔獣絶対保護作戦。作戦の内容は、アッシュを新たなサーカス団の仲間として迎え、魔獣達の護衛に着いて守ること。サラとレクスもサーカス団の裏方としてこの作戦に参加した。


「レクス、店番はどうしたのよ」


「流石に放っておくわけにはいかないだろ」


そして同時進行として、裏では犯人確保の作戦も進めていた。アッシュを新たなサーカスの目玉と称し、大々的に宣伝。サーカスは今回の事件のお詫びとして無償で公開するとした。あのような出来事があった今、わざわざサーカスを観に来る者は少ないだろう。しかしだからこそ、外部の人間が犯人であれば必ず現れるはず。再び起こる悲劇を見るために。公演の日は迫って行った。

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